パリ・オペラ座バレエ「マノン」@東京文化会館 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ケネス・マクミラン

音楽 ジュール・マスネ

ドロテ・ジルベール/ユーゴ・マルシャン/アンドレア・サリ/ロクサーヌ・ストヤノフ/レオ・ド・ビュスロル/アレクサンダー・マリアノフスキー

 

ちょっと疲れてしまっていて、以下、すごい雑な感想文になってます🙇‍♀️

 

 先のブログ記事に書いた通り、期せずして10日足らずの間に英国ロイヤルバレエとパリオペラ座の「マノン」をそれぞれ2組ずつ(パリオペはこのあとリュドミラとモローのも観た)観ることができました。両バレエ団の「マノン」をつい比較してしまいがちだけど、その点に関してはもう少し後で軽く書くことにします。

 ドロテとユーゴの「マノン」。昨年夏のガラ公演で出会いのPDDを観たとき、2人による全幕の(良い意味での)イメージが何となく膨らんだのですが、それ以上に驚かせてくれることを期待して観ました。すごく良かったよ〜😭

 

 ドロテのマノンは想像していたよりずっと “自分で人生を決めていく” 女性だった。周囲に流されがちな儚げなキャラ造形かなと思ってたんだけど、デ・グリューに惹かれるのも、ムッシュー G.M. のリッチな世界に吸い寄せられるのも、そのつど自分で選んだ道であり、運命に翻弄されるというより自滅型? そこには “この貧しさから逃れて幸せを掴みたい!” という意志、生きていくためのしたたかさが見えました。

 冒頭、宿屋の中庭に降り立ち雑多な群衆の波を眺めているときの、何かを探しているような好奇の目には、少女のような無垢なあどけなさと同時に、面白そうなことがあれば飛びついて行くというキラッとした輝きもあった。デ・グリューに興味を抱き始めるところでは、彼の、神学生という独特の雰囲気、自分への好意を真っ直ぐにぶつけてくる純粋さ、貴族の息子ならではの育ちの良さなどから、何か “珍しい生き物” を見ているようでもあったかな。

 その彼を捨て、G.M.の情婦になる決心をするドロテマノンはとても雄弁でしたね。どうするか決めなければいけないとなったとき、ドロテはデ・グリューと2人で過ごしたベッドのシーツを触り、そのあと、羽織っているG.M.にもらったローブを手でスーッとなでる。シーツのザラッゴワッとした感触と、ローブの滑らかな手触りを比べ、そのまままっすぐG.M.の方に歩いて行ったんですよね。レスコーに強いられていやいやG.M.について行くのではない、愛があっても貧しい生活は嫌!と、自分の意思で決めた行動なんですねー。

 2幕の娼家のパーティーではG.M.に対してあまり媚びは売ってなくて、男たちの間を泳ぐようにリフトされているときも悲壮感はなく、そういう生活を続けていけそうな強いマノンに見えました。それでも、すがり付いてくるデ・グリューに哀れみを覚える愛は残っているところがマノンの複雑なところなんですね😔 沼地でのPDDでは夢遊病のような動き見せ、デ・グリューの支え=愛にすら気づいていないような感じだったな。

 

 そして、デ・グリューのユーゴこんなに “大きさ”や“強さ” を消しているユーゴは想像できなかったです。世間知らずで純粋で、そのぶん恐れを知らない大胆さがあり、成長半ばの危うさがあった。宿屋の中庭でマノンを目にした時の一目惚れ演技には胸がキュッとなりました💓 彼女の初々しさや奔放な感じに惹かれたのだろうか。ドロテとユーゴは互いに自分には無いものを相手に見つけ自然に惹かれ合ったみたいだったな。その出会いのPDDで切々と愛を語るユーゴは実に幸福そうで、その延長上にある寝室での喜びの踊りは力がみなぎっていた。

 一方、娼家でのユーゴは終始眉根を寄せいていて、マノンの姿をじっとりと追いかける。この場でどう振舞っていいのかわからないウブな少年のようでした。男たちと遊ぶマノンを見てもオロオロするだけのユーゴが実に頼りなさげでねー。この場面はマノンと客たちは動きがあるけどデ・グリューは彼らとの接触がほとんどなく、歩き回りながら心情を見せる必要があるので場を持たせるのが結構大変だと思う。ユーゴはそこをとても上手く見せていました。思いはただマノンに帰ってきて欲しいということだけで、その気持ちを吐露するソロやマノンに懇願する姿は痛々しくもある。ようやくマノンを取り戻し、2人で出て行こうとするときに彼女のブレスレットを引きちぎるところで独占欲が露わになる……わがままな若造っぽくて可愛かったですね😆 沼地での最後、倒れたマノンを抱き寄せるももう命がないことに気づき、憮然として彼女を腕からずり落とし絶望と悲しみに暮れて天を仰ぐ、そんな幕切れでした。

 

 ドロテとユーゴのPDDは、長くパートナーを組んできたこともあり、とても安定していて息の合い方も絶妙。ユーゴが大柄なこともあってドロテをリフトしたり宙に飛ばしたり抱き寄せたりする動きには優しさと包容力が感じられます。寝室のPDDでの感情のほと走りは高揚感に溢れていて、沼地のPDDは観ている方も無力感に襲われるほどの素晴らしさでした。

 

 レスコーはアンドレア・サリ(スジェ)。小柄なので1幕最後でデ・グリューを力でねじ伏せるところが全く強く見えなくて、ユーゴの方がレスコーを押しのけてしまえるのではと思ってしまうほど。2幕での酔っ払って踊るソロや愛人(ロクサーヌ・ストヤノフ)とのPDDも、酔っている振付の通りに動いているだけで全く酔っていないし、かなり残念でした。

 G.M.はレオ・ド・ビュスロル(コリフェ)で若かったー。来日キャストの関係で若いという設定にしたのか、もともとパリオペ版はG.M.を若い男にしているのかわからないけど、放蕩(女遊び)を尽くしている金持ちボンボン貴族という風で、女性をモノとして見ているような傲慢な目が印象的、これはこれで悪くないなと思いました。

 総じてとても感動しました、そしてパリ・オペラ座らしい「マノン」だなあという印象も受けたのでした。

 

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