Dialogue!「celos〜緑色の目の怪物」@新宿スターフィールド | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原作 ウィリアム・シェイクスピア

構成/演出 沢海陽子

松尾竜兵/齋藤慎平/近藤陽子/河村岳司/悠木つかさ/坂田周子/星和利/伊藤大貴/金子久美子

 

 公演を行ったDialogue! は吉田鋼太郎が主催する劇団AUNの有志ユニットです。今公演が第三弾。今後は分からないけど、今のところ「シェイクスピアのいろいろな作品からシーンを抽出し繋ぎ合わせて作品を作る」というのが基本コンセプトなのかな。今回は嫉妬をテーマにしていて、大筋は「オセロー」と「冬物語」を合体させたお話です。「セロス/celos」はスペイン語で「嫉妬」という意味だそうです。

 

 ネタバレあらすじ→時代は現代。ある企業の社長レオンティーズに腹心の部下イアーゴーが「あなたの奥さんハーマイオニはあなたの親友キャシオーと不倫してますよ」と嘘をつき、レオンティーズは途端に疑心暗鬼になる。ハーマイオニが落としたハンカチをイアーゴーの妻エミリアが拾い、イアーゴーはそれをもらって不倫の証拠にでっち上げる。イアーゴーはキャシオーに「レオンティーズが誤解しているらしいので身に危険が及ぶかも」と言ってキャシオーを遠方に去らせるが、キャシオーは無実のハーマイオニが心配で彼女をそばで見守りたい。一方、社員たちは近々ある慰労会の余興で寸劇をやることになっている。キャシオーは変装してその役者に入れてもらい「オセロー」の上演を提案する。レオンティーズはすでにハーマイオニを糾弾し追い出していた(なぜか死んでしまったらしい。いつ?どうやって? この辺ちょっと分からなかった😑)。慰労会での「オセロー」上演中、オセローが妻デズデモーナを殺すシーンを観てレオンティーズは取り乱す。そこで社員エミリアのハンカチにまつわる証言があり、イアーゴーの悪事がバレる。そこにレオンティーズとハーマイオニの息子(少年)マミリアスが飛び出してきてイアーゴーをナイフで刺し殺す。終わり。

 

 かなりしんどい悲劇で終わりました💦 イアーゴがこのような悪事を思いついたのは、レオンティーズが今の成功を手にしたのは自分が献身的に尽力したからなのに、自分は依然として彼の「都合のいい2番手」にすぎない(ここ「リチャード3世」のバッキンガムね)、レオンティーズが憎い、だから地獄の苦しみを味わせてやる! ということのようです。

 このお話の中に「夏の夜の夢」「ハムレット」「マクベス」「ヘンリー4世」「リチャード3世」「リア王」などさまざまなシェイクスピア劇から取ってきたセリフやシーンが散りばめられている。例えば、序盤でイアーゴーが「名誉ってなんだ?」と自問自答するんだけど、そこは「ヘンリー4世」のフォルスタッフ。妻ハーマイオニを追い出したレオンティーズが気が触れた様子は「ハムレット」のそれ。余興劇の観劇中にレオンティーズがハーマイオニの亡霊を見るところは「マクベス」です。悪事がバレたイアーゴーはマクベスのように「イアーゴーは眠りを殺した……」と絶望します。驚いたのはラスト、マミリアスがイアーゴーを刺し殺すところ。最初なぜ2人の息子をわざわざ配役するのかなと思ったんだけど、両親の仇を討つ役割を彼に担わせたんですね。面白いけど設定が現代だけにちょっと残酷ではあった😓 血で汚れたその手を水で洗い落とそうとするマミリアスはマクベス夫人でした。社員たちが余興劇で最初にやろうとしていたのは「夏の夜の夢」の「ピラマスとシスビー」で、ここで社員たちによる笑いをとる演技があります。それが、変装したキャシオーの提案で「オセロー」に変わる。その結果ここが「ハムレット」で劇中劇「ゴンザーゴ殺し」を見せ王の悪事を暴こうとするシーンみたいになるわけで、この繋げ方のアイディアは本当にお見事でした👏

 

 役者さんたちのセリフ術は申し分なく、クリアな発声、自然な感情の乗せ方、無駄のない動き、さすがです。だからなのか、お話も上手くできていたけど、シェイクスピアの言葉を楽しむ舞台でもあったな。異なる文脈(戯曲)で使われるセリフなのに、それをシームレスに繋げると全く違和感がなく、必要な箇所でちゃんと意味を持って喋られている。1つの芝居の中にコラージュされたセリフたちがしっくりと溶け込み、いちいちが胸に刺さってきます。それは構成・演出を担った沢海陽子さんによる、シェイクスピア作品からのカット&ペーストが巧みだということでもあるんだけど、よくその戯曲のそのセリフを思い出しましたねと脱帽でした。あえて欲を言えば、結局これって嫉妬が引き起こした悲劇そのまんまなんですよね。あと一歩突っ込んで独自の解釈を見せて欲しかったとも思う。

 そういえば冒頭、会社のパーティーみたいなシーンでハーマイオニとキャシオーがフラメンコを踊り、最後でもハーマイオニの亡霊が現れてフラメンコを踊るんですね。何故フラメンコなのか分からないんだけど、そもそもタイトルをスペイン語にしたってことは、スペインに何か意味があるんだろうか、はて🤔

 

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