「北北西に進路を取れ」~サスペンスとロマンスと保護本能 | ネコ人間のつぶやき

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 今回ご紹介するのはアルフレッド・ヒッチコック監督の名作スリラー「北北西に進路を取れ」(1959年)。

 

"Cary Grant" Photo by RV1864

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 広告マンのロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)は、ホテルで偶然別人に間違われて見知らぬ屋敷に連れられてしまいます。

 

 屋敷の主・タウンゼントから「スパイのキャプラン」と決めつけられたロジャー。

 

 ロジャーがいくら否定しても全く取り合ってもらえず、タウンゼントから何やら情報を寄こすよう言われます。

 

 その晩、タウンゼントの手下に無理矢理泥酔させられた挙句に車ごと崖から落とされそうになったロジャーは、警察に飲酒運転で捕まることで何とか危機を脱出。

 

"North by Northwest" Photo by Craig Duffy

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 翌日、ロジャーはタウンゼントが国連職員と知ります。

 

 ロジャーが国連本部ビルにタウンゼントを訪ねると、全くの別人が現れる。

 

 しかも目の前でタウンゼントが暗殺され、ロジャーは犯人と誤解されて指名手配されてしまいます。

 

 場面変わってアメリカの某諜報機関の一室でタウンゼント暗殺事件について問われた「教授」と呼ばれる男は「巻き込まれたロジャーには気の毒だが何もしない」と結論。

 

 思った以上に複雑な状況のようです。

 

 偽のタウンゼントはバンダム(ジェームズ・メイソン)という敵方の大物スパイだったのですが、ロジャーが知るよしもありません。

 

"North By Northwest" Photo by Craig Duffy

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 ロジャーはキャプランの足取りを追ってシカゴ行きの寝台特急列車に乗り込みます。

 

 食堂車でロジャーはイヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)と知り合い、彼女から誘惑されます。

 

 ロジャーも口説きモードになったその時、列車に刑事が捜索のために乗車してきます。

 

 この危機を乗客のイヴがロジャーを部屋にかくまって救います。

 

 ロジャーが指名手配犯と知りながら助けた理由をイヴに尋ねると「いい顔だから」。

 

 彼女の部屋で一夜を明かしたロジャー。

 

"Cary Grant, Eva Marie Saint, "North by Northwest", 1959" Photo by Laura Loveday

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 しかし、その列車にはバンダムと手下のレナード(マーティン・ランドー)も同乗していたのです。

 

 イヴはバンダムと通じていたんですね。ということは、ロジャーはハニートラップに引っかかったわけです。

 

 実際、列車を下車してイヴがキャプランと電話して彼が指定したという待ち合わせ場所にロジャーが行くと、農薬散布をしていた飛行機に襲われます。

 

 イヴを責めるロジャー。イヴが一瞬悲痛の面持ちになります。

 

 どうやら彼女にはさらに複雑な事情があるようです。・・・

 

"Cary Grant (as Roger Thornhill / George Kaplan) being attacked by the biplane crop duster in "North By Northwest"" Photo by Chris Devers

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 寝台特急列車は出逢いとロマンスの舞台であり、サスペンスの舞台でもあります。

 

 「北北西に進路を取れ」を観た時に「007/ロシアより愛をこめて」と似ている、と思いました。

 

 「ロシアより愛をこめて」でもショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドは寝台特急で敵と闘い、ロマンスを愉しみます。

 

 ボンドもその後飛行機に襲われますね。

 

 「ロシアより愛をこめて」が1963年公開なので「北北西に進路を取れ」の方が先なんですね。

 

 ヒッチコックは007にも影響を与えたのかも?

 

 大きな違いはスーパーエージェント・ボンドは、ガジェットの組み立て式ライフルで飛行機を撃退しますが、ロジャーは普通の男ということ。

 

  だからロジャーは全力で逃げるしかないんです。

 

"1959 ... peering down!" Photo by James Vaughan

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 広告会社の重役のロジャーは魅力的な雰囲気の男ですが、口から出任せを言うなど、いい加減なところがあるらしいのです。

 

 別れた2人の元妻達は清々しているようだし、ロジャーの母親も呆れています。

 

 だから余計にロジャーは「他人に間違えられた」と訴えても誰も信じてくれない。

 

 そんな時に孤独なラナウェイ・ロジャーがイヴを大好きになるのは言わずもがな。

 

 イヴの秘密を知って、好きになった女性のために独り危険を顧みずに行動するロジャーに拍手喝采。

 

 やるときはやります、みたいな。

 

"1958 ... 'North By Northwest"" Photo by James Vaughan

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 時にときめき、時に嫉妬の炎を燃やす。

 

 そして裏切りに怒り、罪悪感を抱いたり、気づいたら本気になっていた、という。

 

 出逢って恋をするのは化学反応と言いますか、傍から見たら驚きの行動も当人には当然だったりするんですね。

 

 間違えられた男の孤軍奮闘にヒロインが絡むミステリーはヒッチコックの十八番ですが、それにしても、イヴが可愛そうになってくるし、巻き込まれたロジャーには同情します。

 

 2人はポジションが似ているところがあり、振りまわされている。

 

 互いに「守らなきゃ」という保護本能を刺激されたところが大いにあったように思いますね。

 

"Martin Landau, Eva Marie Saint, James Mason, "North by Northwest", 1959" Photo by Laura Loveday

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 スリリングな展開の連続でハラハラドキドキ。

 

 ロジャー専用のマッチなど、伏線をすべて回収してみせます。

 

 絶体絶命のイヴにロジャーがかけた言葉が佳いんだな。

 

 ラストのラシュモア山国立記念公園からの場面転換まで鮮やかなヒッチコックの演出に脱帽なんですよ。

 

"Cary Grant & Eva Marie Saint (North by Northwest)" Photo by Jack Samuels

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 ケーリー・グラントは二枚目でユーモラス。

 

 こういうところがヒッチコックに気に入られた気がします。

 

 イヴ役のエヴァ・マリー・セイントは、落ち着いた雰囲気で、ちょっとした仕草が意味深で大人っぽい。

 

 彼女には儚さがあるので、独り秘密を抱えたイヴにピッタリでした。

 

 50年代はヒッチコックが傑作を何作も世に贈った黄金時代だったと思います。

 

 「北北西に進路を取れ」もサスペンスにロマンスを絡めたヒッチコックらしい作風で好きですね。