「はるちゃんはご主人とは同い年で、お友達夫婦みたいな関係なの。だから夫婦仲はとくに悪くは無いけど、川上さんのような大人のゆとりのある年配男性の生活スタイルを体験すると、平凡な結婚生活に物足らなさを感じて、ワンランク上の刺激を求めてしまう気持ちになるかもね。」と話を続ける。

そのあおいの推測は、かって前述した当社のクラブ好きな若い女子社員と僕の経営クラブの後輩のクラブオーナーとの男女関係にも重なる。その彼女は同世代の若い男性には関心がなく、親子ほどの歳の差の余裕あるその男性に魅かれていた。

「そうだね、はるちゃんはあおいちゃんの影響を受けやすいから、川上との未知なる大人の関係に興味を持つかもしれないなあ。」と冗談めいて言うと、
「なによ私の影響って・・、まるで彼女が川上さんと不倫に走ったら、私の責任みたいな言いぐさなのね。」と言い返す。
「まあ、いいじゃないか、別にその取っ掛かりは色々あっても、どのみち不倫は自己責任だから。そうなっても深入りしない程度の付き合いに止めればさ。」となだめると、
「川上さんも貴方みたいな要領の良い付き合いができればいいけど。」と皮肉る。
そんな話をしながら、近々、いつものライブパブで逢う約束をして、家路を急ぐあおいと別れた。

後日、ライブパブに行くと、あおいはなんとあの仮面妻のひろみと、テーブルを挟んで談笑している。
僕がテーブルに近づくと、ひろみはにこやかに、
「久しぶりね、あおいちゃんとはうまくいっているの?」と語りかけた。
あおいも「偶然、ひろみちゃんも同じく彼氏との待ち合わせなの、貴方の方が先に来たわ。」と笑顔で話す。
この店で以前に、この二人が鉢合わせしてひろみとの別れ話になった修羅場の時とは、打って変わった穏やかな雰囲気だ。
僕はひろみに「久しぶり~、今は彼氏がいるんだって?」と聞き返す。
「ええ、彼、これから来るわよ。」
「そうか、よかったな、俺はひろみちゃんに別れ話をされたからね。」と自虐ぽく言うと、
「何、被害者面しているのよ、すべては貴方の行動が原因じゃない。」と問い詰める。
あおいが、「まあ、過去の話はそこまでよ。でもひろみちゃんのおかげで、この彼氏とはうまくいっているわ。」と楽しそうに応える。
「そうよね、もう済んだことだし、これから彼氏が来るんで、私は席を移らないとね。」とひろみが気を利かせる。