巳之助/右近/新悟/橋之助/辰之助/染五郎/緑/玉太郎/権十郎/幸四郎
8月の歌舞伎、観るのはこれだけです🙇♀️ 牡丹燈籠といえば “幽霊が燈籠を手に下駄をカラン…コロン…と鳴らして愛する人の元へ夜道を行く” としか知らなかったので、始めて歌舞伎「怪談 牡丹燈籠」を観たときは想像していたのと違っていて驚きました💦 主役は、焦がれ死にして幽霊になったお露(辰之助)と彼女に取り憑かれて死んだ新三郎(染五郎)で・は・な・く! それに関わった伴蔵(巳之助)と妻のお峰(右近)だったのと、怪談としての怖さというより、人間の業と因縁とねじれた愛情が絡み合う怖い話だったから。
今回の上演では、そこに、旗本・飯島平左衛門=お露の父(権十郎)の後妻お国(新悟)と愛人の源次郎(橋之助)の場も入れた「通し」で、この形で観るのは2011年以来ではないか? でも私の記憶に残っているのは同じ通しでも2007年の仁左さま伴蔵と玉さまお峰という黄金の配役のときで(お露は七之助、新三郎は愛之助)、天井から降ってきた百両の小判を、玉さまが興奮気味に目をキラキラ輝かせニッコニッコしながら「ちゅうちゅうたこかいな」って数えるシーンが今も脳裏に焼き付いています😆
今回のお峰は右近。右近の世話もの女房役って私は初めて観るかも。働き者で人情味があって(というか感情過多で😅)、夫の伴蔵も好きだけどお金も同じくらい好きという、気持ち良いくらいにスキッとした感じの女房だった。「百両くれるならお札を外してあげるって、幽霊に取引条件を出せば?」と悪知恵がキラッと働く感じとか、傑作。2幕では夫が酌婦(=お国)に入れ上げていると知って嫉妬と悲しみと夫への憎しみとでグチャグチャになるところに哀れさを感じました。
三津五郎の当たり役とされる伴蔵は巳之助で、今回は「父のやり方で見せる」と言ってました。全体の演出もそうなのかな(今まで観てきたのと違うとこ色々あった)。伴蔵って、大金欲しさとはいえ妻に急かされて新三郎を死に追いやるわけで、小悪党というわけではないのよね。巳之助は、1幕では恐妻家気味の小心者(言い換えれば根は真面目)や、幽霊がらみではちょっと弱腰の感じが上手く出ていて、2幕で大店の旦那になり羽振りが良くなってからは威勢を張って羽目を外しちゃうとか、その変化の中に生身の人間臭さが感じられて、どうしても憎めないのでした。
で、この夫婦、1幕ではコミカルな台詞のキャッチボールが痛快でそこに仲睦まじさが感じられたのに、最後には、伴蔵は「百両欲しさに幽霊と契約して自分のご主人さまを死なせてしまった」という自分の過去を思い出させるお峰が鬱陶しくなって殺し、そのお峰の霊に操られて伴蔵も川底に引き摺り込まれるという陰惨さ😰 そのシーンは「女殺油地獄」を思わせる殺しの様式美にあふれ、伴蔵が本水の雨の中ずぶ濡れであがくところも含め、リアルだけど型の美しさがあり「ああ、歌舞伎だなあ」って思いながら観ました。2人がいなくなった川縁、夏の夜の闇に2人の魂のように2匹の蛍が飛ぶ光景が余韻を引きずります。
もう一つの転落カップルお国と源次郎。新悟のお国が男前で色っぽくて大変良かったです。不倫相手の源次郎が好きで好きで一緒になりたくて、だから「邪魔な夫の平左衛門を殺しちゃって」と源次郎をグイグイと煽るところ、見ていてスカッとするくらい😅 お峰もお国も「意気地が無い男の尻を叩く女」だけど、お峰はお金のため、お国は愛のためで、お国の方が思いは強く、そのぶん、邪魔者を殺すという悪事に対する罪の意識が薄いのね。平左衛門殺しをためらう源次郎に「今よ!さっさと殺しなさいっ」とけしかけるお国がもう “マクベス夫人” でした😆 2幕では最期まで源次郎一筋という思いを貫くお国が哀れで美しかったな。新悟にはこういう一途な悪女もっと演ってほしいです。
橋之助の源次郎は芝翫も勤めたことある役なのですね。大川の船遊びのとこで、平左衛門を殺す悪巧みをお国と画策するところはそこそこワルに見えたけど、やはり端正さが勝っていたな。でも、その小悪党になりきれないヘタレ優男っぷりが1幕ではむしろハマっていたかも。お国に叱咤されて平左衛門を殺したあとのブルッと怯える姿が情けなくも滑稽。2幕の、おちぶれた男の方が橋之助はニンで、傷ついた脚をひきずり、お国に捨てられそうだと思い込み疑心暗鬼になって恨みが殺意へ変わっていくところは悲しい性(サガ)を感じました。
源次郎とずっと一緒にいたいから、働けない彼に代わって酌婦として働くお国、その彼女に伴蔵が入れ込んでいるのを知って嫉妬に駆られる源次郎。2人とも相手への愛の強さは同じなのにそれが変にすれ違ってしまうのね😢 最後は、蛍に呼び寄せられるようにふらふらと歩くうちに(何かによって)刀で刺される源次郎、その彼を抱こうと近づき、突き出た刃先に被さる形になって死んでしまうお国。2人の最期は美しかったです。
応援している若手のひとり玉太郎くん、今回は、1幕ではたまたまその場に現れたことで源次郎に殺される平左衛門とこの女中お竹と、2幕ではその妹で酌婦お梅の2役。いつも思うのだけど、綺麗なお顔だから女方もいいんだけど、わりと身長がある玉太郎くんには立役をやってほしい🙏 つっころばし系の優男とか品の良い若さまとか、ニンだと思うんだけどな。芸としてはまだ弱いけど、お役をつけてあげないことにはどうしようもないのですよね。役者は本舞台に立ってなんぼのものですから。









