シネマ上映 英国ロイヤル・バレエ「ドン・キホーテ」(2023年11月収録) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 カルロス・アコスタ/マリウス・プティパ

音楽 レオン・ミンクス

マヤラ・マグリ/マシュー・ボール/カルヴィン・リチャードソン/レティシア・ディアス/ギャリー・エイヴィス/イザベラ・ガスパリーニ/アネット・ブヴォリ/ジェームズ・ヘイ

 この回は元々セザール・コラレスとマヤラ・マグリのペアだったのが、セザールが怪我で降板、代役でマシューが踊ることになったんですよね。日程的にマシューがベストだったのか(マシューは他日にヤスミンとも踊ってる)、シネマ上映回だからいっそリアルカップルでいこうという芸監オヘア氏の粋な采配なのかは分かりませんが、思いがけないご馳走になりました。セザールは本当だったらバジルのロールデビューだったので、それを観たかったなというのはありますが。

 

 このアコスタ版の初演は2013年。ケビン氏の話によると「ドン・キホーテ」はロイヤルのレパートリーになかったので(それまではバリシニコフ版を、そのあとはヌレエフ版を上演していた)アコスタに制作を依頼したのだそうです。

 最初に言っておこうと思うけど(頭が硬いと言われそうですが)個人的にはアコスタ版は好きじゃないんですよね😔 ダンサーたちがいろんなシーンで「Yeah!」「Heeey!」「Ohooo!」「Wow!」など声を出すとか、ロマの野営地で本物のミュージシャンが舞台に上がりロマの仲間としてギターを弾くとか、これ受け入れられない。「古典バレエに現代の視点を加える……ダンサーではなく人間を見せる」と説明してたけど、そのためにダンサーが言葉を発し実際の演奏家がその役で舞台に上がるの? それ、もう演劇じゃん。臨場感を出しリアルなものにしたいなら(個人的には、古典バレエに余計なリアリズムは求めませんが)、そういうのを振付で、ダンスで、マイムで表現するのがバレエじゃないの?🙄 もちろんコンテンポラリー作品は別です。この作品もコンテとして脚色したものならこういう演出は当然アリだけど、でもそうじゃなく、本作は古典作品の改訂振付なわけで、あくまでも古典ベース。それでこれやったらバレエって何なの?ってなります。実際、ダンサーから頻繁に発せられる掛け声や囃し声はとっても耳障りでした😑

 

 でも、ダンサーたちのパフォーマンスには大満足。ずーっと口角上げてニヤニヤしながら観てたと思う😊 マヤラさすがラテン系の資質でまさにキトリそのもの。明るくてポジティヴでちょっと気が強そうで実はロマンティスト。ダンスもいい。体幹が強くパワフルだけどすごく安定してるし、そもそも踊りが喜びに溢れてる。マシューもノリノリの絶好調だったな。粋がって見せるところがカッコいい……というか自分でカッコいいの分かってるとこが可愛い💓 回転系の軸のブレなさ素晴らしいしジャンプも以前より伸びやかで美しくなったと思う(偉そうにすみません)。

 

 息ぴったりの2人の丁々発止のやりとり、1幕はお茶目でスウィート。お互いに相手が自分のこと好きだって分かっていての、焦らしたり嫉妬したりのやり取りが微笑ましい。他の女の子とくっついてるところをキトリに攻められてバジルがアタフタしたり、そのバジルがソロを踊る前にキトリに投げキスしたりと、間髪容れない返しとか間を置いたりとかのタイミングが絶妙で、さすがご両人👏 片手リフトは2回ともキープが長く、2回目でマシューが片手を腰に当てるという余裕を見せるとマヤラが「ほんとにもう」って感じで呆れ顔で微笑んだり、リアルカップルならではのキラキラでした✨

 遊び半分だった2人がロマの野営地ではロマンスを語ります。PDDは完全にふたりの世界で会話が聞こえるようだったな💖 甘~い雰囲気になり一線超えそうなバジルをキトリがたしなめるなど、ここでも気を持たせたりくっついたりのやり取りが楽しい。酒場ではマシューが傑作で、キトリのパパを何気に足蹴りしたり、狂言自殺では大袈裟に嘆き、仰向けに倒れるとなぜか右脚が上がっちゃう。

 結婚式では素直に愛を認め合った、ある意味、成長した2人になっていて、マヤラは少し色っぽさを纏った身体の使い方。そのマヤラキトリと目を合わせたマシューバジルが一瞬ニコッと悩殺的笑みを送り、もうおふざけは終わったよ俺について来い風の頼り甲斐のある男になっていた。マシューのヴァリエーションはキレのいい回転で魅せ、マヤラは伸びやかで、音に乗るというより音をコントロールしているようにも見えました。

 

 エスパーダのカルヴィン・リチャードソンが思いっきりイケイケに決めてきて気持ちよかった。お相手のメルセデスを踊ったレティシア・ディアスは少し翳りのある雰囲気がありながら華やかなダンスが印象的でした。キホーテの夢の場ではアムールのイザベラ・ガスパリーニの笑顔がキュートでダンスも良かったし、キトリの友人ソフィー・アルナット前田紗江さんも表情ある踊りでそれぞれの個性が感じられました。

 ギャリー・エイヴィスのキホーテは夢見る老人というキャラを全面に出していた感じ。プロローグでの、幻影の姫ドルシネアを見つめる目は焦点が合っておらず本当に幻を追いかけている眼差しで、素敵な演技でした。トマス・ホワイトヘッドのキトリパパが見せる小芝居、細かい演技がいちいち面白かった。カテコでアコスタが登場したとき、ガマーシュのジェイムズ・ヘイが手の甲をもう片方の手で叩くというお上品な拍手😅で迎えていて、最後まで役に徹しているの偉かったです。

 

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