「はるちゃんはご主人とは同い年で、お友達夫婦みたいな関係なの。だから夫婦仲はとくに悪くは無いけど、川上さんのような大人のゆとりのある年配男性の生活スタイルを体験すると、平凡な結婚生活に物足らなさを感じて、ワンランク上の刺激を求めてしまう気持ちになるかもね。」と話を続ける。

そのあおいの推測は、かって前述した当社のクラブ好きな若い女子社員と僕の経営クラブの後輩のクラブオーナーとの男女関係にも重なる。その彼女は同世代の若い男性には関心がなく、親子ほどの歳の差の余裕あるその男性に魅かれていた。

「そうだね、はるちゃんはあおいちゃんの影響を受けやすいから、川上との未知なる大人の関係に興味を持つかもしれないなあ。」と冗談めいて言うと、
「なによ私の影響って・・、まるで彼女が川上さんと不倫に走ったら、私の責任みたいな言いぐさなのね。」と言い返す。
「まあ、いいじゃないか、別にその取っ掛かりは色々あっても、どのみち不倫は自己責任だから。そうなっても深入りしない程度の付き合いに止めればさ。」となだめると、
「川上さんも貴方みたいな要領の良い付き合いができればいいけど。」と皮肉る。
そんな話をしながら、近々、いつものライブパブで逢う約束をして、家路を急ぐあおいと別れた。

後日、ライブパブに行くと、あおいはなんとあの仮面妻のひろみと、テーブルを挟んで談笑している。
僕がテーブルに近づくと、ひろみはにこやかに、
「久しぶりね、あおいちゃんとはうまくいっているの?」と語りかけた。
あおいも「偶然、ひろみちゃんも同じく彼氏との待ち合わせなの、貴方の方が先に来たわ。」と笑顔で話す。
この店で以前に、この二人が鉢合わせしてひろみとの別れ話になった修羅場の時とは、打って変わった穏やかな雰囲気だ。
僕はひろみに「久しぶり~、今は彼氏がいるんだって?」と聞き返す。
「ええ、彼、これから来るわよ。」
「そうか、よかったな、俺はひろみちゃんに別れ話をされたからね。」と自虐ぽく言うと、
「何、被害者面しているのよ、すべては貴方の行動が原因じゃない。」と問い詰める。
あおいが、「まあ、過去の話はそこまでよ。でもひろみちゃんのおかげで、この彼氏とはうまくいっているわ。」と楽しそうに応える。
「そうよね、もう済んだことだし、これから彼氏が来るんで、私は席を移らないとね。」とひろみが気を利かせる。

リラクゼーションルームには全身を包み込むような大型の高級マッサージチェアーやマッサージ専用ベッドが配置されている。

「ここでマッサージ師をよんで施術してもらうんだね、揉みほぐされると気持ちいいだろうなあ。」と川上に言うと、
「専門のセラピストも依頼できて、心身の不調な部位ごとに対処療法もしてくれるよ。」と応えると、はるちゃんが、「私、肩こり気味だから頼んでみたいわ。」と興味ありそうだ。
あおいが「入浴後に浴衣を着て、このマッサージチェアーを使うと血行が良くなりそうね。でも、今日は温泉には入れないけど。」と言うので、
「じゃあ、下着だけになってやってみたら。」と笑いながら話すと、
「いやらしいわね、でも試してみたいわ。」と、あおいはチェアーに座り、リクライニングして全身自動コースを選択し、スイッチを入れる。しばらくすると身体がリラックスしたような状態になり気持ちよさそうだ。


川上がはるちゃんに、「僕はここでよく施術してもらっていて、マッサージの手ほどきも受けているから、ある程度の心得はあるよ。よかったら、軽くしてあげようか?」と冗談ぽく声をかける。
彼があまりにもあからさまにアプローチするので、僕は多分、彼女がNOと応えると思ったが、ランチタイムで酒を飲んで酔っていることもあるのか、
「ええ、お願いしてもいいですか?」と僕が制止するまでもないまま、あっさり承諾する。
彼女は専用ベッドでうつ伏せして横たわると、川上は彼女の肩先から、手をかけて揉み始める。
あおいもチェアーに座ったまま止めようともしない。
たしかに川上のマッサージの手つきは特にいやらしくもなく、本職並みに見える。
施術は5分ほどで終わり、はるちゃんは気分が良いのか満足気だ。

僕が川上に「マッサージ上手いね、次は俺もやってもらおうかな?」と皮肉っぽく言うと、彼は「女性オンリー、あおいちゃんだったらいいよ。」とにやけ顔で応える。
「はるちゃん、喜んでいるから私もお願いしようかしら?」と言うので、僕は慌てて、「マッサージチェアーで充分だろ。」と止めに入る。

リラクゼーションルームでしばらく過ごした後、彼女達は主婦なので、夕刻までには帰れるように、迎えに来た社用車に乗って帰途についた。
用賀で解散した後、道すがら僕は「川上とはるちゃんはどうなのかな?」とあおいに聞くと、「さあ、どうかしら? 彼女、今回の件で好奇心が募り、アバンチュールを楽しみたくなるかも。川上さんみたいな大人の余裕のある男性に惹かれることもあるわね。私も貴方とはそんな心情だったから。」と意味ありげな笑みを浮かべる。

2時間ほどのクルージングを終えて、リゾート施設に戻る。
彼が事前に手配してくれていた、ケータリングでランチタイムを過ごす。
企業接待でよく利用している業者のようで、手際よく料理、配膳をこなして、ソムリエのようにワインまで注いでくれる。
地場の新鮮な魚介をふんだんにフレンチ風に調理したコースメニューだ。

あおいは「まるで高級レストランで食事しているみたいね、簡単にデリバリーでも取っていただいても良かったのに・・。本当に有難うございます。」と川上に礼を述べる。
「川上君の会社は業績も良いし、甘えてもいいんじゃないかな?」と僕が笑いながら言うと、
彼が「皆が宿泊できたら、ナイトクルーズやバーテンダーを頼んでカクテルディナーも楽しめたんだけどね。」と話すので、
「それに宿泊すればサウナ付きの浴場でゆったりもできるしさ。」と僕が話を続ける。


はるちゃんが「私、結婚してからあまり外泊するような旅行していないから興味あるわ。」と応える。
あおいも「それは私も同じ、色々と旅行して羽を伸ばしたいわ。貴方、また、どこかに連れてってよ。」と僕を見る。
僕は「二人とも独身じゃないから、そうそうは無理だね。」と応えつつ、あおいとは、伊豆の熱川に一泊旅行したこともある。(前述『混浴風呂のアバンチュール』)

川上が、「僕はいつでも歓迎するよ、その気になったら連絡してね。」と乗り気になっている。
僕が「あまり人妻を誘うようなことは良くないな。」と釘をさすと、
彼は「でも君はあおいちゃんとはすでにそんな関係なんだろ。」と意に介さない。
確かにその通りだから、彼に対しても僕の言葉に全く説得力は無い。

僕と川上の話のやり取りを聞いていたのか、
はるちゃんが、「ナイトクルージングで海上で停泊し、波に揺られて
夜景や星空を見ながら夜を明かすのって、一度経験してみたいわ。」と呟くように言うので、
すかさず川上が「はるちゃんから
連絡くれれば船を出すよ。」と応える。
あおいが、「嫌ねぇ、川上さん、下心丸出しだわ。その時は必ず私も一緒よ。」と口を挟む。
川上が、「下心なんて無いよ。もちろん、あおいちゃんと二人でもいいよ。」と言葉を取り繕う。

そんな際どい話も交えて談笑しながらランチタイムを過ごした後に、リラクゼーションルームに向かう。