『Two People Exchanging Saliva (原題)』 (2025) | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

第98回アカデミー賞短編映画賞受賞作。アカデミー賞において「短編映画賞」は40分未満の作品に贈られる賞。

 

この作品はフランス映画で、元の原題は『Deux personnes échangeant de la salive』。それは「唾液を交わす二人」の意味。

 

主演の二人は、『聖地には蜘蛛が巣を張る』での演技が印象的だったザーラ・アミール・エブラヒミ(彼女はその作品でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞)と、『燃ゆる女の肖像』で(主役の二人ではない)ソフィを演じたルアナ・バイラミ。前者はイランの性差別、後者は女性同士の恋愛を描いた作品であり、そうした「意識高い系」の作品に出演した俳優が選ばれている。

 

アカデミー賞授賞式での受賞スピーチで、ナタリー・ムステアタ監督は「奇妙でクィアな、そして大部分が女性によって作られたこの作品を支持してくださったアカデミー賞に感謝します」と感謝を述べた。この作品を表す上で、「奇妙」と「クィア」はまさにぴったりの表現だろう。

 

作品が描くのは、キスが死刑に値する禁じられた犯罪とされ平手打ちが通貨として通用するディストピア・ワールド。人々がキスをしたくなくなるように口臭があることが奨励され、ニンニクガムが売られたり、主人公が働くデパートでは出勤時に口臭チェック(臭くないかではなく、臭いかどうかをチェック)があったり、歯ブラシや歯磨き粉はブラックマーケットで取引される。そしてショッピングの会計では店員が言う値段は平手打ちの回数であり、店員が顧客を平手打ちして会計される。それら常軌を逸した設定はかなり興味深いもの。

 

デパート店員と富裕層顧客の同性の恋愛というシチュエーションはトッド・ヘインズ監督『キャロル』を思い出させるが、この作品は「もしヨルゴス・ランティモス監督が『キャロル』を監督したら」といった作風と言っていいだろう。

 

そうした奇妙な設定で観客を引きつけつつ、作品に描かれているのは(何らかの要因による)禁じられた愛の緊張感のある関係という普遍的なもの。観て損はない。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『Two People Exchanging Saliva』予告編