【IWJルポルタージュ】宮崎県日向市在住の主婦をめぐる裁判はSLAPPなのか?! ~黒木睦子さんと製錬所を直接取材(前編)
【IWJルポルタージュ】 宮崎県日向市在住の主婦をめぐる裁判はSLAPPなのか!?~黒木睦子さんと製錬所を直接取材(後編)
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後編の「日向製錬所から届いた6つの回答と、それに対する黒木さんのコメント」は会員限定です。読んでみたいと思われる方で会員でない方は会員登録して読んで頂ければと思います。
IWJは最近、集団的自衛権、TPP、原発再稼働の取材に力を入れおり、テレビや新聞では報道されない、政府にとって都合が悪い事実の報道に力を入れてます。(2015年8月8日現在)
さて、裁判が始まった当初から「産廃問題でも何でも無い問題、スラップでない」と取材されてきた、市民メディアみやざきCMMさんが、先ほど紹介したIWJの記事削除を求める署名キャンペーンを始められました。
Change.orgでキャンペーンを始めました「貴社の記事の削除を求めます」
木星通信さんも、市民メディアみやざきCMMさんに引き続いて
日向市民、および宮崎県民の方に署名のお願い。~日向市の偽装スラップ事件~
という記事を書かれました。
裁判の内容や経過については、「市民メディアみやざきCMM」さんや「イワシ タケ イスケさんのブログ『鰯の独白』の裁判傍聴記録を読んで頂けたらと思います。
署名するかどうかは皆さんの判断です。
今回、木星新聞さんが書かれた記事について疑問に思う所がありますので、以下に検証します。
木星通信さんの記事には
『そこにはありもしない黒木さんが主張した公害汚染の実態が記載され、それが実在してるかのような内容でした。裁判は2015年7月15日に結審し、裁判試料も出そろいましたが、ついに黒木さんは主張していた「《 鉛210倍ヒ素50倍フッ素20倍総水銀15倍カドミウム3倍セレン3倍検出。》の検査結果は、コップ一杯くらいの水なのです。」を立証出来なかったのです。』という文章があり、その根拠として黒木さんブログのコピーがつけられています。
少し話が逸れます。
公害とは環境基本法第二条3の定義によると以下のように書かれています。
※わかりにくいので括弧内は省略
この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。
被害を訴えているのは黒木さんだけのようなので「相当範囲にわたる」には該当しない、公害と言うほど大きな問題ではないようです。
さて、問題のコピーですが

沈殿池の水から、鉛2.1mg、ヒ素0.52mg、フッ素20mg、総水銀0.0073mg検出されたと書かれています。
この数値が正しいのか確認します。この裁判について当初から取材されている市民メディア宮崎CMMさんの記事、訴状閲覧3月3日に、黒木さんが裁判所に提出した、計量証明事業登録されている宮崎県環境科学協会が分析した計量証明書の数値が記載されています。
鉛2.1mg/L、ヒ素0.52mg/L、フッ素20mg/L、総水銀0.0073mg/Lと書かれており、黒木さんのブログと一致します。また、カドミウム0.0096mg/L、セレン0.030mg/Lとも書かれています。
次に環境省のホームページで環境基準について調べます。
鉛0.01mg/L以下、ヒ素0.01mg/L以下、フッ素0.8mg/L以下、総水銀0.0005mg/L以下と書かれています。これも、黒木さんのブログと一致します。カドミウム0.03mg/L、セレン0.01mg/Lです。
黒木さんがブログで訴えた数値は分析会社の分析値と一致しますし、環境基準も一致します。
では、環境基準の何倍になるか計算してみます。
鉛 2.1÷0.01=210倍
ヒ素 0.52÷0.01=52倍
フッ素 20÷0.8=25倍
総水銀 0.0073÷0.0005=14.6倍
カドミウム 0.0096÷0.003=3.2倍
セレン 0.030÷0.01=3倍
Twitterで訴えた倍数は数値を簡単して伝えようとしたなら、間違いと言えるほどの違いではないと私は考えます。
「この検査結果はコップ一杯くらいの水なのです」というツイートですが、黒木さんは「検査機関に相談して指導された通りのやり方で水を汲み」とツイートしてます。
私は分析会社に分析を依頼してその結果を行政に報告したり、行政の抜き打ち検査に立ち会ったりしてます。
分析会社が遠隔地にある等、分析会社がサンプル採取出来ない場合、依頼者がサンプル採取することがあります。私も自分で採取し宅急便で分析会社に送ってます。この場合、計量証明書のサンプル採取者欄には私が勤務する会社名が書かれますが、その結果を行政に報告して問題にされたことは一度もありません。
黒木さんはサンプルの取り方を知らなかったので検査機関に相談し、指導された通りのやり方、コップ一杯くらいの水を汲んだのでしょう。
環境基準27項目を分析するとして、サンプルの採取量は2L程度です。製錬所ホームページにある9項目だけ分析するのなら、コップ一杯くらいあれば十分でしょう。
参考までに、工場排水試験方法32ページから試料採取量を引用します。
Pb(鉛),Cd(カドミウム),ほか重金属は1L,1本と書かれています。余裕を見てキリがいいサンプル容器サイズの量が書かれていると思います。
現地での処理が書かれていますが、これは直ぐに分析出来ない場合の処理で、通常は直ぐに分析するので行いません。
次に、「やまもといちろうさんがTweet。」についてですが、このリンク先にK.熊蔵さんのツイートがあり、このリンクをクリックすると
宮崎で環境汚染を訴えるおばさん…どう見ても道路工事な話|やまもといちろうコラム
が出て来ます。(2014年12月5日公開)
独自に取材された部分について私は何も知らないのでコメントしませんが、気になる文章がありますので、これについてコメントします。
「私も実家が産廃業者でしたので、調べて見たところ、マニフェストという産廃を出す側の情報がまったくなく、責任を持つ排出事業者がはっきりしません。アセスメントの報告書が出ていますが、河川汚染の話は特に出ていないようです。」
「マニフェストという産廃を出す側の情報が全くなく」
当然です。製品だと主張しているのだからマニフェストを出す事業者はいません。マニフェストを出したら自ら廃棄物だと認めていることになります。グリーンサンドが製品として販売されてない場合は、廃棄物処理法の「鉱さい」に該当します。鉱さいは管理型最終処分場か遮断型最終処分場でしか処分できません。マニフェストを出したのなら産業廃棄物ですから、それを土地の造成に使ったなら、完全に産業廃棄物の不法投棄になります。
「アセスメントの報告書が出ていますが、河川汚染の話は特に出ていないようです。」
アセスメントの報告書と言われると、私は環境アセスメントを思い浮かべるのですが、行政や製錬所の分析結果のことでしょうか?。確かに行政や製錬所が実施した分析結果では環境基準を超える有害物質は検出されてません。
「責任を持つ排出事業者がはっきりしません」
昔はそうだったのかもしれませんが、現在は責任を持つ排出事業者はハッキリしています。
産廃知識 排出事業者責任
産業廃棄物は廃棄物処理法により「排出事業者に処理責任がある」ことが明確化されています。
もし産業廃棄物だとしたら製錬所に処理責任があることはハッキリしてますし、製品だとしても製造者である製錬所に責任があります。廃棄物だろうが製品だろうが製錬所に責任があることはハッキリしてます。
「グリーン・サンドは国道だけでなく鉄道建設の基礎にも使われるポピュラーなもので、これのどこが不法投棄の話になっているのか良く分かりません。」
私は、黒木さんが主張する「あの土地に使われたグリーンサンド」が、環境省の行政処分の指針についてで判断して廃棄物に該当するのかどうかを問題にしているのであって、一般的に製品として使用されているグリーンサンドを問題にしているのではありません。
宮崎県は「廃棄物に該当するとは言えない」という文書を情報公開しましたが、その根拠は真っ黒に塗りつぶされており、その理由が全くわかりません。
製錬所から排出されるグリーンサンドの廃棄物の該当性について、廃棄物とには当たらない理由がまっ黒です。やっぱり廃棄物?
「廃棄物に該当するとは言えない」と結論づけるなら、黒塗りのない文書を開示できるはずです。黒塗りは余計に廃棄物ではないか?と疑われるだけだと思います。宮崎県は、製錬所や日向市、宮崎県のためにも、早く全面公開した方が良いと私は考えます。
最後に、日本国憲法を書いておきます。
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
名誉毀損は、第二十一条の表現の自由と、第十三条の幸福追求権の衝突だそうです。
名誉毀損とはなんですか?
つづく