「マイ・ブルーベリー・ナイツ」~すべてがオシャレな恋物語 | ネコ人間のつぶやき

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 ウォン・カーウァイ監督脚本「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(2007年)を10年ぶりに観直しました。やっぱり佳いですね。

 

""Why always i did the same mistakes!"" Photo by .Live.Your.Life.

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 ニューヨーク。

 

 恋人にフラれたばかりのエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、元彼のアパートの向かいにある「カフェ・クリーチ(鍵)」のオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に慰められます。

 

 ジェレミーの店には客が置いていった部屋の鍵がたくさんあります。

 

 恋が終わった男女が部屋の鍵をジェレミーに預けてゆくんです。

 

 わたせせいぞうの「ハートカクテル」で恋に破れた男女が鍵を置いていくバーのショートストーリーがあったのを思い出しました。

 

 復縁したらバーのマスターが鍵を返す、という。

 

 ジェレミーのカフェもそうなんです。

 

"My Blueberry Nights 07" Photo by calansa

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 エリザベスは、ジェレミーの店に元カレの部屋の合鍵を置いてゆきます。

 

 こうしてジェレミーのカフェに足を運ぶようになったエリザベス。

 

 ジェレミーの店のスイーツがとても美味しそう。

 

 フラれた理由を探すエリザベスにジェレミーは語る。

 

 「ケーキやパイと同じなのさ。他のケーキは売り切れるのに、ブルーベリー・パイは、なぜかいつも手つかずで売れ残るんだ」。

 

"My Blueberry Nights 03" Photo by calansa

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 「すべてに理由があるはずでしょ?」と尋ねるエリザベスにジェレミーは答える。

 

 「理由なんてないこともある。パイには何の問題もない。ただ客から注文がないんだ。選ばれなかっただけなんだよ」。

 

 そしてパイをダストボックスに捨てようとするジェレミーを止めてブルーベリー・パイをほぼ1ホール食べるエリザベス。

 

(男はたくさん食べる女性が好き)

 

 ある晩エリザベスは「今のままではいけない。自分を変えたい」と内心決意、ジェレミーに何も言わず旅に出ます。

 

"My Blueberry Nights 15" Photo by calansa

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 テネシー州メンフィス。

 

 エリザベスは昼はダイナー、夜は酒場でバイトをしています。

 

 酒場の常連アーニー(デヴィッド・ストラザーン)は、別れた妻スー・リン(レイチェル・ワイズ)と今もよりを戻したい、と願っています。

 

 ジェレミーに宛てて手紙を綴るエリザベスに倣い、スー・リンに自分の気持ちを手紙にしたためるアーニー。

 

 カーウァイ作品に登場する男女は皆不器用なんですが、アーニーは哀しい。

 

"My Blueberry Nights 25" Photo by calansa

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 でもスー・リンにはその気が全く無い。

 

 「もう来ない。最後の酒だ」とエリザベスに言ったアーニーでしたが、また店に現れ、どんどん酒浸りになってゆく。

 

 彼はアルコール依存症なのです。

 

 ある晩、店でスー・リンと鉢合わせたアーニーは口論の末に…。

 

 

  メンフィスを後にしたエリザベス。

 

 アリゾナのカジノで働くエリザベスは、ギャンブラーのレスリー(ナタリー・ポートマン)と出逢う。

 

 レスリーと取り引きしたエリザベスは、彼女のギャンブル資金になけなしの貯金すべてを提供。

 

 しかし、レスリーは賭に負けて全額すったと言う。

 

 約束通り、エリザベスはレスリーの新車を貰います。

 

 するとレスリーは、エリザベスに「大勝負するからベガスまで乗せて欲しい」と頼みます。

 

 2人はベガスに向かいますが、レスリーの携帯に疎遠になっていたという彼女の父の危篤の知らせが入る。…

 

"My Blueberry Nights 45" Photo by calansa

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 「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は、ウォン・カーウァイ作品にしてはストーリーがある方です。

 

 とは言っても、やはりそこはウォン・カーウァイ。

 

 ストーリーはあってないようなもので、雰囲気重視(?)。

 

 店の外から中のキャラクターを撮影する斬新さ。ショーウィンドウの文字が人物に被る。

 

 防犯カメラの映像使ったり、流石はウォン・カーウァイ。

 

"My Blueberry Nights 32" Photo by calansa

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 「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は、人恋しい男女の物語ですね。

 

 もう終わってしまい失われた愛を、皆今も諦められず寂しさを引きずっている。

 

 ジェレミーは深夜店の前で煙草を一服します。

 

 それは消えたエリザベスが突然ふらっとまた店に現れるんじゃないか、と毎晩期待しているから。

 

 レスリーがエリザベスにウソをついていたのは、レスリーがエリザベスと一緒に居たかったからだと思います。

 

"My Blueberry Nights 46" Photo by calansa

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 アーニーに至っては、スー・リンと別れているのにそれを受け入れられていません。

 

 自分達は今でも夫婦だ、と信じている。

 

 アーニーは、心の裂け目を満たそうと酒を注ぎ込む。

 

 でも愛じゃないからいつも乾いているんです。

 

"My Blueberry Nights 30" Photo by calansa

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 その点、登場人物の中でエリザベスが一番大人で自立したひとだな~と思いました。

 

 ある晩エリザベスは、元カレが思い出の部屋で新しい彼女といちゃついているのを通りから確認します。

 

 で、その足で真っ直ぐジェレミーの店へ行き、ドアを開けることも彼女は出来た。

 

 しかし、エリザベスはその安易な選択をしませんでした。

 

 エリザベスは敢えて廻り道して旅に出ます。

 

 しかも1年間も。

 

"My Blueberry Nights 10" Photo by calansa

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 ジェレミーは、エリザベスがいない間も毎晩手つかずで売れ残るブルーベリーパイを止めずに店に置いてきました。

 

 「エリザベスが突然帰って来て、ブルーベリーパイを丸ごと食べるかも知れない」。

 

 ジェレミーはそう思っていたんですね。

 

 エリザベスも、離れていても「彼はきっと待ってくれている。そして彼はあのブルーベリーパイを出してくれるだろう」と信じていたんじゃないですかね。

 

 エリザベスの結論に共感です。

 

 「1年近くかかったけれど 道を渡るのはそう難しいことじゃない 反対側で待つ人次第なのだ」。

 

"Lo mejor de todo" Photo by Chiriberti

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 色彩にこだわりまくるウォン・カーウァイ監督。

 

 ブルーベリー色を中心に素晴らしいスタイリッシュな映像美。

 

 とにかくシャレオツ。スタイリッシュな映像で、オープニングからコーヒーゼリーにフレッシュが染み渡るアップから美しくてオシャレ。

 

 食べものを色恋のメタファーにしたりするウォン・カーウァイの演出は、表現がモロじゃないところも好きですね。

 

"My Blueberry Nights 04" Photo by calansa

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 ノラ・ジョーンズは、本作が女優デビュー作にして初主演なんですけども、巧いですね。

 

 ウォン・カーウァイの方からノラに演技をしてはどうか、と誘ったそうです。

 

 ノラ・ジョーンズは「The Story」をこの映画のために書きおろして提供しています。

 

 あの少しハスキーな歌声でしっとり歌い上げます。癒されますね。

 

 ウォン・カーウァイもやはり彼女の声に一番惹かれたんだそうです。