この方は「治りたい。」と言う強い意志をお持ちで、延命や緩和ではなく、根治を目指した治療を望まれました。
溶骨性骨転移は全て再骨化しました。
治療前の原発巣のCT画像です。
治療開始から4年と11ヶ月後のCT画像です。
ガイドラインでは、ステージⅣの原発巣切除は現時点では推奨されていません。
しかし私は、根治を目指す為に必要であれば、躊躇なく原発巣を根治切除します。
もちろん私が適切と考えるタイミングでですが。。
ガイドラインでは、過去の臨床試験の報告(論文等)を根拠に40数人の委員の投票で推奨を決めます。
ガイドラインを見ると、各委員が投票の為に参考にした論文が分かります。
その論文を見ると全て、「転移巣が残った状態で原発巣を切除」した臨床試験のみです。
その結果、ほとんどの臨床試験で、原発巣を切除しても、全生存期間は延長していません。
それでは、「転移巣が消失、あるいはそれに近い状態での原発巣切除」したらどうか、と言う臨床試験はこれまでに一度も行われた事がありません。
つまり、転移巣が全て消失した時点で原発巣を根治切除した時にどうなるのか。
臨床試験からは誰も判断出来ないにも関わらず、それも含めて「転移乳がんの原発巣切除は推奨しない」としています。
バイオロジーから考えれば、遠隔転移が消失した時点で原発巣を根治切除する事は理にかなっていると私は考えています。
治療前の鎖骨上リンパ節転移です。
治療開始から4年11ヶ月後のCT画像です。
消失していました。
治療前の腋窩リンパ節転移(赤い矢印)と、縦隔リンパ節転移(黄色い矢印)です。
治療4年11ヶ月後のCT画像です。
全て消失し、その状態を維持し続けています。
PET画像です。
異常集積はありません。
黒い所はすべて正常で見られる変化です。
ゴールデンウィークが過ぎれば、私と出会って丸5年になられます。
骨シンチグラフィで、徐々に低下してはいますが、まだ骨芽細胞への集積は残っています。
今現在は何の症状も無く、メンテナンス療法を続けながら元気に幸せに過ごされています。
が、私はこの方の主治医として、この方には元気に幸せに過ごしていただきながら、厳重に経過を診ていきます。
私のこの治療を面白くないとお考えの一部の方々が、私が今後この治療を出来ない様に動かれているらしい事を耳にしました。
その方々も自分の信念に基づいて、乳がん診療に向き合っておられるのだとは思いますが、出来る事なら患者さん方のためを第一にお考えいただいて、行動していただきたいと願っています。