「ミッドナイト・ラン」(1988年) | ネコ人間のつぶやき

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 マーティン・ブレスト監督「ミッドナイト・ラン」(1988年)は、賞金稼ぎの男と賞金首の逃避行をコミカルに描くロードムービーの傑作です。

 

 

 ロサンゼルス。


 バウンティハンターのジャック(ロバート・デ・ニーロ)は、保釈金代行業者のエディから会計士のジョナサン・通称デューク(チャールズ・グローディン)の確保を依頼されます。

 

 デュークは顧客のセラーノがマフィアと知り、組織の帳簿をちょろまかして大金を慈善団体に寄付したために横領罪で起訴されたという不思議な男。


 で、デュークは保釈後は行方をくらましていました。


 エディはデュークの多額の保釈金を肩代わりしているから必死なんです。

 

 ジャックはデュークを確保して5日後の真夜中までにロサンゼルスに連れてくる仕事を10万ドルで請け負います。


 ジャックはその報酬で賞金稼ぎ業から足を洗おうと内心決意。


  で、切れ者のジャックはニューヨークへ飛び、速攻でデュークを確保。


 しかし、デュークが飛行機恐怖症のために騒ぎだし、ジャックは仕方なくロサンゼルスまで陸路で向かうことに。

 

 デュークを消したいセラーノの手下と数年間セラーノを追っているFBIが早速ジャックに接近。


 エディの事務所の電話番ジェリーがセラーノと通じていて、情報が入るたびにこっそり向かいの公衆電話からセラーノにたれ込む。


 エディの事務所はFBIが盗聴している。 


  おかげでセラーノ、FBI双方にジャックの動きが筒抜け。


 さらにはセコいエディが賞金稼ぎのマーヴィンも雇う。


  皆がデュークを狙い四つ巴の展開になるんです。


 だから、エディに「チョロい仕事だよ」と言われたジャックは「全然チョロくねーぞ!」となる。


 ジャックはタイムリミットまでにデュークを連れてロサンゼルスまで辿り着けるのか?…というお話。

 

 僕が大好きな1作がコレ。何回観たか分かりません。何度観ても好きです。


 本作を初めて観たのはテレビでした。


 当時思春期坊主の僕は、バウンティハンターという賞金稼ぎが犯罪者を捕まえるとか、保釈金代行業者とかアメリカ独自の仕組みを初めて知りました。


 池田勝、羽佐間道夫による吹き替えがまた素晴らしかったですね。


 僕は映画は字幕派ですが、「ミッドナイト・ラン」は吹き替え版をお勧めします。


 デ・ニーロがエラそーなFB I捜査官モーズリーからこっそり盗んだ身分証明書を手にカメラに向かってビシッと決める。

 

 アドリブなのかは分かりませんが、デ・ニーロが嬉嬉として演じています。

 

 そしてデューク役のコメディアン、チャールズ・グローディンが佳いのです。


 皆さんも仰るように、グローディンが名優デ・ニーロを食っているくらい素晴らしい。


 この映画に登場する面々、皆プロフェッショナルなんだけど、どこか抜けていて、コミカルなんです。


 マーヴィンの車のドア攻撃やジャックの「ありゃ何だ!」の後のパンチとか、互いに同じ手に何度も引っかかるのが大笑い。

 

 攻守がくるくる代わる展開でテンポも良い。

 

 ジャックは、かつてシカゴ市警の刑事だったのですが、追い詰めたセラーノにはめられてしまい、賄賂を断ってシカゴ去ったという過去があるんです。


 ジャックは安易な選択をせず、汚職警官になるのを断った正義漢なんですね。


 ジャックは筋を通す男。セラーノの誘いを断った代わりに全てを失って孤独に。


 その後今に至るまで10年間くすぶり、絶対にヨリは戻らない 元妻に未練を引きずっている。


 ジャックの孤独と喪失感は、特に都会人のテーマでもありますね。


 デュークもセラーノの金に手をつけた理由は正義感です。


 セラーノに因縁があるジャックとデュークは似た者同士なんですね。


 デュークがまた面白い男で世話焼きなんです。


 悪党達相手にウンザリしているジャックは引退してコーヒーショップの開業を考えているんですが、デュークはその投資はリスクが高いよ、とアドバイスしたり。


 ジャックの悪い生活習慣を気遣ったり、9年間疎遠になっている元妻と娘に会うべきだ、とか。


 ジャックとデュークは逃避行するうちに奇妙な友情が芽生えるんです。

 

 ロードムービー独特のユルさ、ユーモアたっぷりの笑いと対照的に、夜を駆ける孤独なアウトロー達の哀愁が漂っています。


 その分人情があたたかい。


 この人情が80年代的なんですね。


 「来世で会おう」という台詞ほど強い絆を言い表す言葉はありません。


 デュークは翼の無い天使だったのでしょうか。


 だまし騙され、追って追われて。


 散々笑って、爽やかな感動が堪らない「ミッドナイト・ラン」は超お勧めです。