thackeryのブログ -253ページ目

多逢聖因 ― ひとは、 邂逅によりどこまで成長できるか (4)

T氏は事の外将来性のある青年が好きで、 若い

ときから教育に興味を持っていた。 従い、 青年
とのやり取りも、 インタビューというより、 

先生と生徒の会話という感じであった。 今取り組

んでいる「環境ビジネステーマパーク」について語

り始めた。 これは、ビジネスパートナーS氏、

は中国吉林省延辺大学医学部卒中国医師、 更に

大阪大学医学部に留学し、 環境医学教室に於いて

遺伝子を研究と、環境問題のエキスパートで、 在学

中はノーベル賞に一番近いと噂されていた人物、 

その彼とT氏は生年月日も同じであると言う奇遇の

運命の下に出会い、 たまたま、 中国のトップが
S氏と同じ中国吉林省延辺大学出身者ということ

あり、 とんとん拍子に話がまとまり、中国江西省の

北西部で「環境ビジネステーマパーク」の第一号工場

を稼動させる運びとなったもの。 今年の10月には

中国中央放送局、中国政府首脳、 中国宇宙飛行士、

一流歌手等、 各分野の一流人が集い、 大々的な

オープニングセレモニーが開催され、 衛星放送で

世界各国にその模様が放映される予定になっている。

また、中国でもこの江西省が選ばれるには二つの理由

があった。 1つはこの江西省の書記(日本では

知事に相当)がS氏と同じ吉林省出身者で尚且つ中国

中央政府との間に太いパイプがあると言うこと。 

もう1つは、この江西省には毛沢東、 周恩来が文化

大革命のとき篭って計画を練ったと言う山荘があると

いうこと。 S氏の思い入れがほぼ100%満たされる

場所なのである。 一方、T氏の思惑とも符合している。

何故なら、 江西省には二つの世界遺産が存在している

のである。 1つは、 李白杜甫などの山水画で余り

にも有名な世界文化遺産「魯山国立公園」があると言う

こと。もう1つは最近2008年に世界自然遺産に登録

された「三清山」があるということ。

環境関係プロジェクトのスタート地としては、 この他

には考えられない最高のローケーションにあるのが、

この江西省なのである。 説明を聞いていた青年も余り

にも広大なプロジェクトであり、 歴史を感じさせる

バックグラウンドなので、 この歴史的な瞬間に触れ

られると言うだけで満足という風情であった。 今回は、

このあたりで取材としては十分ということで、 応接の

テーブルに置かれた中国茶を飲み干して、この別荘地の

清い空気を胸一杯に吸い込んで、 心惜しげに東京に帰

って行った。T氏自身も思いの丈を青年に語ることが

出来、 満足げであった。 T氏は青年を送り出した後、

日課の1つである「読書」に取り掛かった。現在読んで

いるのは、「宇宙生命、 そして『人間圏』」(東京

大学大学院教授著)で、つぎのメッセージに強く惹き

つけられた。 「宇宙とは、 地球とは、 生命とは、


我々とは何か。 我々はどこから来て、どこに行こうと

しているのだろうか。 二十一世紀の早いうちに100

億に達しようとしている人口に、 はたして地球は耐え

くれるのだろうか。 我々は宇宙で孤独な存在なの

だろうかーーーーー。 こうした問いに答えるためには

“自然という古文書”を読むことだ、 というのが私の

主張であり研究姿勢である。」この本は正に現在取り組

んでいる「環境ビジネステーマパーク」プロジェクトと

符合するのである。 T氏は常に今必要としている情報

が向こう側からやってくるのであった。 そして都度

的確にその情報と人脈を捉える。 氏は、 物事を捉える

とき、常に全体を見る。 この考え方は、 実は20歳

のとき完成していた。 そして、「実体」「価値」「実行」

の三位一体の弁証法で全てを捉えていくのである。

従い、 氏にとって問題は俗に言う問題でなく、 分かり

易く言えばこれからどう料理していこうかという楽しみ

なのである。 宇宙に関しては殊更敏感で以前に地球の

誕生につき、 時系列的に調べたことがあった。

その誕生とはこうだ。 また、 地球の将来見通しに
ついても調べていた。


多逢聖因 ― ひとは、 邂逅によりどこまで成長できるか (3)

それではこれから展開する場所の位置関係をはっきり

させることにする。 まず、 近鉄大阪線上本町駅

から44番目の駅・榊原温泉口駅から車で15分位の

位置にある。 勿論、 手前の駅、 東青山駅からも

アクセスできる。 また、 大阪方面からの車だと、

名阪国道を伊賀神戸で進行方向右に山際に入り、 

白山地域に向かうと約40分足らずでT氏の別荘に

到着という具合になる。 それでは『多逢聖因』の

物語を始めたい。 主人公T氏は本職は鍼灸師で、

そのほかに新聞記者、 作家、 ビジネス・コーディ


ネーターの顔を持つ。 従い、 人脈も行動範囲も広い。

白山町に別荘を設けたのは隠居ではなく、 様々な

人生目標を計画し、 実行していくためである。 


その朝も、 東京の雑誌記者から中国江西省に於ける

環境ビジネステーマパークに関する取材が入っていた。

湖が望める部屋の障子戸を開け、 清清しい朝の空気を


胸一杯に吸い込み、 来客に備えていた。 この環境

ビジネステーマパークは、中国政府環境保護省(含む

国家エネルギー指導グループ)、 T氏の友人が立ち

上げた環境ソリューション公司、 環境ソリューション

公司日本支社の三社が提携し、推進している世界を

リードするビッグプロジェクトで中国の今後の命運を

掛けたビジネスと言える。 中国の工場が毎日排出して

いるCO2を如何に抑え、 環境の清浄化に寄与していく

かを研究し、 実際に実践していく内容で、 中国

理工学の分野で最高位にある精華大学からも優秀な技術

が派遣され、 研究、 開発に取り組んでいる。 

東京の雑誌記者からインタビューを受けることになって

いるT氏は健康環境のノウハウとそれに基づくオンリー

ワン商品を世に出している大企業での勤務経験があり、

且つ該社のトップ並びに取締役に人脈を持つと言う

キャリアが買われ、 日本支社の支社長を任されること

となった。 その関係で格好の記事をものにしようと、

わざわざ東京から出向き、T氏から情報を取ろうとして

いるところである。 山荘風の門を潜り、 30代前半

背広で身を包んだ青年が緊張の面持ちで入って来た。

呼び鈴を鳴らし、 「エコロジー現代」記者、飛鳥翔一郎

と申しますと名乗った。 「これは、 これは遠方から

ご苦労様です。 どうぞ、 こちらへ。」と、 二階の

見晴らしのいい応接室へと案内した。木目の板壁には、

T氏がことの外気に入っている東山魁夷の「緑響く」と

いう緑の木々を背景に馬が静かに湖の畔で歩を進めて

いる絵画が掛かっている。 T氏は絵画が好きなことは

勿論だが、 実はT氏の別荘の前の湖の光景がこの

「緑響く」と極めて類似しているのである。 つまり、

その朝が正にそうであったのだが、天気のいい日には

周りの緑の木々が湖の面に映りこんで、東山魁夷の絵画風

の景色に変貌するのである。 青年もその応接室から望む

ことのできる外の景色に目を移し、 絵画との類似性に

目を疑っていた。 青年、 「流石、 環境ビジネス

携っておられるだけに、 抜群の自然環境の下で生活され

いますね。 また、 この景色は素晴らしい。」 

T氏、「いい感受性をお持ちですね。 心に通じる方には

色々真実を語りたくなりますね。」と、 初対面であり

ながら、 お互いいい感じでインタビューが始まった。

多逢聖因 ― ひとは、 邂逅によりどこまで成長できるか (2)

それは昨年のこと。 正月が明けて、 しばらく時が経った頃、 

毎朝通勤途上の長居公園で会い、 数十分四方山話を交わ

しているSさんが「愛農学園農業高等学校へ行きませんか。」

電話をして来た。 T氏も「自給自足生活」を定年後の目標の

一つに挙げていたので、 好都合であった。 Sさんは、 何か

につけT氏の求めている方向に自然に導いていく、 不思議な

縁で結ばれている人物である。 後程Sさんとの関係も詳しく

述べることとなる。 Sさんの所に居候している中国人Qさんも

加わり、 三人で三重県の愛農学園農業高等学校に行くこと

なった。 いつものことであるが、アポなしの訪問となった。

Sさんの大型ワゴン車での出発。 車中では美空ひばりの

演歌を聴きながら、 三人とも農業について学べるという昂揚

感があった。 Qさんは、 農業の経験もあり、 中国に帰って

から野菜を栽培したいという具体的な計画を持っていた。 

カーナビに高校の住所を入力し、 迷うことなく着いた。 日曜

のため人影はない。 校舎のドアには鍵もかかっていない。

なんとも鷹揚で長閑な光景である。 鶏舎では鶏が土の上で

餌を啄ばみ、 小さな囲いの中では耳に黄色いIDカードを付け

子牛がこちらをきょとんと見ている。 更に牛舎の方へ進んで

いくと、 頭に手拭をターバンのように巻いた美形の女性が現れ

た。 彼らを疑う風は全くなく、 ごく自然に彼らから訪問の目的

を聞き出し、 日曜日であるにも拘わらず、 学校関係者に携帯

電話で「野菜栽培について知りたい方々が見えている。」と

誰かに当っている。 大阪ではあり得ないやり取りである。

180cmは優に越えている彫の深い美形の男性が現れた。

野菜作りの専門ということで彼らをビニールハウスや普通の畑

へと導き、 親切に堆肥作りから始まって野菜作りに至るまで

説明した。 また、 海外からの留学生も来ており、 寄宿舎に
いるかも知れないということで当ったが、 あいにく日曜という

こともあり、 会うことはできなかった。 T氏が留学生に興味を

持ったのは、 以前に栃木県にいた頃、 外国人対象のアジア

学園(農業指導で有名)でタンザニアから来た留学生と出会い、

帰国後も交流したという経験があるからだ。

ここでも人生に一貫して流れている「縁」というものを感じた。
愛農学園農業高等学校では、 家畜も含む色々な農業の有り

様を見せて貰い、 また、 帰り間際には校門のところで、 美形

の女性の二人(当校の卒業生)とも出会い、 華やかな青春

ドラマの一シーンを見るような錯覚に陥る経験もした。 とにかく

これからの日本の農業の明るい可能性を感じる訪問であった。

学校関係者には感謝の気持ちを告げ、 前述のAさんに出会う

こととなる三重県白山町へと向かった。 十分程度行った道路

下に乗馬クラブがあり、 20頭を越える馬に跨って若者達が

常歩(なみあし)、速歩(はやあし)等を練習していた。 T氏も

乗馬経験者でライセンス持ちである。 レストハウスに立ち寄り、

談笑とコーヒーを楽しみ、 目的地に向かい進んで行った。

15分位車を走らせた後、 右手に日生学園と大きく書いた門が

見えてきた。 実は、 この日生学園(幼稚園、高校、 学生

までもがある、 広大な学園グループ)の敷地を通り抜けた所に

T氏の土地はある。 乗馬クラブから車で20分弱のところに

自分の土地があり、 最近購入した別荘がある。 農業高等

学校との距離も車で30分余りと、 抜群の生活環境にある。

日生学園を通り抜けて3分余りで目的地に着いた。 T氏の

土地には、 空に向かってすっと聳えている常緑樹がある。

下方部分には枝がなく、 葉を取り、 調べることができないため

今もって木の名前を決められないでいる。 樫の木の種類では

あるが。 その土地を更に下った湖の畔にT氏の別荘はある。

Aさんの別荘とは対面の位置関係にある。