新国立劇場バレエ「アラジン」@オペラパレス | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 デイヴィッド・ビントリー

音楽 カール・デイヴィス

米沢唯/奥村康祐/井澤駿/中家正博/木下嘉人/原健太/小野絢子/福岡雄大

 

 ご存知の方も多いと思うけど、第2幕まで踊った唯ちゃんが体調不良で降板。それに合わせて奥村くんも下がり、第3幕は絢子さんと福岡くんが急遽の代役で踊りました。経緯としては、第3幕、規定の休憩時間から更に10分近く経っても幕が開かないので不吉な予感を覚えていたんだけど「……ただいま準備をしています」とアナウンスが。セットの調子が悪いのかなと思っていたら、しばらくして吉田芸監が舞台に出てきて降板→代演を発表し「あと15分ほどお待ちください」と。客席からどよめきが。幕が上がり、舞台上に絢子福岡ペアがいるのが見えたところで万雷の拍手が湧き起こりました。

 2幕までの唯ちゃん、踊りや所作からは体調不良には全く見えなかったので、そこはプロ根性でやり通したのね😢 怪我ではないようなのでその点は安心ですが、第3幕を踊れないほどの限界状態だったわけで、やはり心配です。唯奥村ペアの次の回は22日なので、それまでに快復されていることを祈ります🙏 久しぶりに真ん中を踊る奥村くんを最後まで観られなかったのは、正直なところ残念だったけど、2組のペアを続けて観たことで、ダンサーとその組み合わせによって生まれるケミストリーってずいぶん違うんだというのを、今更ながらに目撃しました。

 

 唯ちゃんのプリンセス品性や利発さは失わず、同時にキュートで好奇心旺盛な現代風な女の子です。御輿から降りたとき、広場の活気にワクワクする表情を見せたり、アラジンと目が合って何だか分からないトキメキを感じハッとしたり、りんごを受け取ったときにパッと輝いたりと、表情がくるくる変わる可愛らしさ。結婚式ではエレガント且つキレのいいダンスを見せ、ポーズの決め方には若々しさと幸福感が溢れていた。ちなみに、アラジンがこっそりプリンセスに会いに行く場が浴場で、女性たちがバスタオル1枚で踊り、掃除する男性たち(たぶん宦官)がいるの、今となってはアレですかね😓 密かに会いに行く場所は庭園のほうがロマンティックだし、どうしても浴場にしたいとして女性たちは薄手のフワフワ衣装で良いじゃん?

 

 奥村くんのアラジンすばしこくてイタズラ好きで大胆、少年度が高いノーティー・ボーイがハマってます。砂漠の風たちに翻弄されるダンスもなかなか良いし、ランプを探しに洞窟に入り、宝石類を目にした時のキラキラとした表情、宝石たちのダンスを見ている時の夢見がちな目が、おもちゃの山を目にした時の無邪気な男の子のそれ。そして唯ちゃんプリンセスに一目惚れした時の、表情がフワァ~と変化していく様子、演技派としての面目躍如たる繊細な表現です。軽やかでスピード感あるステップがとてもよく、結婚式では甘さをたっぷり出しエレガンスを加味したダンスで、サポート力も発揮し、唯ちゃんを優しい眼差しで見つめるところが素敵だった。

 

 3幕を踊った絢子さん福岡くんペア、場面が場面だけに多幸感いっぱい! 絢子さんは結婚してからも深窓のお嬢さま風にエレガンス味あふれ、マグリブ人(中家正博)の前で踊るダンスが綺麗(悲しい場面なんだけどね)。福岡くん、素肌が見える衣装なので胴回りムッチリが目立ち、あとちょっとで危ないレベルだけど😅 ダンスはパワフルで頼もしさ全開だった。マグリブ人の飲み物に眠り薬を入れようとするところ、カップを追いかけて走り回ったり、カップをさっと動かされて転びそうになったり、あと一歩手が伸びずにスライディングしたりという、このコメディー味がほんと上手い。最後のPDDは華やかで圧倒的でした。

 

 ジーンの井澤くん、回転やジャンプが大きくて力強さと優雅さがあり、空中でのポーズも綺麗で、場を支配するオーラがありました。ジーンって肉体美強調されるし見せ場となるダンスパートたくさんあるし(というか長いし)何度も真ん中に立つし存在自体がマジカルだし(登場の仕方、宙吊り演出、楽しいよー😊)、美味しいお役ですね。ジーンを取り巻く側近たちのダンスも迫力がありました。

 財宝の洞窟でのディヴェルティスマンでは、サファイアの優里さんが色っぽさを振り撒いていてgood。ルビーの直塚さんが大きくしなやかな動き、峻郁くんの踊りもパワーと安定感ありで、デュエットがダイナミック且つとても美しかった。ところでこのシーン、宝石1つ1つは衣装も綺麗でダンスもそれぞれ魅せるんだけど、最後に全宝石が集まって踊るとゴチャゴチャしてあまり美しくなかったな。一堂に会させるなら衣装に何らかの統一感を持たせた方が良いし、そもそも宝石の種類が多すぎる? 

 

 全体的にエンタメ性が高く、主にダンスを楽しむ作品として、とても良かったです🎊 ところで、アラブのお話のはずなのにアラジン母子は中国人、祝祭の場に獅子や龍のダンスも出てくるし……とアラブと中国の文化がごっちゃなのが???だったのでwikiで調べたら、原典である「アラジンと魔法のランプ」では「アラジン母子は中国人で、マグリブ出身の魔法使いにそそのかされて……」という、そのとおりの設定。歴史的事実として、中国の民族集団にはウイグル人タジク人などムスリムもいたし、唐の時代にはイスラム共同体もあったらしい。お話の舞台が中国なのかアラブなのかは曖昧なものの、トルキスタンである可能性を示唆する人もいるそうです。ビントリー氏の、欧米人あるある “勘違いオリエンタリズム” ではないというか、むしろ原典に寄り添ったお話なのね。

 

 奥村くん、カテコには登場するかしらと待っていたら、全員揃ってのカテコでは現れず、幕前でのカテコ時に、絢子福岡ペアと一緒に一度だけ登場しました。Tシャツにボトムスという普段着姿だった。アラジンの衣装じゃないのね、と思ったけど、この場に出られない唯ちゃんのことを気遣い、あえて役を主張せず控えめにしたのかな。

 

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