『 三角関数の合成 』
○ 次の式 ( 三角関数 ) を合成しなさい。
(1) sinθ+√3 cosθ
= 2 ( sinθ・[ 1/2 ] + cosθ・[√3 / 2 ] )
= 2 ( sinθ[ cos 60°] + cosθ[ sin 60°] )
= 2 sin ( θ+[ 60°] )
(2) √3 sinθ+cosθ
=[ 2 ( sinθ・√3 / 2 + cosθ・1/2 ) ]
=[ 2 ( sinθ cos 30°+ cosθ sin 30°) ]
=[ 2 sin ( θ + 30°) ]
○ 補題
次の各問いに答えなさい。
(1) 三角方程式 sinθ+√3 cosθ+2 = 0 を解きなさい。ただし、0°≦θ<360°である。
(2) 方程式 sinθ+ cosθ-√2 = 0 を解きなさい。ただし、0°≦θ<360°である。
(3) 三角関数 f (θ) = 4 sinθ+ 3 cosθ の 0°≦θ≦180°における最大値と最小値を求めなさい。
(4) 三角関数 f (θ) =√3 sinθ+ cosθ の 0°≦θ≦180°における最大値と最小値を求めなさい。
解答は、下の方にあります。
○ なぜ、√( 係数の2乗の和 ) でくくるのか?
三角関数の合成公式 :
a sinθ+ b cosθ = √(a²+b²) sin (θ+α) ( a²+b² ≠ 0 )
( ここでαは 点P ( a , b ) とするときの OP の x 軸とのなす角である。)
これを丸覚えして使える生徒を、私は見たことがありません。
さあ、もう一度導きましょう。
a sinθ+ b cosθの 2項式 の
三角関数記号の係数である a と b を 座標にもつ点P ( a , b ) を、 x y 座標平面の第1象限にとり、
原点O と 点P を結んだ線分OP と x 軸正の方向 とのなす角を α とします。
端点をOとした半直線OP と 単位円 ( 中心が原点Oで、半径が 1 の円 ) との交点を求める。
すなわち、半直線OP上で 原点Oからの距離が 1 である点の座標を求める。
半直線OP と 単位円 との交点を A ( x , y ) とし、
点P から x 軸に垂線をひき、その足を H、
点A から x 軸に垂線をひき、その足を I とする。
△A O I と △P O H について
根拠 共通の角だから、
主張 ∠A O I = ∠P O H ・ ・ ・ ①
根拠 AI ⊥ OI , PH ⊥ OH より、
主張 ∠O I A = ∠O H P = 90°・ ・ ・ ②
①,②より、
相似条件 2組の角がそれぞれ等しいから、
△A O I ∽ △P O H である。
相似な図形の対応する辺の比は、すべて等しいから、
AO : PO = OI : OH = IA : HP が成り立つ。
AO = 1 ,
PO = √{ (a-0)²+(b-0)² } = √(a²+b²) , ( 中3数学 三平方の定理 2点間の距離 )
OI = x-0 = x , ( 中2数学 1次関数 座標のひき算 水平方向・鉛直方向の2点間の距離 )
OH = a-0 = a ,
IA = y-0 = y ,
HP = b-0 = b だから、
x : a = 1 : √(a²+b²)
y : b = 1 : √(a²+b²) より、
x = a / √(a²+b²)
y = b / √(a²+b²) となる。
よって、
A ( a / √(a²+b²) , b / √(a²+b²) )
である。
この単位円上の点A の座標値を求めるため、
線分OPの距離である √( 係数の2乗の和 ) でくくった。
原点O と 係数を座標とする点 との距離で その点の座標を わると、
原点Oを端点とする半直線上で
原点Oからの距離が 1 である点 ( 半直線と単位円との交点 ) の座標になる。
( 小3算数で習うわり算の概念のひとつである分配除 : 1 あたりの量を求める を使った。)
( 分配除の例
・ a 本の鉛筆を、余りなく b 人の生徒で分けられた、生徒一人当たり 何本 になりますか。
・ √(a²+b²) グラム a 円のミンチ肉がある、1グラムあたり 何円 になりますか。
・ 点P( a , b ) の原点Oからの距離は√(a²+b²) です。
半直線OP上で原点Oからの距離が 1 の点の座標は何ですか。 など )
単位円上の座標値がわかったら、加法定理が使って、合成のできあがり。
a sinθ+ b cosθ
√(係数の2乗の和) でくくる
=√(a²+b²) ( sinθ・a / √(a²+b²) + cosθ・b / √(a²+b²) )
cosα=a / √(a²+b²) , sinα=b / √(a²+b²) とおく
=√(a²+b²) ( sinθcosα+cosθsinα )
加法定理 sin (θ+α) = sinθcosα+cosθsinα
=√(a²+b²) sin (θ+α)
○ 補題の解答
(1) 三角方程式 sinθ+√3 cosθ+2 = 0 を解きなさい。ただし、0°≦θ<360°である。
sinθ+√3 cosθ
= 2 ( sinθ・ 1/2 + cosθ・√3 / 2 )
= 2 ( sinθ cos 60°+ cosθ sin 60°)
= 2 sin ( θ+ 60°)
0°≦θ<360°より、単位円使うと、
-1 ≦ sin ( θ+ 60°) ≦ 1
-2 ≦ 2 sin ( θ+ 60°) ≦ 2
θ+ 60°= 270°すなわち θ=210°のとき、2 sin ( θ+ 60°) =-2
よって、
sinθ+√3 cosθ+2 = 0
⇔ 2 sin ( θ+ 60°)+2 = 0
を満たすθの値は、210°である。
(答え) θ= 210°
(2) 方程式 sinθ+ cosθ-√2 = 0 を解きなさい。ただし、0°≦θ<360°である。
sinθ+ cosθ
= √2 ( sinθ・ 1/√2 + cosθ・1/√2 )
= √2 ( sinθ cos 45°+ cosθ sin 45°)
= √2 sin ( θ+ 45°)
0°≦θ<360°より、単位円使うと、
-1 ≦ sin ( θ+ 45°) ≦ 1
-√2 ≦ √2 sin ( θ+ 45°) ≦ √2
θ+ 45°= 90°すなわち θ=45°のとき、√2 sin ( θ+ 45°) =√2
よって、
sinθ+ cosθ-√2 = 0
⇔ √2 sin ( θ+ 45°)-√2 = 0
を満たすθの値は、45°である。
(答え) θ= 45°
(3) 三角関数 f (θ) = 4 sinθ+ 3 cosθ の 0°≦θ≦180°における最大値と最小値を求めなさい。
4 sinθ+ 3 cosθ
= 5 ( sinθ・ 4/5 + cosθ・ 3/5 )
= 5 ( sinθ cos α+ cosθ sin α) [ ∵ cos α= 4/5 , sin α= 3/5 と置いたから ]
= 5 sin ( θ+α )
0°≦θ≦180°より、単位円使うと、
-3/5 ≦ sin ( θ+α ) ≦ 1
-3 ≦ 5 sin ( θ+α ) ≦ 5
よって、
θ+α= 90° すなわち θ= 90°- α のとき、最大値 f (90°- α) = 5 sin 90°= 5
また、
θ+α= 180°+ α すなわち θ= 180°のとき、最小値 f ( 190°) = 5 sin ( 180°+ α ) =-3
以上より、
(答え) θ= 90°- α のとき、最大値 5 , θ= 180°のとき、最小値 -3
(4) 三角関数 f (θ) =√3 sinθ+ cosθ の 0°≦θ≦180°における最大値と最小値を求めなさい。
√3 sinθ+ cosθ
= 2 ( sinθ・√3 / 2 + cosθ・ 1/2 )
= 2 ( sinθ cos 30°+ cosθ sin 30°)
= 2 sin ( θ + 30°)
0°≦θ≦180°より、単位円使うと、
-1/2 ≦ sin ( θ + 30°) ≦ 1
-1 ≦ 2 sin ( θ + 30°) ≦ 2
よって、
θ + 30°= 90° すなわち θ= 60° のとき、最大値 f ( 60°) = 2 sin 90°= 2
また、
θ + 30°= 210°すなわち θ= 180°のとき、最小値 f ( 180°) = 2 sin 210°=-1
以上より、
(答え) θ= 60°のとき、最大値 2 , θ= 180°のとき、最小値 -1
【 補 足 】
三角比で、 sin θ , cos θ , tan θ は、
sinθ=対辺 / 斜辺
cosθ=底辺 / 斜辺
tanθ=対辺 / 底辺
と、1つの鋭角をθとした直角三角形で、定義される。
このとき、θの範囲は、0°< θ < 90°である。
θの範囲を、拡張する ( 0°≦ θ ≦ 360°) ために、
また、三角関数・三角方程式・三角不等式を解くために、
cosθは、単位円上の点の x 座標
sinθは、単位円上の点の y 座標 ( 原点O と 単位円上の点 を結んだ線分 と x 軸正の方向とのなす角がθ )
tanθは、直線の傾き ( 直線 と x 軸正の方向とのなす角がθ )
と再定義される。
よって、
-1 ≦ cosθ≦ 1
-1 ≦ sinθ≦ 1 であり、
tanθは あらゆる実数 をとれる。 (-90°< θ < 90°)
√(a²+b²) sin (θ+α) に合成した後、
単位円を使って、sin (θ+α) の 座標を読み取る。
上の(1) は、
sin ( θ+ 60°) だから、まず単位円上に x 軸正の方向より反時計回り60°のところに点をとり、
0°≦θ<360°なので、その 60°のところから反時計回りに単位円上を1周できる。
よって、
sin ( θ+ 60°) は、単位円上の点の y 座標だから、
-1 ≦ sin ( θ+ 60°) ≦ 1 になる。
(2) は、
sin ( θ+ 45°) だから、まず45°のところをとり、
0°≦θ<360°なので、その 45°のところから1周できる。
よって、
-1 ≦ sin ( θ+ 45°) ≦ 1 になる。
(3) は、
sin ( θ+α ) だから、まず α のところをとり、 ( cosα , sinα) = ( 4/5 , 3/5 )
0°≦θ≦180°なので、その α のところから半周できる。
( cos ( 180°+ α ) , sin ( 180°+ α ) ) = ( -4/5 , -3/5 )
よって、
-3/5 ≦ sin ( θ+α ) ≦ 1 になる。
(4) は、
sin ( θ+ 30°) だから、まず30°のところをとり、 ( cos 30°, sin 30°) = (√3 / 2 , 1/2 )
0°≦θ≦180°なので、その 30°のところから半周できる。
( cos 210°, sin 210°) = (-√3 / 2 , -1/2 )
よって、
-1/2 ≦ sin ( θ+ 30°) ≦ 1 になる。
「 数学なんか勉強しても役に立たないのに、なぜ勉強しないといけないの。」 と聞く中学生がいます。
小学算数・中学数学の知識が、高校数学の知識習得の基礎になります。
ある意味、高校数学を学ぶために、小学算数・中学数学を学ぶのです。
高校数学は、より体系的な内容をもっています。
体系的にものごとを把握するために、
数学などの教科学習を、活用しましょう。
来年も、よろしくお願いします。
次回の掲載は、新年になります。
良いお年を お迎えください。