骨転移に対する放射線治療 | the east sky

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いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。

40歳代でルミナルタイプ、局所の皮膚浸潤、腋窩・鎖骨上・縦隔リンパ節転移と多発骨転移を伴う進行乳がんの方が紹介受診されました。



この時点で、軽い痛みを認めた胸椎や腰椎の骨転移巣に直ぐに放射線治療を選択される場合があります。



治療目的が緩和であれば、放射線照射により高い確率で痛みの軽減が期待出来ます。



この辺はそれぞれの医師の考え方や知識、経験により差が出る所かと思います。


これが100%正解、と言う選択は無いかと思います。




ただ私は余程の事がない限り、この時点で放射線治療を行う事はありません。



それは何故かですが、、


放射線治療が効果を遺憾なく発揮するためには、水と酸素が必要です。


が、この方の胸椎と腰椎の転移巣はかなりしっかりとした大きさがあります。



バイオロジーの観点からは、これらの転移巣の中心部は膠質浸透圧が上昇しており、水分量が低下している事が推察されます。


また膠質浸透圧の上昇により、血流が途絶えて低酸素状態に陥っている事が推察されます。


つまりは、現時点での放射線による治療効果は低い事が推察されるからです。



確かに放射線照射により、早期の徐痛効果は期待出来るかと思います。


が、放射線照射をせずとも、有効な全身治療を早期に開始すれば、痛みは消失する可能性が高いと私は考えています。


また放射線治療は、原則同一部位に一度しか使えません。



もし今使わずに済めば、将来放射線治療が必要な際に、武器として残しておく事が出来ます。



骨折の危険性はありますが、放射線照射したら骨折しないと言うわけではありません。



私は最終的に、この方には放射線照射を優先せずに、早期に全身治療を開始する事としました。