映画「2人のローマ教皇」 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

監督 フェルナンド・メイレレス

出演 ジョナサン・プライス/アンソニー・ホプキンス

 

 秀作でした🎉🎊🎉  2005年教皇ベネディクト16世が誕生し、2013年その彼が自分の意思で辞任(教皇は終身制ゆえこれは異例のことで、719年ぶりらしい)、ベルゴリオ枢機卿が今の教皇フランシスコとなるまでの、実話に着想を得た物語。

 

 簡単粗筋教義の番人と呼ばれるほど保守的な教皇(アンソニー・ホプキンス)は、変化は妥協だと言って嫌う。進歩的でリベラルな考えのベルゴリオ(ジョナサン・プライス)は、今の教会は改革が必要だと言う。

 カトリック教会の堕落、バチカンの腐敗に不満を抱くベルゴリオは「枢機卿を辞職して一介の司祭に戻りたい」と教皇に申し出る。「ベルゴリオの辞職は教会に対する抗議であり、辞職を認めたら教会は非難される」ので教皇は申し出を突っぱねる。でも、教会内外の信頼を失って自信をなくしていた教皇は、自ら辞任して、ベルゴリオが教皇になり、教会を改革してほしいと願うようになる。

 保守派と改革派という正反対の思想をもった2人が心を割って対話を重ね、最後はベルゴリオが教皇の意思を汲む。2人の確執から和解までが、美しい映像と洗練された会話で綴られていきます。

 

 映画はどちらかというとベルゴリオに主軸を置いた描かれ方でした。彼の母国アルゼンチンでは1976年クーデターで軍事独裁政権が生まれた歴史があり、彼は当時の自分の行動を内省して、人々を守る力が及ばなかったと深い悔恨の念にかられています。

 一方、バチカンがマネーロンダリング問題やバチリークス・スキャンダルで揺れる中、教皇自身も、教会聖職者の性的虐待事件に際し自分がとった対応を省みて葛藤します。

 

 共に心に傷を持ちながら、考え方も流儀も違う2人が語り合い、やがて変わっていく、まさに会話のドラマ🌟  自分の信念は曲げないけど、相手を理解しようと努力する。本音をズバズバ言うけど、相手の言葉にも耳を傾ける。自分の非を認め、相手の罪を赦す。その過程で築かれていく信頼と友情と人間としての絆。2人の名優の、セリフやちょっとした表情で心情を語る演技に、グイグイ惹きつけられました👏

 いくつもの名言があったな。「真理は重要だが、愛がなければ耐え難いものになる」「教皇になることは殉教者になるも同然」「君は神ではない。神の中にいる人間にすぎない」「告解は罪人を救うが、被害者は報われない」「慈悲には壁を吹き飛ばす力がある」「祈りの途中でタバコを吸うのは許されないが、喫煙の途中で祈るのは良いことだ」えっ😳?

 

 映像も素晴らしかった〜✨ コンクラーヴェの実践シーンはとても興味深かったし、教皇の避暑地カステル・ガンドルフォの庭園で2人が話し合う景色がすごく美しい。そして何と言ってもシスティナ礼拝堂。ここで2人は心を開き、互いに告解をするんだけど、闇に覆われた礼拝堂に少しずつ光が当たり、最後、光の洪水に満たされたときの圧倒的な荘厳さ😲  ちなみに、実際の礼拝堂は撮影不可だったんで、セットやCGなどで工夫したそうです。

 また、カメラワークが時々ドキュメンタリータッチになって、人物がドアップになったりカメラが揺れたりし、実際のニュース映像が挟まれる時もあって面白かったです。

 

 ちょっとしたカットで2人の性格の違いを表す見せ方も良かった。ABBAの「ダンシング・クイーン」を口ずさみ、街のピザ屋に立ち寄り、サッカーとタンゴに興じるベルゴリオ😆  一方、教皇はABBAもビートルズも知らず、ピアノでクラシックを奏で、1人で食事をし、夜は大昔のTVアニメを見る。教皇が抱える孤独が切なかったな😥  毎晩クヌーデルしか食べなかった教皇が、ベルゴリオお勧めのピザを一気に頬張るところは胸が熱くなった💦

 

 エンドロールの演出が神👍  キャスト&スタッフの映像と交互に、2014年サッカーW杯決勝ドイツvsアルゼンチンの試合(実際のTV映像)を、それぞれの国出身である2人が並んで観戦するシーンを流すんです。互いの国の選手のファウルプレイをあーだこーだ言い合ったり、ゴールを外すと悔しがったり喜んだり、まるで子供😊  見終わった2人が抱き合うところは実際の2人の映像でした。エンドロールの最後、雷鳴→雨の音→雨が止んで鳥の鳴き声、という音響演出もニクいね⤴️

 

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