『ゴッズ・オウン・カントリー』 (2017) フランシス・リー監督 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

少年のcoming-of-ageものというと『スタンド・バイ・ミー』を引き合いに出し、ゲイものというと『ブロークバック・マウンテン』を引き合いに出すのはあまりに陳腐だと思われるが、確かに『ブロークバック・マウンテン』を彷彿とさせる秀作。

 

イングランド北部のヨークシャー。年老いた祖母や病気の父に代わり、家族経営の寂れた牧場を切り盛りする青年ジョニー。彼は、孤独でやりがいの感じられない日々を酒と行きずりのセックスで紛らわしていた。羊の出産シーズンのある日、ルーマニア移民のゲオルゲが季節労働者として雇われてくる。初めは衝突する2人だったが、羊に優しく接するゲオルゲに、ジョニーはこれまで感じたことのない感情を抱き始める。

 

映像は二人の時間がほとんど。そこでは二人の感情は自然なものとして目に映る。しかし、一旦第三者が関与すると、ゲイに対する偏見やルーマニア移民への人種差別を思い知らされる。特に後者は、ヨークシャーというブレグジット支持が強固な保守的地域だけに今日的テーマを内在していると感じた。

 

ただ、この作品の主題はそうした偏見や差別に抗う主人公の生き様というものではない。それはあくまで副題的なモチーフに過ぎない。主題は、田舎で家族のしがらみにからめとられた若者の陰鬱とした生活に、ある一人の人間の登場によって希望がもたらされるというもの。それがたまたまホモセクシュアルだっただけで、ヘテロセクシュアルに置き換えても全く違和感はない。

 

ジョニーを演じるジョシュ・オコナ―はロエベのブランドアンバサダーにも起用されているイギリス人俳優。彼の表情が、作品を通して徐々に柔和になっていくのがとてもよかった。ある諍いからゲオルゲはジョニーの元を去るが、ゲオルゲを失いたくないと彼を訪ねるジョニーの、愛する者を失いたくない必死さがよく伝わってきた。

 

日本にはホモフォビアが多いのだろうか、小さな劇場には男性は私のほか一人だけで、9割以上が女性だった。ピュアな恋愛作品として、多くの人に勧められる。一昨年公開の『君の名前で僕を呼んで』に並ぶ秀作(よりシリアスでストレートなのがこちら)。是非。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

 

『ゴッズ・オウン・カントリー』予告編