DULL-COLORED POP「マクベス」@KAAT神奈川芸術劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原作 ウィリアム・シェイクスピア

翻案・演出 谷賢一

東谷英人/大原研二/倉橋愛実/宮地洸成/百花亜希/淺場万矢

 

 マクベス夫婦を安倍首相夫婦になぞらえた演出😆  終盤を大幅に改変し、そこと繋がるオープニングも加筆してあった。現政権のストレートな批判というより、終盤、シリアスな時事ネタをおちょくって笑い飛ばすというトーンなんだけど、観終わってから、いやコレ私たちまずいよ、という思いがジワジワと湧いてきたー😨

 

 これから茶番が始まりますよ〜という感じのオープニング。応接室もしくはキャバレー(区別がつかなかった)のようなセット、会社員姿でスマホを手にしたマクベスとバンクォー、ポップな衣装で猥雑な魅力を振りまきマクベスに纏わり付く3人の女性(魔女)。マクベスは、魔女たちに内臓を引き摺り出される幻覚に襲われテーブルに倒れこみます。

 そこから暗転して本編の「マクベス」に入っていくんだけど、ここからは寓意で、現実はあくまでもあの部屋にいる2人ということなのかな?🤔

 

 本編は、ヴィジュアル的な工夫はあるけど、割とオーソドックスな演出でサクサクと進みます。ダンカン王を殺害したあとマクベス夫婦が催す晩餐会は「桜を見る会」でした😂  上演前に前方席の観客に「招待状」が配られ、晩餐会になると飲み物のグラスが手渡される。実は最前列に座った私も、それで「懐柔」された招待客の一人💦  マクベス夫人の音頭に合わせて乾杯しちゃったもんね😅  グラスの中身はほんのり甘い炭酸水でした。

 

 グレイのスーツを着たマクベスは、最初、全く面白味のない平凡な男で、王殺害を前にして怖気付きトイレにこもって逡巡するという、気の弱そうな造形。でも、王を殺して自ら王位に就き、邪魔者バンクォーを殺し、マクダフの妻子も惨殺した彼は次第に大胆に狂信的になっていくのね😨  その変貌が不気味。で、そのあたりまではだいたい原作通りだけど、王殺しの秘密を聞いてしまった医師を自分の手で殺したところから原作から離れていくんですね。殺っちゃえばこっちのもの、と図々しくなる💨

 

 そして終盤、原作ではマクベスはマクダフに殺されるんだけど、ここから大幅に改変。マクダフと対峙して追い詰められた安倍マクベスは、このままでは魔女が予言した通り勝ち目なしと悟って、突然「魔女の言ったことはもう信じな〜い!」と開き直っちゃう😳  えっ?えっ?とうろたえるマクダフを側近が射殺。安倍マクベスは「王は息子に、バンクォーも息子に殺されたことにしまっす」と事実を隠蔽・捏造「閣議決定」し💥  そのまま王になり続けるところで終わります。このスピーチシーンは既視感ありまくりで、後半は、安倍首相のセリフそっくりでした😹

 そして、あの名独白「明日も、また明日も……」のtomorrow speechを最後に持ってきて、この後もこの国は、嘘で固められた身勝手な政治で押切られていくんだ、何も終わっていないんだ、これは今の私たちのことだ!と気付かせる😱  魔女たちが歌う「fair is foul、foul is fair」は「綺麗なものは汚い、汚いものは綺麗」のほか「いいことは悪いこと、悪いことはいいこと」「間違いは正しくて、正しいは間違い」「光る闇、闇は光」と歌詞が加えられ、完全に現政権の風刺になっていました。

 

 そうそう、マクベス夫人も死にません。登場早々、王殺害の意思を固め「この私を男にして!」と言うんだけど、そのときも猫足のバスタブに入って艶めかしく四肢をくねらせているというファンキーさ。原作通り精神を病むけど回復して、国王夫人として安倍マクベスの横にピタリと寄り添っているのでした😑

 

 演出家の言うところの「衝撃のラスト」をやりたいがために「マクベス」の戯曲を使ったという感じだったな。そこに至るまでの原作を、プロット、セリフ共に丁寧に吟味してテキストレージしてある。鍵になるセリフをきちんと伝えるところは役者の力。個人的には、終盤の改変に関連させた仄めかしを本編にもう少し入れる形で、ひねりを加えた演出があってもいいかなと思ったけど。

 あと、役者6人&シンプルな舞台セットなので、最初は舞台が広すぎるように感じました。でも、安倍マクベスの周りに茫漠と広がるあの薄暗い空間は、彼の心の中にある空洞、虚無、深い闇と取ることもできるなーと、あとで思い返しました。

 

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