HER2タイプ転移再発乳がん治療を考える上での基礎知識④ | the east sky

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いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。

HER2タイプ切除不能・転移・再発乳がんにファーストラインとして、ハーセプチン + パージェタ + タキサンを投与したとします。

この治療に耐性となった場合、残った乳がんは、以下のいずれかになっています。


すなわち、

①ハーセプチンに耐性を獲得した。

②パージェタに耐性を獲得した。

③タキサン系抗がん剤(ドセタキセル or パクリタキセル)に耐性を獲得した。

④ ①-③の複数に耐性を獲得した。

のいずれかになります。


決して必ずしも、3剤すべてに耐性になる、と言う意味ではありません。


①か②の場合、以下のいずれかの機序により耐性を獲得すると考えられています。




①ハーセプチンに対する耐性を獲得する機序


赤丸の部分が確認されているハーセプチンの耐性機序です。

「p95HER2」とは。

本来HER2タンパクは、細胞外ドメイン、膜貫通部分、細胞内ドメインに分かれています。

このうちハーセプチンは、細胞外ドメインに結合出来ます。

他の部分には結合出来ません。



p95HER2タンパクは、細胞外ドメインが欠損した(無い)タンパクです。


ところが、増殖シグナルの活性は、正常のHER2タンパクと同様に持っています。


つまり、ハーセプチンがくっ付けない(効かない)、増殖活性を普通に持ったHER2タンパクです。



もう一つはMUC4タンパク産生です。


このタンパクはHER2の細胞外ドメインを覆ってしまう事によって(HER2タンパクが言わば帽子をかぶってしまう事によって)、ハーセプチンがくっ付けない(結合出来ない)状態にしてしまいます。


もしかしたら、他にも新たな耐性機序が既に確認されているかも知れません。


いずれにしても、ハーセプチン + パージェタ + タキサンを先行投与してこのどちらかが生じると、ハーセプチン
は乳がん細胞に結合出来なくなってしまいます。

カドサイラはハーセプチンにエムタンシンと言う抗がん剤が結合した薬剤ですし、エンハーツはデルクステカンが結合した薬剤です。

よって、ハーセプチン + パージェタ + タキサンを先行投与して、完全寛解しなかった場合、その後のカドサイラ、エンハーツにも既に耐性を獲得している場合がある、と言う事です。