今日も上機嫌でいきましょう!
バイリンガル手打ち十割そば職人の御尓沢明です。
10回にわたりお伝えしてきました、「そば通」シリーズ。
皆さんの「そば通」度が、少しでもレベルアップされたので
あれば、こんなに嬉しいことはありません!
さて、今日は、雑学的なことではなく、栄養学の面から蕎麦
についてお話ししてみたいと思います。
十割そば以外の「そば」は、特定の食材を謳ってない限り、
つなぎは小麦が使われています。その小麦に含まれている
グルテンが身体にどのような影響を与えているのか、また
私がなぜ十割蕎麦にこだわるのかを、今日のブログでご理
解いただけるかと思います。
それでは、早速行きましょう!
ここ数年、日本でもやっと認識されるようになってきたのが、
「グルテン・フリー」という言葉。皆さんも聞いたことがあ
るかもしれません。
日常の食生活において小麦粉を一切排除すること、また小麦
グルテンを含まない食品に「グルテン・フリー」という名称
を使っています。
アメリカでは、このグルテンフリーが市民権を得て久しく、
スーパーに行けば、グルテンを含まない食品にはことごとく
この「グルテン・フリー」マークが表示されています。
スーパーだけでなく、大都市のレストランであれば、グルテン
フリー対応のメニューを用意していることも一般化しています。
また、有名人ではこの人もグルテンフリー・ダイエットの普及
に多大な影響をもたらしましたね。
2019年度のグルテン・フリー食品の市場規模は2兆1千億円。
2027年までには4兆3千億円になるだろうと予測されていま
す。この市場規模は、ヴィーガン・ダイエット市場の倍に相当
します。
あのー、ジャガイモって元々グルテン含んでませんが、、、と私なんかは
ツッコミ入れてしまいますが、「えっ、そうなの?」という人がたーくさ
んいることに驚かされる国、それがアメリカです(笑)。
さて、先程グルテンは小麦粉に含まれている、とお伝えしま
したが、小麦粉のグルテンは他の穀物と違い、グリアジンと
グルテニンという2種類のタンパク質で構成されている唯一
の穀物です。そして、コシがあって粘りがある食感を出す為
には、この2つのタンパク質を持っていることが絶対条件と
なります。
人類の歴史の中で、小麦粉を常食し始めたのは1万年前から
と、比較的最近の出来事。
新しく、しかも加工して摂取する食材ですから小麦粉が体に
合わない人種は、牛乳ほどではありませんが、意外に多いで
す。(因みに、牛乳は人類の75%が不耐性です!)
下の図はグルテンを全く受け付けない人の割合を示した世界
地図です。
アジアは100〜310人に1人がグルテンを受け付けません。
100人に1人の割合というのは、統合失調症の発症率と同じ
です。決して低くありません。しかも、男性よりも女性の方
が、2.8倍の確率で不耐性であることが分かっています。
小麦粉のグルテンに対する身体の反応は、3種類ありまして、
①セリアック病
3つの中で最も深刻な症状が出る自己免疫疾患です。
セリアック病は小腸でグルテン(グリアジン)に反応し、
ゾヌリンというタンパク質が体内に異物が侵入して来た
と勘違いし、自身の小腸上皮細胞を攻撃してしまうので
す。その結果、小腸の壁に炎症が生じたり、穴があいた
りするため、小腸での栄養素の吸収が円滑にできなくな
ります。
セリアック病の症状は多岐に渡りまして、軽い症状では、
・慢性の胃腸障害、腹痛、便秘
・貧血、疲労、衰弱、関節痛
・口内炎、歯の退色や損失
・発育や新春機の兆候の遅れ
・乳幼児は、便秘、下痢、体重減少、感情の抑制困難
放置しておきますと、
・骨減少症、鉄欠乏性貧血、ビタミンK欠乏症
・膵(すい)不全、胆のう機能不全、肝疾患
・腸リンパ腫
・リウマチ、線維筋痛症
・疱疹状皮膚炎、全身性紅斑性狼症
・ダウン症
と、かなり深刻な疾患に繋がる可能性があります。
セリアック病は、年齢に関係なく発症する可能性がある
病気です。原因としては、何かしらの大きなストレスや
負荷が掛かった時(腹部の手術、ウイルス感染、過度の
ストレス、妊娠や出産)などです。
②リーキーガット症候群
現代は、これを発症している人が一番多いかと思います。
グルテンを含む何らかの原因で腸管壁に炎症が生じ、腸
のタイトジャンクションが破壊される、または緩むこと
で腸に穴が開き、そこからバクテリアや毒素、未消化の
食物が体内へと漏れ出してしまう病気です。
TFT Center of Japanより転用
図からもお分かりのように、これはグルテンが単一の原因
になっているのではなく、生活習慣、食品に含まれる添加
物、遺伝子組み換え食品、乳製品、経皮毒など複合的に積
み重なって発症します。
主な症状としては、
・関節炎
・免疫力低下、栄養素の消化不良によるエネルギー不足
・長期の便秘、体重増加、腸のトラブル
・呼吸器疾患(喘息)、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎)
・原因不明の頭痛、腹痛、発熱
・うつ症状、統合失調症などの精神疾患
・花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患
・更年期障害、子宮筋腫、カンジタ症
リーキーガット症候群の原因は、小麦粉の摂取はもち
ろんですが、いわゆる「〜不足」な生活習慣も関係し
ています。
・睡眠不足、運動不足、発酵食品・食物繊維不足
・暴飲、暴食、カフェイン・炭酸飲料の多飲
・鎮痛剤、抗生物質、ステロイド、ピルなどの長期服用
・添加物を含んだ食品の常食
小麦粉食品を控えることも大切ですが、生活習慣の見直
しにも取り組む必要があります。
③グルテン不耐性
私たちが摂取した食物は、小腸で消化吸収されます。
ところが、グルテン不耐性の人は小腸でグルテンを上手
く消化吸収できません。
グルテンアレルギーの場合には、グルテンを口に入れた
瞬間にアレルギー反応が起こります。しかし、グルテン
不耐性の場合、「グルテンを消化吸収する作業に入った
時」に症状が出現する、というタイムラグが生じます。
グルテン不耐性の多くは、グルテンに含まれる「グリア
ジン」というタンパク質に過剰に反応してしまいます。
その結果、腸にガスが溜まる、または腸に炎症が生じた
りすることが分かっています。
グルテン不耐性の症状は多岐に渡るため、他の疾患と間
違えられる場合が殆どです。主な症状には次のようなも
のがあります。
・下痢、便秘、ガスが溜まるなどの消化器系トラブル
・腕や背中にぶつぶつができる、アトピー性皮膚炎
・めまい、ふらつき、頭痛、片頭痛
・慢性的な疲労感、集中力の欠如、頭が重たい
・やる気の低下、気分の上下
・関節痛
・過食症
・ホルモンバランスの乱れ(月経前症候群など)
・手足の冷え、しびれ
・急激な体重の増減
蕎麦と同じように1万年前から常食している小麦が、
なぜ最近になってこのような症状を引き出す食品にな
ってしまったのでしょうか?
それは、小麦の大量生産化に伴う品種改良に原因があ
ります。本来の小麦は、背が高く台風や暴風雨に晒さ
れると直ぐに倒れてしまいます。また、パンの主原料
となるグルテンを含む胚乳部分も少なかったのです。
これを劇的に変えたのが1940〜60年にかけて米国で
実施された「緑の革命」です。これを指揮したのが、
ノーマン・ボーローグ博士で、彼は小麦を品種改良し
簡単に倒伏しない、グルテンが在来種よりも40倍も
多く含む小麦を作り出しました。
ノーマンボーローグ博士 画像参照Time Life Picturesより
この近代品種の開発と化学肥料の大量投入によって、収量
は格段に向上し、それまで気候条件による安定供給が難し
かった穀物の安定供給が実現しました。
ノーマン・ボーローグ博士は何十億人の命を救ったとして、
1970年にノーベル平和賞を受賞しています。
革命から60年経った現在では、上記の品種改良と化学肥料
の開発だけが「緑の革命」だったように取り上げられ、大
きな過ちだった、と批判されています。
しかし、灌漑設備の整備や、穀物価格が下がったことで貧
困層の人でも食料を購入できるようになり、森林伐採の抑
制にもつながったことから、一面的な部分だけを取り上げ
て批判するのはどうかと感じます。何十億人の命を救った
事実に変わりはありません。
さて、話をグルテンに戻しましょう。
このグルテン含有量が40倍に増えた小麦粉は、当然のこ
とながら、日本にも入ってきています。
そして、日本人は、パンなしでは生きられないのではない
か?というくらいパン好きな国民になってしまいました。
それに伴って子供の食物アレルギーも増加しています。
もちろん、パンだけが原因ではありませんが、相関関係
は間違いなくある、と考えられます。
グルテンに関する情報はネット上でも沢山見つかります。
ぜひ、一度ご自身で調べられることをおすすめします。
最後に、私が十割そばにこだわる理由をお伝えします。
一つは、やはり十割そばの方が断然美味しいということ。
十割そばはボソボソしている、というのは下手な人が打っ
たそばに限ってのことです。
十割そばでも喉越しの良いそばは打てます。単純に技術の
問題です。
二つ目が、今回お伝えした小麦グルテンの摂取を避けるた
めです。近代品種の小麦は、本来の小麦ではありません。
また、栽培時や収穫後に散布される農薬の量が尋常ではあ
りません。劇薬を摂取しているのと同じことです。
私は、食べ物は毎日食べられて、しかも健康になるもので
あること、が絶対条件だと思っています。近代品種の小麦
粉は、それに当てはまりません。
たまたま、私はそば職人になりましたので、十割そばです
が、和食や洋食の料理人になっていれば、同じ考えで作っ
ていたと思います。
体質は百人百様です。同じものを食べても反応する人と全
く平気な人がいます。
今回のブログでお伝えした内容も一つの見方です。あくま
でもご自身の身体と対話しながら試して頂ければと思いま
す。小麦が合っている人もいますので!
では、また!