トリプルネガティブ乳がんでした。
主治医からは、
「再発乳がんだから治らない。
あとは延命治療になる。
手術は出来ない。」
と言われた、との事でした。
患者さん側からのみお聞きしたお話なので、必ずしも正確ではないのかもしれません。
ただ、少なくともご本人様には、その様に記憶される様に捉えられる内容だったのかもしれません。
ご本人様からは、
「身体も元気だし、出来る事なら何とか治したい。
根治したいが、何か方法は無いか。」
とのお尋ねがありました。
乳癌診療ガイドラインでは、ざっくりと転移乳がんの原発巣切除は推奨されていないのかもしれません。
しかし、多くの医師が誤解しているかもしれませんが、ガイドラインは憲法の様な、誰もが犯す事の出来ない法律の様なものではありません。
また聖書の様な、必ずしも心の拠り所となる様な内容ばかりが書かれているとは限りません(すみません。私はキリスト教徒では無いので、必ずしも聖書がその様な存在であるのかは保証出来ません)。
むしろ、転移・再発乳がんは治らない事が前提とした記載は数々書かれていても、治りたい患者さん方はどうすれば良いのか、と言う具体的な方法の記載は見当たりません。
唯一、
「個別の症例において, 「治癒を目指す」ことを一概に否定するものではない。」
と言う記載があるのみです。
ー乳癌診療ガイドライン2022年版、FRQ14 解説よりー
この方は、
「出来れば根治を目指したい。」
と、根治を目指した治療を願われています。
最新の乳癌診療ガイドラインにも、
「個別の症例において, 「治癒を目指す」ことを一概に否定するものではない。」
と、明確に記載されています。
全ての切除不能・転移・再発乳がんの患者さんを救う事は、今の私には出来ません。
しかし、「切除不能・転移・再発乳がんの患者さんの全てを救えない」事は決してありません。
むしろ比較的多くの方を長期無病状態に到達させる事が出来るなら、そして患者さんがその様な治療を強く望まれるなら、
「目の前の方を根治に導くにはどうすれば良いか。」
と言う視点から、治療戦略を検討しても良いのではないか、と私は考えています。
確かにトリプルネガティブ乳がんの再発例の治療は困難な事が多いです。
ですが、100%の方が治らない訳ではありません。
この方はお歳の割にはとてもそう見えない程にお元気で、身体もしっかりされ、意志も強くお待ちでした。
ご提供いただいた情報や資料から、この方の状況を一から把握しなおし、治療戦略を検討させていただきました。