パリ・オペラ座バレエ「マノン」2回目@東京文化会館 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ケネス・マクミラン

音楽 ジュール・マスネ

リュドミラ・パリエロ/マルク・モロー/フランチェスコ・ムーラ/シルヴィア・サン=マルタン/フロリモン・ロリュー/アルチュス・ラヴォー

 

 ドロテ&ユーゴに引き続き、リュドミラ&モローの「マノン」を観てきました。リュドミラのマノンはとても期待していたし、モローが踊るドラマティックバレエは個人的には未知数なので、その意味で楽しみでした。新しい味わいがあって良かったです🎊

 

 リュドミラのマノンはしっかりと現実を見つめる女性でした。本能に動かされるとか意志を持って進むとか計算高いとかではなく、自分の人生/運命をそのまま受け入れて生きて行く、そのことに迷わない女性というのだろうか。それは2幕の娼家でのシーンで思ったのだけど、まず1幕を思い起こすと、自分が修道院へ入ることを容認していて(貧しさから逃れられる唯一の方法とわかっている感じ)、その場の群衆や出来事には特に興味は示していないようだった。でも、目の前にデ・グリューが現れ、男に頼って生きるという、修道女とは違う人生があることに気づいたかのように、彼を見つめる表情がどんどん柔らかくなっていくんですね。寝室のPDDではエレガンスとパッションが合わさった見事なダンスを見せてくれました。そのあとG.M.が現れ、彼について行く決心をするとき、ベッドに近づいたけどそれを眺めたままシーツに触ることすらせず去っていったなあ。

 娼家でのマノンが新鮮だった。何かもうね、G.M.の情婦としてチヤホヤされながら過ごす生活、その地位や奢侈にすっかり満足しているような、そんな自信と余裕が感じられた。だからと言って楽しんでいる風でもなく、こんなもんなのかというような、とても冷めた態度だった。もうデ・グリューのことなど忘れているように見えたし、彼が現れてすがりつかれそうになると「うるさいわね、もう付き纏わないでよ😑」とでも言っているような、冷酷とすら思えるよそよそしい拒否ぶりだったよ😅 でも、まっすぐに見つめてくる彼の眼差しにほだされてしまう。あれは愛なのか、それとも、この人を守ってあげないとという妙な義務感なのだろうか。いろいろな局面で強さを見せ、感情を表すときは真っ直ぐなマノンだった。3幕では身体的というより、精神的なダメージが大きくて精魂尽き果てたという感じでした。

 リュドミラのダンスは決して派手ではないんだけど、その動きや形でキャラの心情のニュアンスを語るというのかな、大袈裟に動かなくてもマノンの気持ちがしっかりこちらに伝わってくるのでした。

 

 マルク・モローは今まで意識して観たことはなかったけど、昨年「パトリック・デュポンへのオマージュ」公演をパリに観に行ったとき「エチュード」で踊ったソロがとっても良かったのでちょっと気になっていたダンサーです。今までコンテ作品を踊ることが多かった彼ですが、最近は古典作品への出演も続いているらしい。とはいえ「マノン」は昨年踊ったばかりだそうで、デ・グリュー経験の浅さは役作りの上でネックかも。

 モローのデ・グリューはいかにも神学生といった感じの、ぱっと見は硬質な雰囲気。翳りはなく純真な青年だった。その生真面目な彼がマノンに惹きつけられ沼に落ちていくところが何とも退廃的で、(ある意味、禁欲的な)彼が感情や情愛を発散させるときはとても色っぽく感じます。ただ、そうでないときのモローのデ・グリューはちょっと曖昧なところがあったんだけど、あれは私の受け止め方が緩いのだろうか。

 不思議だったのは、娼館のパーティーにレスコーに連れられて現れたモローが、笑顔でレスコーと言葉を交わすなど結構楽しんでるふうに見えたことです。おいおいマノンのこと忘れたの? ここへは何しに来たの?って思ってしまったほど。マノンをG.M.に奪われたことへの悲壮感はあまり見えなかったんですよね🙄 そうかと思うと、マノンがG.M.や男たちと遊んでいるのを観て怒りの表情を見せたりもする。確かにあの無言シーンの振る舞い方はとても難しいと思うけど、その間(ま)を動きや表情で持たせるところがちょっと弱かったな。でもマノンと2人きりになったとき、彼女の足元から見上げて「なぜなの?」と問いかけるように真っ直ぐ見つめる姿には誠実さと真摯な愛情といじらしさが見え、マノンの心も動くよね。最後はマノンの亡骸を抱いたまま天を仰ぎ激しく泣き崩れる終わり方だった。

 モローのダンスはシャープでポーズした形が美しく、心情を表すソロは特に雄弁。アクロバティックなリフトではやや緊張している感じだったし、観ている方も緊張しました😅

 

 レスコーはフランチェスコ・ムーラ(プルミエ)で、昨日のアンドレア・サリ同様、彼もまた小柄なダンサーなのね。それでもアクが強いので、サリよりはレスコーっぽかったけど(少しアリュに似ている雰囲気)やはり少し物足りなかったな。

 今回観た2つの「マノン」、どちらも楽しみましたが(不満点もあるけど良かったと思えるのは、マクミラン振付の力ですね)、ユーゴのデ・グリューを観られたことがいちばんの収穫。弱さや頼りなさや不甲斐なさを見せる大型ワンコ風ユーゴは新鮮でした。ユーゴは今のところパリ・オペラ座で個人的イチオシのダンサーです~💖

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ バレエへ
にほんブログ村

バレエランキング
バレエランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村