骨転移の始まりの話をしました。
そのまま、骨転移が進行する過程について、話を続けても良いのですが、
「知識をつなげる事(リンクする事)の大切さ」
についても話しました。
折角「初期の骨転移」と言う、具体的な例が出てきたので、知識をリンクさせる方法を、少し具体的に示したいと思います。
あちこちの引き出しに収まっている知識を適切に取り出して、組み合わせる作業です。
骨転移の始まりは、骨芽細胞が形成する、造血幹細胞ニッチへの結合から始まる事をお話ししました。
その後、乳がんが骨芽細胞を増やしていき、新たな骨転移ニッチを増やしていきます。
そこに次々と原発巣から全身に飛んで行った乳がん細胞がくっ付いていく事で、骨転移が静かに静かに増えていきます。
この時、ほとんどの骨転移した乳がん細胞は、休眠状態 (tumor dormancy) にあります。
休眠状態では、活発な増殖等の活動性がほとんどありません。
全身の転移検索をPET (positron emission tomography)で行う先生が居られます。
これは、乳がんに限らずですが。。
PET検査は、簡単に説明すると、ブドウ糖に似た物質に放射性フッ素を付けたものを投与して、糖代謝の活発ながんを検出する検査です。
乳がんの骨転移初期は、ほとんどの乳がん細胞が休眠状態ですので、糖代謝が活発ではありません。
と言う事は、いくら全身の骨に骨転移が広がっていたとしても、休眠状態にある限り、PET検査では、骨転移を検出出来ない、と言う事が言えます。
つまり、乳がん診療を行う上で大切な事の一つは、
① PET検査では、早期の骨転移は検出出来ない。
です。
なので、PET検査(あるいはCTと組み合わせたPET-CT)だけから、
「骨転移はありません。」
は、必ずしも言えないと言う事になります。
よって、PET検査で異常集積が無いからと言って、必ずしも「転移なし」とは言えないのです。