第二十六話 「猪木対前田の結末」
猪木のプロレス的な挑発により、試合は再開した。
しかし、リング内に立ち入ることができない副審を含む関係者たちは、何やら話し合いを続けている。
どのように裁定を下せばいいか、を検討しているのだろうか。
総合のリングではあり得ない展開に、困惑の色を隠せない。
しかし、闘う両者は、そんなリング外の動きなど気にする素振りも見せずに、再び死闘を展開していた。
試合開始同様、前田を軸にまわりをゆっくりと歩き続ける猪木。
前田が左足を半歩差し出すと、前田の威圧感を感じ取った猪木は歩を止めた。
次の瞬間、前田の右ハイキックが唸りをあげた!
歩を止めた反動で避け切れない猪木は、両の手で必死にブロックするも、あまりの威力にそのまま尻もちをつくような形でダウン!
試合再開から大きなチャンスを掴んだ前田が、猛然と猪木の上に乗ってきた。
試合再開から数十秒、一気に湧き上がる東京ドーム。
と、ここで複数の関係者が、リング内になだれ込んできた。
そして試合を続けている猪木と前田の間に強引に割って入っていく。
一体何が起こっているのか!?
6万人超の観衆も、茫然自失と化す。
そして、次の瞬間、リング中央の主審レフェリーがマイクを手にして告げた。
「この試合は、両者失格であります!」
その瞬間、ドームの観衆が爆発した。
史上最大の罵声とはこのことか!
ようやく実現した「日本人最強決定戦」が、まさかこのような形で幕を下ろすとは!?
しかし、ここから物語りは風雲急を告げることになる。
舞台は世界へと…
第一部 「格闘技戦争勃発!」完
第二部 「歴史上最強格闘家決定戦への道」
第一話 「幕開け」 に続く…
第二十五話 「反則」
総合のリングでありながら、前田は猪木をエプロン越しに投げ捨てた!
プロレス会場では日常茶飯事の光景でも、総合では驚天動地のそのシーンに、逃げ遅れた数名のカメラマンが猪木の下敷きになってしまった。
慌てて前田に警告を発するレフェリー。
そしてすかさずイエローカードの提示を受ける前田。
しかし、そんなものは邪魔だとばかりに、レフェリーを払いのけ、リング下の猪木に目を向ける前田。
一気にざわめく東京ドーム。
二人の副審が猪木のもと駆け寄り、その状態を確認する。
さらに、この暴挙への判定がイエローカードだけでいいのかという審議のため、複数の関係者が次々にリングインしていく。
1ラウンド前半でありながら、試合は完全に停止してしまった。
やがて、ようやく猪木がフラフラと立ち上がった。
その姿を確認した観衆たちは、一気に猪木コールを叫び始める。
しかし、なおもリング内ではセコンドや主審、副審、関係者で埋めつくされている。
やがてエプロンに立った猪木は、混乱しているリングのなかに歩をすすめた。
何やら前田に対して何かを叫んでいるようだ。
その次の瞬間、突如猪木が前田めがけて襲いかかった。
右ストレート一閃!
今度は慌てて猪木を制止しようとするセコンドたち。
猪木はそれらを払いのけ、副審が手にしていたマイクを掴むなり、こう叫んだ。
「てめーら、リングから降りろ!
前田、これで喧嘩両成敗だ。やるぞー!!!」
この瞬間、二人の心に火がついた。
殺るか殺られるか、そんな総合のリングで、互いの反則によって二人は心を通わせたのだ。
猪木と前田、二人でしか生まれることのない究極的なプロレス空間がそこに生まれた。
第二十六話 「猪木対前田の結末」 に続く…
第二十四話 「闘魂魔性」
マウントポジションの前田が続けざまに左パンチをはなってきた!
これも間一髪かわす猪木。
その瞬間から猪木の目に潜んでいた、弟子に相対する余裕のかけらが瞬く間に消え去っていった。
と、次の瞬間、猪木は体を反転させ、下の体勢のまま腕ひしぎ十字固めに入った。
それはまさに瞬間芸で、前田は腕をロックすることもできずに、支点となる猪木の腹部を軸にマットにのめりこんでいく前田。
試合開始からわずか1分後にいきなりクライマックスを迎える東京ドーム。
前田ファンからは悲鳴のような叫びが聞こえてくる。
このままではレフェリーが試合を止めかねない。
雰囲気を察知した前田は強引にも体を反転させ、猪木の腕十時を逃れようとする。
しかし、猪木も猛者である。
前田の半回転に合わせるように自らも回転し、仰向けの状態でしっかりと腕十時を決めてしまった。
「折るぞ!」
猪木の肉声がドーム中にこだまする。
地鳴りのような歓声が響き渡る。
レフェリーが詰め寄る!
試合終了か!?
すると、ブリッジの体勢から、前田はさらに体を半回転させた。
その瞬間、猪木と前田の間に“隙間”が生じる。
そのまま、捕らえられた左腕を引き寄せ、ようやく右腕でロックすることに成功した。
オーーー!
大きなどよめきがドームを包み込む。
前田の返し方にも驚いたが、猪木の関節技術にも大きな感嘆の声が沸き上がる。
今まで“表”では見ることができなかった猪木の本性。
まさに、闘魂魔性である。
両の手を合わせることに成功した前田だが、しかし猪木はそれでも前田の左腕を離そうとはしない。
すると、前田は腕の力だけで猪木を持ち上げ始めた。
プロレスとは異なる総合の世界で、いくら何でもこれは無謀と思える返し方だ。
しかし、そんなことはお構いなしの前田。
そのまま渾身の力で猪木を持ち上げた!
それでも、技を解こうとはしない猪木。
歓声渦巻く東京ドーム。
そして次の瞬間、6万人超の観衆は信じられない光景を目の当たりにする!
若干の勢いをつけて、前田は抱えた猪木をリング下へ放り投げたのだ!
第二十五話 「反則」 に続く…
