『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 (2021) ジョン・ワッツ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

ハリウッドでも制作費1億ドルを越えるとビッグ・バジェットとされるが、2億ドルの制作費をかけ、それを公開後わずか2日間にして回収したメガ・ヒットとなっている作品。

 

コロナ禍により新作公開がなかった2020年を経て、2021年はマーベル独立制作(MCU)豊作の年だった。2021年のMCU公開作の第一弾『ブラック・ウィドウ』こそ低評価だったが、それに続く『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『エターナルズ』は個人的にはこれまでのマーベル映画化作品の中では10本の指に入る出来だった。本作もマーベル独立制作(MCU)だが、これまでの共同制作・独立制作両方を含むマーベル映画化作品の中でもベスト3に入る作品。

 

実写版映画では、ピーター・パーカー役をこれまで3人の俳優が演じている。2002-2007年のサム・ライミ監督版三部作ではトビー・マグワイヤ、2012-2014年のマーク・ウェブ監督版「アメイジング・スパイダーマン」ではアンドリュー・ガーフィールド、2017-2021年のジョン・ワッツ監督版MCUスパイダーマンではトム・ホランドが演じている。

 

「アメイジング・スパイダーマン」は当初三部作の予定だったが、制作がそれまでのソニー・エンターテイメントからマーベル単独制作に移り、スパイダーマンもマーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれることになったことから打ち切りとなった。トム・ホランドが演じるスパイダーマンのデビューは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 (2016)。以降、アベンジャーズの一員として『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 (2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』 (2019)に登場。アイアンマンをメンターとして、その亡き後意志を継ぐ者として位置付けられた。ところが、前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)公開後、(5.75年に1本の新作を制作することを条件に)全てのスパイダーマン映画の権利を持つソニー・エンターテイメントとマーベルの親会社であるディズニーが決裂し、スパイダーマンのマーベル・シネマティック・ユニバース離脱は不可避と思われた。しかし、トム・ホランドがソニーとディズニー重役に直談判して、スパイダーマンのMCU残留が決まり、この作品が制作された経緯がある。

 

本作品の最大の目玉が、これまでピーター・パーカーを演じてきた三人がスパイダーマンとして総出演していること。ファンにとってはたまらないところだが、それを可能にしている設定が「マルチバース」。「ユニバース」の「ユニ(単一)」を「マルチ(多元)」に置き換えた造語だが、宇宙は我々が存在する宇宙だけでなく、別に、または無数に存在するかもしれないという、いわゆるパラレルワールド的概念。アメコミ原作映画にとっては過去作との非整合性を簡単に説明してしまう、便利なコンセプトと言える。その概念を最大限活用したのが、同じスパイダーマンを主役にしたアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』 (2018)だった。

 

三人のスパイダーマン揃い踏みの中でも、うれしかったのは三部作を完結することなく打ち切りになったアンドリュー・ガーフィールド演ずる「アメイジング・スパイダーマン」の登場。打ち切りの理由には、シリーズ興行成績の不振もあったが、個人的にはサム・ライミ版スパイダーマンよりオリジナルに近いイメージの「アメイジング・スパイダーマン」は嫌いではなかった。特に、恋人グウェン・ステイシーを失う悲しみが描かれた『アメイジング・スパイダーマン2』 (2014)はスパイダーマン・シリーズの中でも、個人的には『スパイダーマン』 (2002)と並ぶと評価している。本作で、アンドリュー・ガーフィールド・スパイダーマンが自由の女神から落ちるミシェル・ジョーンズ(MJ)を救ったときの切ない表情が、かつて同じ状況でグウェンを助けられなかったことへの悔しさをにじませていて、胸を打つシーンだった。

 

過去作のスパイダーマンだけではなく、これまでのスパイダーマン・シリーズのヴィランが一挙に登場する本作では、彼らを征伐するのではなく彼らに救いを与えるという展開がストーリーの大きなポイント。スパイダーマン・シリーズのネックは、ヴィランの悪党ぶりが今一つなところだが、それを逆手に取ったようなストーリーはまさに逆転ホームランの展開だった。悪を罰するのではなく、赦しを与えて更生の機会とする考え方は、現代刑罰学の修復的司法に通じるものであり、テーマ的に深みを感じさせるものだった。

 

アンドリュー・ガーフィールド・スパイダーマンがそのほか2人のスパイダーマンに「I love you guys!」と言うセリフは、アンドリュー・ガーフィールドのインプロヴァイゼーションだったと伝えられるが、まさにそうしたバディ感あふれる心温まる雰囲気だった。そのセリフに表れた雰囲気がMCU以前のヒーローの孤独を感じさせ、本作のエンディングの切ない展開を更に生かしていた。

 

スーパーヒーロー物というと単なるエンターテイメント作品を想像しがちだが、今日のスーパーヒーロー物はテーマに深みを持たせて感動させる作品になっていることは、この作品を観れば分かってもらえるはずである。大ヒットに相応しい作品だろう。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編