名優リチャード・バートン主演で贈る歴史スペクタクル映画「アレキサンダー大王」(1956年)をご紹介します。
紀元前356年、血を流して疲弊していた古代ギリシャ。
マケドニア王フィリッポス(フレデリック・マーチ)は、関係の冷えていた王妃が息子アレキサンダーを生んだことを聞きますが、微妙な顔。
フィリッポスはアレキサンダー(リチャード・バートン)が成人すると脅威に感じるようになり、アレキサンダーを遠ざけたり、息子の友人達を追放しようとします。
フィリッポスから離縁された王妃の囁きに乗って、アレキサンダーの友パウサニアスがフィリッポスを殺害してしまいます。
直後、アレキサンダーはパウサニアスを殺してしまう。
王となったアレキサンダーは大陸制覇の野望を叶えるべく遠征に出ます。
連戦の末についにペルシャ帝国を征服したアレキサンダー。
既に死んだ父王を意識しては憎悪するアレキサンダーは、自身を「神の子」と名乗ります。
しかし、そんなアレキサンダーについて行けなくなった親友達。
アレキサンダーは造反者として親友達を粛清してゆく。
「栄光と引き換えにその人生は短い」という神託の元に生まれたアレキサンダー。
神託通り10年に渡る遠征の途中、32歳の若さで亡くなります。
「人には運命がある」。
劇中何度も登場するセリフです。
運命とは人が抗えないものです。アレキサンダーの神託もそうです。
苦楽を共にしてきた親友達を殺める展開になってしまうアレキサンダー。
アレキサンダーの深き業が悲劇を呼んだように見えます。
親友の亡骸を抱き締めて涙するアレキサンダーを見て、征服されたペルシャ人が言う。
「アレキサンダーが人を殺めて涙する?」。
アレキサンダーは10年間戦い続けて、冷徹に数え切れない人達の命を奪ってきたわけですから、ペルシャ人の語りはアレキサンダーの矛盾を突いているんです。
矛盾を抱える人間存在。
映画は次の皮肉めいた言葉で終わります。
「不思議なものは数あれど 人間ほど不思議なものはない」。