40歳代、ルミナルHER2タイプ、多発肝転移の患者さんが久しぶりに来院されました。
色々とお忙しい御年齢だとは思いますが、少し心配しておりました。
術後にリュープロレリン(2年間)とタモキシフェン継続中、術後6年目の再発でした。
1年3ヶ月前に肝転移の診断で私の所に紹介受診されました。
以下は初診時の腹部造影CT画像です。
肝臓の上の方の中央付近に、周辺が白く造影されていて、中心が丸く黒く抜けている所が3ヶ所あります。
多発肝転移です。
白い境界不明瞭な部分は浸潤しており、黒い所は血流が悪く、悪性化している事が伺えます。
私の中では、この様に境界不明瞭な肝転移は悪性度が高く、無病状態に到達させる事は、難しい例が多いと感じています。
あくまでも個人の見解です。
これらは、おそらく3ヶ所に生じた転移巣が増大し、癒合したものと推察されます。
その尾側のスライスです。
5つの黒い部分があり、5つの転移巣が癒合したものと推察します。
さらにその尾側のスライスです。
大きな塊(赤い矢印)とその周囲に境界不明瞭で薄黒い部分(緑の矢印)、また少し離れたところにも黒い部分(黄色い矢印)が出現し、肝転移が悪性化し、広範囲に広がりつつある状態と判断しました。
この様に黒い部分は血流に乏しく、どんなに良い薬剤を投与しても、到達し難い状態になっています。
また、何とか薬剤が到達しても、多剤耐性遺伝子(MDR1等)が高発現し、タキサン系抗がん剤等が効き難い状態になっている事が推察されます。
さらにルミナルタイプの乳がんでは、血流が豊富な転移(白い部分)のがん細胞も、多剤耐性遺伝子が高発現し、タキサン系抗がん剤が効き難い状態になっている事が推察されます。
よって、これら転移巣の状態を考慮せずに、ただ薬剤を順番に投与するだけでは、「治らない」と言う結果になる事は推察されます。
この方は、「出来れば治りたい。」と、根治を目指した治療を望まれました。