サム・ライミ監督最新作。
サム・ライミ監督と言えば、自分たちの世代は『死霊のはらわた』 (1981)を思い出すだろうし、もう少し若い世代ならトビー・マグワイア版『スパイダーマン』シリーズ、もっと若い世代なら『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』 (2022)を思い出すだろう。また、コアなホラーファンなら、『ドント・ブリーズ』シリーズのプロデューサーとして名前を知っているかもしれない。
ホラーは得意なジャンルではないため多くを語ることはできないが、1980年代のゴア+「そこまでやるかのバカバカしさ」+ジャンプスケア多用のホラーは好きではなかった。その代表格がサム・ライミ監督。しかし、トビー・マグワイア版『スパイダーマン』シリーズは、マーベル作品の中でも特筆すべきもの。マーベル作品としては珍しく学園恋愛要素のあるシリーズであり、トビー・マグワイア演じるピーター・パーカーとキルステン・ダンスト演じるMJの「逆さ吊りキスシーン」は映画史に残る名キスシーンだと思っている。
この作品は、80年代ホラーの「あのサム・ライミが帰って来た」という印象。しかし結論から言うと、かつてのホラーよりも断然よかった。なぜならこの作品は「コメディ要素を持ったホラー」ではなく、「ホラー要素を持ったコメディ」だったから。
ホラーは、心理的にじわじわとどこまでも怖ろしいシリアスなものが個人的好み。しかし、この作品はあくまでコメディが主旋律としてあり、ホラー要素はあくまでオカズとして観るべきだろう。
作品は、『ミザリー』(1990)と『キャスト・アウェイ』(2000)を足して2で割ったものと言えば、それらを観た人には伝わるだろう。
パワハラクソ上司と無人島で二人になるという設定であれば、邦題に含まれる「復讐島」という言葉がイメージする展開だろうと想像するだろうが、個人的にはこの邦題はミスリーディングだと感じた(原題は『Send Help』)。確かに結果的には、レイチェル・マクアダムス演じる主人公リンダ・リドルはそのクソ上司に復讐するのだが、もし彼が改心したなら、違う世界線もあったのではと思わせる展開だったから。そしてその「揺らぎ」が、この作品をして単なるジャンル映画にはしていなかった。
観客はハナからクソ上司を信用していないだろう。ではリンダはどうだろうか。「あれ、リンダはもしかして?」と思うのだが、「ああ、やはり信用していなかったんだな」という展開の繰り返しがこの作品の「緩急」をつけていた。そして自分が最も気に入っているのは「毒タコからの~」というシーン。同性であればほぼ全員が納得するだろう。
あと細かい点ではあるが、「Vice President」はアメリカ企業では「副社長」ではなく、一プレイヤーではなく現場の統括の責任を持った職責。日本で言えば課長や部長といったレベル。外資系企業がこれほど進出しているのにこのレベルの誤訳は残念。
レイチェル・マクアダムスはカナダ出身というだけでカナダに10年住んでいた自分は親近感を禁じ得ないが、彼女を最初に認識したのは(やはりと言うべきだろう)『君に読む物語』(2004)だった。そして『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(2013)のメアリー役、『サウスポー』(2015)のモーリーン役で「愛くるしいヒロイン」のイメージが確定していた。その彼女の40台半ばを過ぎての(1978年11月生まれ)体当たりの演技を観ることができてよかった。
この手のジャンル映画が好きな人はそれほどがっかりしないだろうし、サム・ライミ監督やレイチェル・マクアダムスに思い入れがあれば必見と言えるだろう。
★★★★★★ (6/10)
