その日から、ダンス教師の彼女とは、それほど頻繁に会うことも無くなったが、仮面妻の彼女とは相変わらずの不倫関係が続き、いつもの目黒のライブパブで逢瀬を楽しんでいた。
そんなある日、特に彼女と約束することなく、そのライブパブに行くと、仮面妻が若い女性と一緒に楽しんでいる。
僕は声を掛けることもなくカウンターに座ると、すぐに彼女がやって来た。
「あら、連絡くれたらいいのに・・。私を誘わないで一人で来るなんて、まさか女性と待ち合わせじゃないでしょうね。」と疑う。
「いや、君からもここのところ連絡が無いので、たぶん旦那がしばらくは在宅で夜は出られないと思ってさ。今夜は仕事疲れの気晴らしにライブでも鑑賞しようかな、と立ち寄ってみただけだよ。」と言うと、
「そうなんだ、それで店の子をチャージするんでしょ。」と皮肉交じりに応える。
いつもと同じ彼女の嫉妬深さは変わらない。。
「君こそ今夜はどうしたんだ?、女性同士で騒いでいるなんて。」
「あの子は私の娘よ。ママがよく夜遊びしているお店に行きたいって以前から言っていたけど、まだ学生だったから連れて来なかったのよ。」
そう言えば、彼女が亭主に激しい暴力を振るわれた時にパトカーを呼び、また、彼女がDVを避けて家出した時にも一緒に連れだった娘がいた。
「ああ、あのママ思いの娘さんか、今では社会人のOLなんだね。」
「そうなの、私に似て美人でしょ、それに明るい性格なのよ。」と自慢げに言う。
娘はこちらの方を見て微笑んでいる。
確かに人目を惹く顔立ちで、社交的な感じがする。
「いいのかな、こんな所に連れて来てさ。危ない男が言い寄って来たりするし、それよりも僕と君との関係を気づかれたらまずいんじゃないの。」と心配げに言うと、
「大丈夫、何があっても娘は私の味方だし、気丈なところがあるからね。
そうそう、貴方、コンピュータに詳しいわね。娘は大学の専攻が芸術関係だったから、技術系に弱いのよ、今、会社でパソコンは必要不可欠だから教えてあげてよ。」と頼んでくる。
「パソコンっていっても、せいぜい、事務処理で使うのは、ワードとエクセル、それとプレゼン用のパワーポイントぐらいだから、すぐに習熟できるよ。」と返答すると、
「とにかく、私たちの席で一緒に飲んでよ。さっきから変な男どもがナンパまがいに声かけてくるから、鬱陶しいの。」と誘う。
「そうなら、娘さんがよければ同席させてもらうよ。」とカウンター席を立って彼女達に合流することにした。