70歳代、HER2タイプ、広範囲二次性炎症性変化を伴う切除不能乳がん、肝転移、骨転移の方が受診されました。
PETの正面像です。
オレンジの矢印が原発巣で、乳腺だけでなく広範囲に皮膚に広がっています。
緑色の矢印がリンパ節転移で、腋窩から鎖骨上まで数珠繋ぎで連続しています。
赤い矢印が骨転移で、胸椎と左腸骨に集積があり、活動性転移と判断しました。
いわゆる老人性難聴はありましたが、身体はとてもお元気な方で、出来れば治りたいと根治を目指した治療を望まれました。
そこでバイオロジーを考えながら、延命ではなく根治を目指して治療を開始しました。
2ヶ月半後のPETでは、以上集積は全て消失していました。
3ヶ月後のCTで、原発巣は著明に縮小、皮膚の肥厚も改善していました。
左鎖骨上および鎖骨下リンパ節は消失、左腋窩リンパ節は縮小していました。
肝転移は画像上消失、骨転移は再骨化していました。
骨シンチグラフィでも異常集積は全て消失していました。
そこで、左乳房(広範囲皮膚浸潤部を含む)と鎖骨上・下領域を含めて、放射線照射を行いました。
その後、左乳房と左腋窩リンパ節の根治切除術を行いました。
最終病理診断結果では、原発巣は乳管内病変(薬物療法で消失しないと考えられている、転移しない病変)がわずかに見られるましたが、浸潤がんは乳腺内にも皮膚にも遺残はありませんでした。
腋窩リンパ節転移は、n=15 (level Ⅰ 0/10, level Ⅱ 0/5)と全て消失していました。
その後は、trastuzumab (トラスツズマブ、ハーセプチン)とpertuzumab (ペルツズマブ、パージェタ)と副作用が見られない経口薬でメンテナンス療法を継続して、元気に過ごされています。