ロンドン観劇遠征③ 演劇「ハムネット」@Garrick Theatre | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

少し日にちが空いてしまったけど、ロンドン遠征中、バレエ以外に演劇を2つ観たので、簡単に感想を書いておきます。まず「ハムネット」から。

 

原作 マギー・オファレル

上演台本/脚色 ロリータ・チャクラバルティ

演出 エリカ・ワイマン

 

 「ハムレット」ではなく、シェイクスピアの11歳で亡くなった息子ハムネットを題材にしたフィクションです。息子の死、シェイクスピアとその妻の葛藤、戯曲「ハムレット」との関係などが描かれている。主役はシェイクスピアの妻アグネスです。妻の名はアンとして知られているけど、彼女の父の遺書にアグネスと記されていることから、実はアグネスという名ではないか?と言う研究者もいるらしく、本作ではアグネスにしてある。

 

 まず史実→ウィリアム・シェイクスピアとその妻アンにはスザンナ、双子のハムネット(男)とジュディス(女)、という3人の子どもがいたが、ハムネットは1596年に11歳で亡くなる。死因は特定されていないが、当時流行っていた黒死病=ペストではないかとも言われている。その時すでにロンドンで劇作家になっていたウィリアムは、ハムネットの死の4年後、戯曲「ハムレット」を書き上げる

 

 芝居のネタバレ概要→羊飼い農夫の娘アグネスと、その家に家庭教師として雇われていたウィリアム(ウィル)•シェイクスピアは恋に落ち、アグネスが妊娠したので2人は結婚、長女スザンナが産まれる。アグネスは再び妊娠するが、ウィルはロンドンで仕事を探し落ち着いたら家族を呼び寄せることにして、ストラトフォードを発つ。やがてウィルは演技と作劇の才能により劇団で働き始める。アグネスは双子の男女ハムネットとジュディスを産む。アグネスには霊感があり、自分が授かる子どもは2人だという預言を聴いていたので、3人の子どもを持ったことで不安になる。ジュディスは生まれつき小柄で病弱体質だったので、アグネスはジュディスが丈夫になるまで夫のいるロンドンに移るのを遅らせる。ジュディスが突然に発熱、アグネスは娘がペストに感染したと確信するが、もはや助かる望みはない。ハムネットは(「死」に向かって)ジュディスの代わりに自分を連れて行ってと祈りながら彼女に寄り添い眠る。ジュディスの容態は回復するが、ハムネットは死んでしまう。傷心のウィルはロンドンで劇作に没頭。やがてアグネスは、夫が書いた芝居「ハムレット」を観て、夫がハムネット追悼としてそれを書いたことを悟る。芝居の最後に舞台のどこかから「僕を忘れないで」という声が聞こえる。終わり。

 

 本作はRSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)の制作。奇をてらったところのない堅実な作りで、じっくりと鑑賞できるものでした。戯曲「ハムレット」とシェイクスピアの息子ハムネットとの関連性についてはいろいろ言われているけど、私は、シェイクスピアが息子と重ねてあの戯曲を書いたというのはちょっと信じられない。だったらなぜハムレットをあんな苦悩のうちに死なせたのでしょうか。しかもハムレットは人をたくさん殺しているし😑

 それはともかく、この芝居はアグネスが、女性として妻として母として家族を愛し苦しみ、くじけずに生きようとした姿が描かれています。そのうえで、シェイクスピア夫妻の複雑な愛情を語っている。よく、シェイクスピアがロンドンに1人で行ったまま家族と住まなかったことが否定的に語られがちだけど、そこにもちゃん理由をつけています。アグネスを演じた役者さんが大変良い演技で共感と感動を呼びました。

 

 気になるところもいくつか。例えば、アグネスの2度の出産シーンでの肉体的な痛みや苦しみの演技がとってもリアルで、私には少しグロテスクでもあった。当時の出産は実際のところ命懸けであっただろうし、本作は原作者も脚本家も演出家も女性ということもあってか、そこを隠さずに伝えているのかもだけど、個人的にはちょっと引いた。また、3人の子どもたちの人物描写が表面的で、どういう性格の子たちなのか伝わってこなかったな。特に長女のスザンナの影、薄すぎる。シェイクスピアがグローブ座で経営者&俳優リチャード・バーベッジや道化役者ウィリアム・ケンプとやりとりするシーンが何度かあるんだけど、私の英語リスニング力の不足のため、面白さが分からなくて残念でした😓

 

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