「プリティ・リーグ」(1992年)は、第二次世界大戦中の全米女子プロ野球リーグを題材にした映画です。
"A League of Their Own" Photo by Craig Duffy
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アメリカが第二次世界大戦に参戦し、メジャーリーガーも戦地に出征するようになります。
そのため、メジャーリーグが中断となり、ベースボールの存続が危ぶまれる事態に。
その危機を打開するために全米女子野球リーグが創設されます。
女性によるプロベースボールリーグです。
オレゴンの田舎町で酪農を営むドゥティ(ジーナ・デイヴィス)とケイティ(ロリ・ペティ)の姉妹は野球好き。
ソフトボールの試合後、ドゥティはスカウトされ、ケイティは姉のバーターで全米女子野球リーグに参加します。
この姉妹のきょうだい葛藤を織り交ぜながら、女性の生き方を問うコメディとなっています。
「プリティ・リーグ」は、女性の社会進出をめぐる物語なんです。
戦争中ですから、ドゥティをはじめ既婚の選手は戦地の夫を案じながら野球をします。
戦死の知らせである電報が届くのを怖れながら。
最初は観客から馬鹿にされます。
女子野球選手達を最初に公に非難したのは保守的な女性達。
「女の敵は女」ということなんでしょう。
中々人気が出ず、興行的に厳しい状態を打破すべく涙ぐましい努力をしする女子選手達。
コメディタッチで明るく描いていますが、かなり嫌な思いをします。
やがて彼女達の健闘実ってリーグは盛り上がります。
でも、終戦すれば男性が戦地から帰還してメジャーリーグが再開する。
そうなれば女子野球リーグは解散して選手達は元の場所に戻る運命。
野球選手だけでなく、愛国心を煽られて工場で働いていた女性達はキッチンに戻らされる。
「プリティ・リーグ」は、時代に利用され翻弄された女性達の物語なんです。
公開当時、マドンナが出てることもあって映画館に観に行きました。32年ぶりに観直しましたよ。
原題は「League of their own」なんですが、邦題は「プリティ・リーグ」。
本作の2年前に公開「プリティウーマン」の大ヒットに影響受けてますね。邦題あるあるです。
映画公開の1992年、女性の社会進出が法律で保障され始めてまだ数年という時代に「プリティ・リーグ」が作られたことは当時の空気感だったと思います。
「プリティ・リーグ」の結末は、まだ時代が早すぎたという過去があったということ。
1991年公開の「テルマ&ルイーズ」も似たテーマを扱った名作です。
悲劇的ラストで終わった「テルマ&ルイーズ」との違いは、「プリティ・リーグ」がその後(現代)を描くことで、将来に向けて明るいメッセージを観る者に送ったこと。
これからは違うよ、確かに苦難は多いけどこれからなんだ、と。
そして最初は大変だけど、何事にも最初があるんだよ、と。
そういうメッセージを「プリティ・リーグ」は唱っているんだと思いますね。
あと、監督のジミーを演じたトム・ハンクスがよかった。
ジミーはかつてのスター選手でしたが、今や酒浸りのトラブルメーカー。
ジミーは女子選手を最初は馬鹿にしていましたが、彼女達の本気に自分も感化されていつしか再び野球への情熱を取り戻すのです。
さいごに人生再生したジミーが「辛くなったのよ」と失意するドゥティに語った名言を。
「辛くて当然だ。でなきゃ誰でも出来る。辛いからこそ楽しいんだ」。