K-BALLET TOKYO「ジゼル」@オーチャードホール | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原振付 マリウス・プティパ(ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー版による)

演出/振付 熊川哲也

音楽 アドルフ・アダン

飯島望未/山本雅也/杉野慧/成田紗弥

 

 完全にヒラリオンの杉野慧さん目当です😊 特に1幕は100%ヒラリオンに肩入れして見てしまった。幕が上がってすぐ、まだ誰もいない舞台に最初に登場するのがヒラリオンなので、上階からの観劇だったため、最初からオペラグラスを登場する方向に向けてスタンバイです。以後、杉野ヒラリオンが登場するたびにオペラグラスでロックオンなので😅 その間は他のダンサーたちをほとんど見ることができなかった💦

 

 なのでまず、杉野ヒラリオンについての感想です。頬からアゴにかけて濃いヒゲをはやしているので表情の細かい変化はあまりよく分からないけど、時々眉根を寄せたりするし、大股でどっしりした歩き方だし、全体的には精悍で頼もしさある森番に見える。だけど杉野さんの動きには隠しきれないエレガンスの香りが……。荒っぽい骨太な男ではなく、ただただ真っ直ぐにジゼルを愛する素朴な男

 ジゼルとアルブレヒトが踊っているところに現れ、ジゼルに「あんな、どこの誰かもわからない男に夢中になっちゃダメだ。僕こそ君のことをこんなにも好きなのに」と訴えるマイム、段取り通りに動いているのではない、セリフが聞こえてきそうな説得力ある演技です。1人になり、アルブレヒトを怪しんで「あいつ、こんな仕草してたな」って彼の真似をする(腰から剣の柄を取ろうとする真似とかね)ときの所作が優雅で「あ、それ、もうあなたがアルブレヒトじゃん!」って思いましたね😆

 ジゼル狂乱の場での杉野ヒラリオン、素晴らしい演技でした🎊 ジゼルが衝撃を受けて倒れ込むと、彼自身もショックを受け、最初は彼女を呆然と見守るしかできず、すぐに、うろたえるベルタの肩を抱いて支えてあげたりしつつ、錯乱し心を失っていくジゼルをなんとか救おうと、身体を傾けて必死で両腕を差し出し、抱き止めようと駆け寄ろうとする(この間アルブレヒトはどうしてるかチラと見ると、左手を太もも上部の横に当てて立っているだけで、ちょっと信じられない立ち姿😑)。ジゼルの命が尽きてしまったと知り、悲嘆と絶望で頭を抱え膝から崩れ落ちる……そこまでの迫真の表現、さすがでした。アルブレヒトが剣を手にして向かってくると「さあ、殺してくれ」と胸を差し出すのは他ヴァージョンでもあるけど、短剣で自ら喉を突こうとするのは初めて見ましたよ。でもその勇気は絞り出せず、(アルブレヒトは従者に促されて逃走し)ヒラリオンが長剣を掴んで天を仰ぐところで幕が降りるの、すごく感動的な演出だった😭 1幕を見る限りヒラリオンがジゼルを偽りなく心の底から愛しているのが痛いほど伝わってくる、杉野さん渾身の演技でした。

 ヒラリオンのダンスシーンは2幕にしかないのが本当に残念。杉野さんは跳躍や回転が力強いというわけではないけど、すでに踊り疲れているという設定での登場だし、やがて疲れ果てて踊りが乱れていくので、無理にパワフルに踊る必要なないですよね。それにしてもこのシーンはヒラリオンにとても残酷です。ジゼルを忘れられず懺悔の気持ちも持ってお墓にお花を供えるために来ただけなのに😢

 

 飯島望未さんのジゼル可憐で儚げな雰囲気で、恋する男に嘘をつかれていたという突然の悲劇を受け止められずに心を崩していくのも納得の、薄幸の乙女でした。最初の登場、家から出てきてホップする時の足取りが軽やかで、心配事などない日々を楽しんでいる様子が現れている。その後も、ステップがリズムに乗り腕の動きに表情があってとても良かった。公爵たちの前で踊る時の恥じらい気味な感じもいいです。ウィリになってからは透明感あるふわっとしたダンスを見せ、身体が華奢なせいかアルブレヒトを必死で守る姿がいじらしく、そのときは半分人間が残っているような体温も感じられました。

 

 アルブレヒトは山本雅也さん。私はKバレエ観劇歴が浅いのでよく分からないのですが、おそらく山本さんはKバレエの男性ではトップレベル? テクニックも表現力も抜群なのだと思いますが、先に書いた通り、ヒラリオンに完全に共感して見ていたので、あまり多くは語れない。1幕でのジゼルとのダンスは普通に良くて、2幕ではジゼルを死なせてしまったことへの深い悔恨の思いが強く見え、ダンスは伸びやかで美しく、ジャンプや回転など技巧的な見せ場も良かったです(あっさりな感想で🙇‍♀️)。

 

 ひとつ気になったのは、ジゼルのお墓が墓地の中にあること。周りは柵に囲まれ、石の門まである。これは変じゃない? ウィリはキリスト教とは異なる、異教の世界の(伝承上の)存在だと解釈しているんだけど、そのウィリが、キリスト教のシンボルである十字架がたくさん立っている墓地の中に現れるかなあ。さらに言えば、ヒラリオンは森の端にある湖に(あるいは崖から)落ちる/落とされるのに、あの墓地の近くにそういうのがあるようには見えなかった。百歩譲って、あれが廃墟と化した墓地だとしても、ウィリの餌食になったヒラリオンはどこでどうやって命を落とすの?と思っていたら、ウィリに下手(しもて)へ引っ張っていかれて退場😔 あまりドラマティックな最期じゃないですよね。

 

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