グスタフ・クリムトやギュスターヴ・モローといったファム・ファタールに魅せられた画家の展覧会が催されていますが、ファム・ファタールはいつの時代でも人を魅惑するモチーフです。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1946年)
"John Garfield and Lana Turner" Photo by Film Star Vintage
source: https://flic.kr/p/fgaFgZ
ファム・ファタール(femme fatale)とは「運命の女性」を意味するフランス語ですが、「男を翻弄し破滅に導く魔性の女、悪女」といった具合に多くは悪い意味合いで使われますね。
以前ファム・ファタールの意味について記事を書いたのですが、皆さんの関心を頂いているようです。
そこで今回はファム・ファタールについて過去記事で触れなかった点を長文ですので2回に分けて書こうと思います。
「カサブランカ」(1942年)
"BE023918" Photo by Tullio Saba
source: https://flic.kr/p/eMyAhh
それでですね、ファム・ファタールの逆、「女性を破滅に誘う悪い男の話ってあるかな?」と考えましたが、私が知らないだけかもしれませんが正直浮かびませんでした。
その理由としては、まず女性の作り手がまだまだ少ないゆえに、作品数自体が少ない、ということがあるでしょう。
それ以外にもファム・ファタールを語る際の男女の熱に差があるように感じます。
「めまい」(1958年)
"De entre los muertos l 1958.Vertigo" Photo by Ethan Edwards
source: https://flic.kr/p/KBtGsL
「ファム・ファタールもの」に限らず、例えば「女性の作り手ならこのヒロインをどう描いただろうか?」等と思うことがあります。
(この文章もそうですが)作り手が男性の場合、描き方は男性の視点であり、どうしても想像の域を越えないわけですよね。
そういうわけで個人的に女性の作り手による「ファム・ファタールもの」も観たい気持ちがあるのですが、同時に「女性の作り手があえてファム・ファタールを描きたいかな?」という疑問も生じるのです。
それは男性の作り手が「あえて女性を破滅させる悪い男を描きたいとは思わないのでは?」というのと同じ理由なのですけれども。
「007 カジノ・ロワイヤル 」(2006年)
"discutivo.com/?p=1642" Photo by discutivo
source: https://flic.kr/p/bkCoEA
男性は女性に対して計算をするより夢見がち。都合よく解釈しがちなロマンティストですね。
「ファム・ファタールもの」を観ていると「男って情けないな」と感じると同時に「男性はファム・ファタールものにロマンさえ描いてしまうのでは・・・」と思いますね。
ロマンとは夢想。つまり現実ではない、ということで、そこがミソなんですけども。
例えば「SHERLOCK/シャーロック」シーズン2「ベルグレービアの醜聞」でアイリーン・アドラーにシャーロックはまんまと出し抜かれますが、シャーロックもロマンティストに描かれていました。
逆に「女性が悪い男に破滅させられる話を観てロマンを描くかな?」と疑問に思ってみたり。
「SHERLOCK」シーズン2
"974" Photo by interior_animus
source: https://flic.kr/p/nLd3La
「SHERLOCK」のアイリーン嬢とシャーロックの関係はシリアスに描かれていましたが、ガイ・リッチー監督版「シャーロック・ホームズ」(2009年)では、シャーロックとアイリーンの関係がルパンⅢ世と不二子ちゃんのようにコミカルに描かれていました。
アイリーン嬢も峰不二子もそうですが、ファム・ファタールはエロスの側面が強調されて男性の願望を充足するように描かれています。
男はファム・ファタールの性的魅力に溺れ、彼女にコントロールされて利用されるのが定番ですね。
ところが鑑賞者の男性諸氏は、ファム・ファタールに翻弄されて破滅する男にさえ擁護したい気持ちに駆られるところが大なり小なりある気がします。
"85" Photo by Amal FM
source: https://flic.kr/p/e7Z933
まぁ、それってほとんど自己弁護なのかもしれませんけれども。「仕方ないよ、男はバカだから」と。
そういう男女関係の真実を悲劇だけでなく、コミカルにも描きやすいのでは。
「ファム・ファタールもの」は、男女関係を軸とした物語なので男女の相違と言いますか、感覚の違いが作り手・鑑賞者双方に大きく影響しますね。
(※次回後編に続く)
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