今回は「ジャンパー」(2008年)です。
瞬間移動能力に目覚めたデヴィッドは世界中をジャンプして自由を謳歌するようになるが、やがて何者かに追われるように…。
"Jumper" Photo by Phim Ảnh
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デヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)が5歳の時に母親(ダイアン・レイン)が家を出て行きます。
それ以降父親は人が変わってしまう。
孤独と閉塞感に喘ぐ思いをしていたデヴィッド。
15歳の時に凍った川に落ちた際に突然テレポーテーションを操るジャンパーに目覚めたデヴィッドは、自由を求めてミシガン州から単身ニューヨークへ。
銀行の金庫にジャンプして大金を盗んだデヴィッドは優雅に暮らしますが、ジャンパーを取り締まる組織「パラディン」のリーダー、ローランド(サミュエル・L・ジャクソン)がデヴィッドを追います。
そして10年後、デヴィッドはローランドと対峙します。
特殊能力に目覚めた人間が、特に信念もなく、さりとて能力を封印せずに生きたらデヴィッドみたいになる危険がありますね。
デヴィッドは犯罪者ですから、ローランドの言う「こんな贅沢な暮らしをして報いがないと思ったのか?」は正論(その報いはやり過ぎですが)。
もし思春期少年デヴィッドが悩んだ末に「能力が自分に授かったのは天命を果たすための運命的な贈り物なんだ」と解釈したなら、彼はアメコミヒーローなんですけどね。
しかし、独り自分の欲望に能力を10年間も使っているデヴィッドには良きモデル(理想像)がいないんです。
デヴィッドが思いを寄せるミリー(レイチェル・ビルソン)はかつてローマに行く夢を抱いていました。
しかし、地元のバーに勤める成長した彼女はその夢を断念しています。「大人にならなきゃ」と。
デヴィッドもそうですが、貧困家庭出身の若者の悲哀なんですね。
デヴィッドが犯罪者と分かった後も、彼と行動を共にするミリー。
ミリーはデヴィッドが好きというだけでなく、不自由さから逃げたかったのかな、と思えてきます。
"More from "Jumper"" Photo by John Blyberg
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デヴィッドともう1人のジャンパー・グリフィン(ジェイミー・ベル)も能力を使って犯罪することに抵抗感ないのです。
「自由でいたいけどそれに伴う責任は嫌」、「偉大な能力に伴う責任も嫌」という風にデヴィッドが見えて共感を得られなかった気がしますね。
デヴィッドの母親との関係も丁寧に描かれていたら、もっと面白かったな、と。
せっかくダイアン・レインが出てるわけですから(原作小説はどうなのだろう?)。
ダグ・リーマンは「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs.スミス」の監督なのですが、脚本が良かったらもっと高評価を得られたかも、と思った次第。…