民法 第179条(混同)

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第179条(混同)
1 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。

重要度:4++

メモ書き:
(1):土地に設定された抵当権の抵当権者が土地の所有権を取得すると抵当権は消滅するのが原則(第1項本文)。抵当権のところを地上権、質権等の他の物権に置き換えても同じ。ただし、当該抵当権に後れる抵当権が設定されていたり、当該抵当権を目的とする転抵当権などがあると、抵当権は消滅しない(1項但し書き)。しかし、当該抵当権に先順位の抵当権が設定されているだけの場合は、当該抵当権は消滅する。なお520条(債権混同)も参照。
(2)2項は、例えば地上権を目的とする抵当権者が、地上権を取得したら、抵当権は消滅すると言うこと。3項は直接は出てないと思います。

(3)出題過去問番号:[20-10-ア, 20-10-イ, 20-10-ウ, 20-10-エ, 20-10-オ, 13-8-1, 13-8-2, 16-8-ウ, 16-8-オ, 61-16-1, 61-16-4, 61-16-5]など多数(一部です)。

(4)判例

1.所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至った場合、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備した後にその土地に抵当権が設定されていたときは、賃借権は消滅するか→しないものと解すべき(最判昭46・10・14民集25-7-933)[3-22-オ, 13-8-4, 61-16-2]。

(5)過去問

1. AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け,Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において,AがBからその土地を贈与されたときは.Aの抵当権は消滅しない。
→○(Aの抵当権に後れる物権があるから)[20-10-ア]。

2. AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に2番抵当権の設定を受けたが,Cがその土地の上に1番抵当権の設定を受けていた場合において,AがBからその土地を贈与されたときは,Aの抵当権は消滅しない。
→×(Aの抵当権に後れる物権はないから)[20-10-イ]。

3. AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け,Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において,AがBを単独で相続したときは,Aの抵当権は消滅しない。
→×(Aの抵当権に後れる物権はないが、Aは相続によりBの債務者の地位を引き継いだ。債権者と債務者が同一人に帰属したので債権混同により債権は消滅し、附従性により抵当権も消滅する)[20-10-ウ]。

4. AがB所有の土地に地上権の設定を受け,その地上権についてCが抵当権の設定を受けた場合において,AがBからその土地を贈与されたときは,Aの地上権は消滅しない。
→○(Aの地上権を目的として権利を有する者がいるので消滅しない)[20-10-エ]。

5. AがB所有の土地に地上権の設定を受け,その土地についてCが抵当権の設定を受けた場合において,AがBからその土地を贈与されたときは,Aの地上権は消滅しない。
→○(Aの抵当権に後れる物権があるから)[20-10-オ]。

6. 土地の所有権と賃借権が同一人に帰属するに至った場合であっても,その賃借権が対抗要件を備えており,かつ,その対抗要件を具備した後に,土地に抵当権が設定されてその旨の登記がされているときは,賃借権は混同により消滅しない。
→○(上記判例参照)[3-22-オ],
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