さらに、乳がん骨転移の初期にもう一つ重要な事があります。
乳がん骨転移の初期は、骨芽細胞を増やし、骨転移ニッチを形成し、そこに眠った状態で乳がん細胞は潜んでいます。
骨を形成する主成分は、コラーゲンとリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトです。
骨芽細胞はコラーゲンを産生し分泌します。
このコラーゲンにハイドロキシアパタイトが沈着していき、骨が形成され強くなります。
骨転移の初期には、増えた骨芽細胞がコラーゲンを産生し、それにハイドロキシアパタイトが沈着する為に、増骨性変化が生じます。
ビスフォスフォネート製剤は、ハイドロキシアパタイトに親和性が高く、先の造骨性変化した所に、より多く吸着されます。
ビスフォスフォネート製剤は、骨転移治療薬として用いられていますが、あるビスフォスフォネート製剤をテクネチウムで標識して投与し、造骨性変化の強い部位を検出する検査が、骨シンチグラフィです。
よって骨シンチグラフィは、直接骨転移を見ている訳ではありません。
骨シンチグラフィは、造骨性変化を伴う骨転移巣を間接的に検出しています。
以下は骨シンチグラフィの例です。
ちょっと長くなりましたが、まとめますと、
② 初期の骨転移は骨シンチグラフィで検出し得る。
と言う事です。
つまり、①と併せると、休眠状態の骨転移は、PET検査では検出出来ないが、骨シンチグラフィで検出し得る、と言う事です。
もちろん総量が少なければ検出は困難ですが、臨床的に有用な情報は充分に得られます。
以上が、私が進行乳がんの根治(完治)を望まれる患者さん方、特に骨転移の根治(完治)を望まれる患者さん方に対して、PET画像のみで無く、骨シンチグラフィ画像も大切にする理由です。