『 解の公式は導くもの 9 』
○ 解の公式を導くことから受ける恩恵
解の公式を導くことにより、
解の公式の意味 ( 解の公式が何を表現しているのか ) をより考えやすい。
2次方程式の解が 係数 と 定数(項) から成ることを知り、{ 解と係数の関係 }を理解しやすくなる。
{ 解と係数の関係 }を楽に導くことができる。
根号の中の ( b²-4ac ) が、{ 正 であるか 0 であるか 負 であるか } により、
解が1つ か 2つ であること そして解が実数 か 虚数であることを 決めるということを 理解できる。
b²-4ac が 判別式 と呼ばれる理由がよくわかる。
解の公式を導くのに式の変形は、7回。
2次方程式の{一般式} から {解の式} まで全部で 8式 です。
高校数学の公式を導くことにおいて、
このように連続して式変形を7回もするもの、
これ以上面倒な式変形は、ほとんどありません。
{ 解の公式を導く }という面倒な式変形に慣れていると、高校数学の公式を導くことが楽になる。
(例) 三角関数の加法定理の1つ cos (α+β) = cosαcosβ- sinαsinβ を導く。
( 全部で4式 : 3回の式変形 )
単位円 { 中心 O ( 0 , 0 ) 半径 1 の円 } 上に、4点 A , P , Q , R を次のようにとる。
x 軸上に A ( 1 , 0 )
第1象限に P ( cosα , sinα ) , Q ( cos (α+β) , sin (α+β) )
第4象限に R ( cos (-β) , sin (-β) ) = ( cosβ , -sinβ ) をとると
AQ = RP だから、 [ ∵ △OAQ ≡ △ORP ( 中2の内容 : 合同条件「 2辺 と 挟角 」 ) ]
2点間の距離 を ( 中3の内容 : (座標のひき算を使って) 三平方の定理 )
利用して立式すると
{ cos (α+β) - 1 }²+{ sin (α+β) - 0 }² = ( cosα-cosβ)²+( sinα+sinβ)²
( 展開 : 2項式の2乗は、2乗 積の2倍 2乗 の3項式 になる。)
cos²(α+β)-2cos (α+β)+1+sin²(α+β) = cos²α-2cosαcosβ+cos²β+sin²α+2sinαsinβ+sin²β
( cos²θ+sin²θ=1 を使用 )
-2cos (α+β)+2 =-2cosαcosβ+2sinαsinβ+2
cos (α+β) = cosαcosβ-sinαsinβ
公式を導く行為は、{ 既知を使いながら新たな知を得ること }を教えてくれる。
公式を導くことができるなら、公式を覚えていることになる。
( 既に使用した知識を使って、新たに使用獲得すべき知識を身につける。
かつて使用した知識が 今 でも使えることを確認できる。
公式を導くことができることは、公式を覚えているための十分条件である。)
○ ( 補講 『 解の公式は導くもの 8 』 の宿題 ) と その解答
x の方程式 x² -2 ( sinθ+ cosθ) x + sinθ + 1 = 0 ・・・・・① について、
次の問いに答えなさい。( ただし、0°< θ < 180°)
① の 解が x = s , x = t であるとき、
s + t の最大値 と s t の最大値 を求めなさい。
また、s t が 最大値 のときの s と t の値を求めなさい。
(解答)
解と係数の関係 より
s + t = 2 ( sinθ+ cosθ)
s t = sinθ + 1
sinθ+ cosθ = √2 ( sinθ・1/√2 + cosθ・1/√2 )
= √2 ( sinθcos45°+ cosθsin45°)
= √2 sin ( θ + 45°) (三角関数の合成)
0°< θ < 180°より、 単位円を使うと、
-1/√2 < sin ( θ + 45°) ≦ 1
-2 < 2√2 sin ( θ + 45°) ≦ 2√2
-2 < s + t ≦ 2√2
θ= 45°のとき、s + t = 2√2 である。
また、
0 < sinθ ≦ 1
1 < sinθ+ 1 ≦ 2
1 < s t ≦ 2
θ= 90°のとき、s t = 2 である。
このとき、 ① は x² -2 x + 2 = 0 になる。
解の公式を使って解くと x = 1 ± i である。
以上より、
(答え) s + t の最大値は 2√2 ( θ= 45°) である。
s t の最大値は 2 ( θ= 90°) であり、
このとき s = 1 ± i , t = 1 ∓ i (複号同順) である。
もし、① に 解の公式 を使ったら、
x = ( sinθ+cosθ) ± √{ (sinθ+cosθ)²-(sinθ+1) } ( x = { -b'±√(b'²-ac) } / a を使った )
= ( sinθ+cosθ) ± √( sin²θ+2sinθcosθ+cos²θ-sinθ-1)
= ( sinθ+cosθ) ± √( 2sinθcosθ-sinθ) ( sin²θ+cos²θ=1 を使った )
ここから、
結局は 2つの解の 和 と 積 を求めることになる。
解の公式だけを使って答えが出る問題は、受験者間に点数差が生まれないので、
受験者を相対的に合否判定する記述試験(国公立大学の2次試験など)では、
あまり出題されません。
点数差を生じさせる問題が出題されます。
だから、解と係数の関係、判別式 を使わないと解けない2次方程式の問題 や
少なくとも2つの単元から成る融合問題 (数列、三角関数、対数関数、指数関数 ・ ・ ・ ) などが
出題されることになります。
知識は、それを使う人によって、狭いものにも 広いものにも なり、浅いものにも 深いものにも なります。
「2次方程式の解の公式」 は、
ある人にとっては、単に a , b , c に対応する値を代入して計算するためだけのもの になる。
別の人にとっては、導くもの になり、{ 解と係数の関係 } や { 解の判別 } を理解するために使えるもの になる。
( 前者は、中3生時では、何の問題もなく、定期テストで高得点をとり、いい高校にも進学できるでしょう。)
中3生・高1生時、このように知識の程度に明らかな差が、生徒たちに生じています。
この差が大学受験の合否に影響する人もいます。( 『 解の公式は導くもの 7 』 4人中2人不合格 )
体系的に知識を習得することが、総合的な学習には必要です。
公式を導く行為は、その一助になります。
○ 三角関数の合成公式
a sinθ+b cosθ = √(a²+b²) sin (θ+α)
を丸覚えして、使うことができる生徒を、私は見たことがありません。
これが、どのようなものなのか、考えます。
右辺の一部 sin (θ+α) から、先ず考えます。
sin (θ+α) を加法定理で展開すると、
sin (θ+α) = sinθcosα+cosθsinα
になる。
cosα と sinα は、単位円上 の 座標値 であるから、
( x , y ) = ( cosα , sinα) とおくと、
sin (θ+α) = x sinθ+ y cosθ
となる。
この両辺を √(a²+b²) 倍すると、
√(a²+b²) sin (θ+α) = √(a²+b²) x sinθ + √(a²+b²) y cosθ
になる。
よって、
√(a²+b²) x = a
√(a²+b²) y = b とおくと、
√(a²+b²) sin (θ+α) = a sinθ+ b cosθ
となる。
こうして右辺から左辺が導けました。
では、左辺から右辺を導きます。
a sinθ+ b cosθ
√(係数の2乗の和) : √(a²+b²) でくくる
= √(a²+b²) ( sinθ・a/√(a²+b²) + cosθ・b/√(a²+b²) )
a/√(a²+b²) と b/√(a²+b²) は、単位円上の座標値だから、
cosα = a/√(a²+b²) , sinα = b/√(a²+b²) とおくと、
= √(a²+b²) ( sinθ cosα + cosθ sinα )
加法定理を使って、
= √(a²+b²) sin (θ+α)
4式 ( 式変形 3回 ) で導ける。
ポイントは、係数を 単位円上の座標値 に。
○ 次の式 ( 三角関数 ) を合成しなさい。
(1) sinθ+√3 cosθ
= 2 ( sinθ・[ ] + cosθ・[ ] )
= 2 ( sinθ[ ] + cosθ[ ] )
= 2 sin ( θ+[ ] )
(2) √3 sinθ+cosθ
=[ ]
=[ ]
=[ ]
次回は、補講 『 三角関数の合成 』 です。