團菊祭五月大歌舞伎「伽羅先代萩」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

菊之助/歌六/雀右衛門/米吉/芝のぶ/團十郎/右團次

 

 最初に言ってしまう。“床下” の場の最後、幕外で二木弾正が面明かりに照らされて花道にひとり立ち、これからゆっくり去っていくという、真っ暗な場内が張り詰めた空気に包まれているその時に、1階上手でスマホの能天気なアラーム音(結構長く鳴ってたよねっ😠)を鳴らした人に、その日のうちにバチが当たってますように‼️🙏

 

 気を取り直して……なんですが、なんか本当に通し上演っていうのがなくなってきたよね~という残念な実感。今回も “御殿” と “床下” のみ。序幕 “花水橋” はまだしも、“竹の間” と “対決” と“刃傷” も出してほしいよ。通しでのお話として十分に面白いんだから。特に今回、このあとの「四千両小判梅葉」が個人の感想として😔だっただけに、夜の部を全部使っての「伽羅先代萩」を観たかったです。

 “花水橋” から “刃傷” までの通し上演は2015年@歌舞伎座が最後。それ以前は2014年、2009年、2008年、2006年と、割と頻繁にやってたんですね。今やそういう、1つの作品の長丁場にわたる舞台は観客が飽きる、集客できないということなんだろうか。でも、そもそも今回私が観た夜の部だって、平日とは言え初日から1週間も経ってないのに、1階席は空席がかなり目立ってましたけど(2階、3階は言わずもがな💦)。

 

 さて、菊之助の政岡、7年ぶり3度目だそうです。ナルホド~(←何が😅)。凛として美しく貫禄もあって、その佇まいから芯の強さが感じられました。そして、一つ一つのセリフと動きをとても丁寧に演じていたという印象🎉 特に飯焚き、段取りが多いけど、美しい所作で細かいところまできちっと見せていたと思う。でも、お米を炊く水を千松(丑之助)に毒味させるところは割とあっさりだったな。何かもう少しリアクションがほしい、母親の複雑な心情(不安や安堵など)が感じれらなかった。この後も、心情表現が控えめに感じられた箇所がいくつかありました。菊之助らしいと言うか、政岡の役柄としてそれでいいのかもですが。

 

 栄御前(雀右衛門)が訪ねてきたと聞いて、何かあるなと覚悟を決め、キリッとした表情で花道の方を睨む菊之助が良い。そのあと八汐(歌六)が登場するんだけど、“竹の間” がないので政岡と八汐、そしてここでいきなり現れる沖の井(米吉)松島(芝のぶ)も含め、それぞれの立場、どういう役どころなのかがわかりづらいですよね。

 そして、いよいよ見せ場、菊之助は、千松がお菓子を食べて苦しみ出しても驚かないというか、ビクリともしなかった。全く表情を変えずに前を見ている他の役者さんの時も割とそうなんだけど、お菓子に毒が入っていた!と明らかに分かるのだから、ほんの数ミリでも何か動きがあるといいのでは?といつも思うのですよね🤔

 で、八汐が千松を刺したところでハッとひるみ身体を揺らせる菊之助。でもその後、我が子がなぶられている間も正面をキッと睨んだまま全く動揺を見せない。千松が呻き声を上げるところでは思わず顔を歪めて目線を逸らすけど、再び無表情に戻って正面を見据える。ここって、動揺を見せず平静を装わないといけないのだけど、観客には母親としての気持ちが伝わるようにしたい、その見せ方の塩梅は難しいですよね。菊之助は、観客にも心の揺れを見せるのを最小限に抑えていたような感じ。

 栄御前の姿が見えなくなったところで一気に力が抜け、ガクッと倒れかけるところから、ひとりの母になりました。亡骸に駆け寄り感情をほとばしらせるところでも品を失ってないけど、我が子に向かって「よう死んでくれた」と、本心とは真逆の言葉で褒め悼むところは泣けます。

 

 歌六の八汐は恐さと強さと迫力があり大変よかったです。あとちょっとの憎々しさと同時に女っぽさも見えるといいかなと思ったり。そして雀右衛門の栄御前は、残念ながらあまり悪モンには見えなかった。悪事を企んでいる秘密めいた雰囲気も感じられなくて、まあ、ニンじゃないということで……。

 

 そして “床下” です。右團次の男之助は、派手な拵えにも隈取にも負けていない華やかな豪傑。パキパキと歯切れの良いセリフとも相まって、荒事のエッセンスを見せてくれました。團十郎の弾正、すっぽんからドロドロと姿を現した途端に放たれる、妖気をまとった色気と凄みのある怪しさ、品格すら感じさせる国盗としてのオーラ、舞台と客席の空気を支配する圧倒的な存在感です。セリフは一言もないのに、その鋭い目つきと不敵に歪めた口元が多くを語っていた。滑るような引っ込みも魅せました🎊

 

 ところで、松島を勤めた芝のぶ、とても立派でした。このあいだ読売演劇大賞で選考委員特別賞を受賞したのを受けての大抜擢なのかな。なのに、チラシに名前が載らないという、この非情😔 役者さんの序列の関係で、お弟子さんとか、研修生から役者さんになった人とかは、たとえ大きなお役でも載せないのでしょうか(こういう内部時事情に疎い🙇‍♀️)。配役決定が遅くてチラシ作成に間に合わなかったのではないはず。だって、その気になればいつだって追加できる「歌舞伎美人」公式サイトには未だ名前が載ってないのだから。これも「歌舞伎の伝統を守る」習わしのひとつなのか?

 

 このあと松緑主演の「四千両小判梅葉」ですが、團菊祭でしか実現しないだろうから、そろそろ、松緑、菊之助、團十郎の3人が一緒に出る芝居を観たいですね。

 

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