遠隔リンパ節転移はある程度小さいうちは限局性、ある程度を超えると広範囲転移と思っています。 | the east sky

the east sky

いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。

40歳代、ルミナルタイプ、術後10年経過後に遠隔リンパ節転移再発された方が、紹介受診されました。



以下は再発時のPET画像です。




ご本人様の希望により、根治を目指した治療戦略を立てていきました。



元々初発時の手術で、郭清した腋窩リンパ節に16/17個の転移がありました。



今回の画像からは、右後頚部リンパ節が16個、鎖骨上リンパ節が2個、鎖骨下リンパ節が3個腫れていました。


いずれもリンパ節転移と判断しました。



初発時の術後補助療法として、FEC×4→ DXL×4 → S-1 (TS-1)を半年、LH-RHアゴニスト7年間、タモキシフェン10年間投与されておられました。



腋窩リンパ節転移が10個以上ある場合、手術のみの10年生存率は20数%です。



よってこの方の治療経過からは、その当時の主治医が如何にこの患者さんを治したかったか、再発させたくなかったか、のお気持ちがとてもよく伝わってまいりました。



この方は化学療法の後、およそ7年間はLH-RHアゴニストとタモキシフェンの併用で、その後の2年間をタモキシフェンのみで再発を抑えられていました。



術後に既に鎖骨上・下領域に放射線照射をされていました。



この時点で私が考えた事は、この方の転移巣はまだしっかりと、ER抑制に反応する可能性が高いこと、頚部への放射線照射は可能である事でした。



上記の事を踏まえて、およそ4ヶ月間の集中薬物治療を行いました。


その後にまだあてられていない右頚部領域に放射線照射を行いました。



その後は、この方にとってほとんど副作用の無いメンテナンス療法で維持しました。



以下は、再発時のCT画像です。後頚部に複数のリンパ節転移を認めました。



治療開始から4年8ヶ月後のCT画像です。


同部のリンパ節転移は消失したまま、その状態を維持していました。


その足側の再発時CT画像です。後頚部から鎖骨上に連なるリンパ節転移です。



治療開始から4年8ヶ月後、同部のリンパ節転移は消失したまま、その状態を維持しています。




そのさらに足側の後頚部リンパ節転移です。



こちらも消失した状態を維持しています。




鎖骨下リンパ節転移です。大きな塊でした。



ちょっと分かりづらいですが、腫脹したリンパ節は消失しています。



PETでは再発時、強く集積していました。



治療後4年8ヶ月後のPET画像では、集積は消失を維持していました。



以上より、この方の遠隔リンパ節転移は、比較的広範囲ではありましたが、私はある程度の範囲に限局した病態と考えて治療にあたりました。


そして無病状態に到達させることができ、またその状態を永らく維持する事が出来ております。


遠隔リンパ節転移は、私は比較的無病状態に到達させやすい転移であると考えています。

※しかし、すべての遠隔リンパ節転移が無病状態に到達するわけではありませんし、また様々な治療が入れば入るほど転移巣は難治化し、無病状態に到達する確率は下がっていくといく事は理解しておかなければならないかと思います。