團菊祭五月大歌舞伎「毛抜」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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男女蔵/又五郎/松也/権十郎/梅枝/時蔵/松緑/男寅/鴈治郎/萬次郎/菊五郎/團十郎

 

 男女蔵の粂寺弾正は2004年の新春浅草歌舞伎以来20年ぶり2度目なのだそうです。ずいぶん空いてしまってるんですね。男女蔵はベテランの域に入っている役者さんだけど、最大の不運は、左團次パパが後ろ盾になってくれなかったことだと思う。インタビューで父親との関係を聞かれると好意的に答えているけど、要は「何も教えてもらえなかった」ということです。男寅にしても同じで、名優の御曹司たちなのに本当に気の毒😔

 私は基本、歌舞伎の家に生まれた歌舞伎役者の場合、父親が早くに亡くなって後ろ盾を失ったり、(男女蔵のように)ほったらかしにされたりした役者さんには同情を覚えずにいられません😢 だから男女蔵は応援しています。“左團次一年祭追善” なのにこういうこと言うのもなんですが、左團次は確かに個性的な人柄で上手い役者さんだったけど、その芸を息子や孫に伝えて後継を育てなかったことに関しては納得できない。

 

 男女蔵は、昨年の京都南座顔見世「助六」(團十郎襲名披露)での意休が大変良くて、これは回を重ねて、いつか歌舞伎座でも見せてもらいたいと思ったのですが、今回の弾正もとても立派でした🎊 役者としては堂々たる押し出しで口跡も良く、見得もきちんと決まる。弾正としては大らかで機知に富んだ感じ、強さと可笑し味を持ち合わせている。愛嬌や柔らかさがイマイチ足りなく感じたけど、左團次とはまたひと味違う、男女蔵の弾正になっていました。教えてもらえなかったのだから、左團次に似せる必要はないよね〜(←しつこく言う🙇‍♀️)。

 

 序盤で、屋敷の当主を待っている間に煙草やお茶でもてなされるところ。まず秀太郎(梅枝)を、続く巻絹(時蔵)を、一目見て目がキラっと輝き口元をニヤッとさせ色目を使う好色さ😅が好かった。2人にフラられ、客席に向かって「面目ない」と謝るところは、もう少し愛嬌を見せてもいいかなとは思ったけど。

 続く、毛抜きと小柄は踊るのにキセルは踊らない……から推理するところは型もよく丁寧に見せていて、そのあと万兵衛(松緑)の嘘と企みを見抜くところは爽快、豪快、小気味好い👍 そういえば、万兵衛の登場で弾正は舞台中央から脇に下がるんだけど、その位置が、成田屋は下手奥だけど、男女蔵は上手奥だったな。そして、後ろ向きじゃなく正面を向いてコトの成り行きを聞いていた。閻魔大王宛の手紙を書くのも、成田屋は下手奥で密かに筆と紙を持って来させて書いていたけど(私の記憶違いかな?)、男女蔵は中央に出てきて万兵衛と話す流れの中で書いていました。宗家とは違うやり方ってことなのだろうか。

 万兵衛を成敗した後、錦の前(男寅)の奇病の謎を解き、玄蕃(又五郎)の悪事を暴くまでもトントンと気持ちよく進む。最後、幕外になって花道の引っ込みで「ご一同様のおかげで、身に余る大役もどうやら勤まりまして……」と言うと「大当たり❗️」の大向こうが掛かり、何か無性に嬉しくなりました👏

 

 でもって、團菊祭ということもあって共演者も豪華。万兵衛の松緑が滑稽味のある上手い芝居で、中盤で芝居をキュッと締めていた。時蔵梅枝は親子で弾正を袖にするお役で、スンと澄ました感じが可笑しくも素敵。又五郎玄蕃権十郎民部の硬軟の対比も良かった。錦の前の男寅は自然な柔らかさと可憐さがあり、以前にこのお役を勤めたときから思うと随分よくなっていました。実際、男寅は役者としてはまだ緩い感じではあるけど、とにかく舞台に立たないことには力も付かないわけだから、もっと色々なお役を演らせてあげてほしいですね~。

 小野春道の菊五郎さんは終盤のみの登場。歩くのが少しおぼつかない様子で、後見さんに支えられていました。でも声には張りと伸びがあり、とてもお元気そうで何よりです☺️ なんと言っても菊五郎さんが出ることで芝居の格があがりますしね。そして幕外での後見が團十郎で、ちょっとジ~ンときてしまった。

 

 全体的に豪快で華やかな感じの一幕でした🎉 男女蔵はとても緊張していただろうし、かなり一杯一杯の演技だったと思う、でも真摯に勤めているのが伝わってきました。まぁ確かに、メリハリがないというか、どこかでフッと空気を緩める場があってもよかったかもとは思う。でも、私自身が気を張り詰めて観ていたのでそれを感じる余裕がなかったのかも。男女蔵にはこれからも真ん中はもちろん、重みのある敵役や要になる脇役といったお役をどんどん勤めていってほしいです🙏

 

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