「乳がんは全身病である。」
と説明する先生がいます。
その理由はおそらく、乳がんが小さいうちから、全身にがん細胞が飛んで、転移するモノがあるから、と思われます。
乳がんの多くは乳管上皮から発生します。
細い乳管の中にいる間は転移をしません。
乳管の外に浸潤し始めると、リンパ管や血管に入るがん細胞があり、全身に回ります。
その中には遠隔転移するものがあります。
だから全身病だと。。
この考え方(理論)には盲点があります。
一つは全身に乳がん細胞が飛んでも、転移巣を作るとは限らないこと。
もう一つは血管の中に入って全身を回っている乳がん細胞の多くは、数日のうちに死んでしまうこと。
なので、例えばStage I乳がんの手術のみでの10年生存率がおよそ85%であるなら、それらの患者さんは手術のみで治ったと言うことになります。
つまりは85%の患者さんは全身病ではなく、局所の病気であったと言うことです。
「乳がんは全身病」ではなく、「早期乳がんの多くは局所の病気」が正しいと私は考えています。
ただしこのことは、どなたの乳がんがはたして局所の病気で、またどなたの乳がんが全身の病気かを見分けるのとは、次元の異なる話しであることは申し添えておきます。