想田監督による観察映画第8作目。想田監督は「観察映画の十戒」を定めているが、その中で最も重要なものは、「台本は書かない。作品のテーマや落とし所も、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。」というものだろう。ドキュメンタリーも、製作者の意図が介在することによってフィクション性を持つとすれば、それを排除した観察映画は、ピュアなノンフィクションと言っていいだろう。

 

舞台はミシガン州、全米最大のアメリカンフットボール・スタジアム、通称「ザ・ビッグハウス」。名門ミシンガン大学のチーム「ウルヴァリンズ」の本拠地である。想田に加え16人の映画作家を目指す学生が回すカメラが捉えたダイナミックな映像を、想田が編集。まるで巨大な生命体のように機能するスタジアムの全貌を描き出していく。

 

興味深かったのは、スタジアムの中に人たちではなく、スタジアムに入らない人たち。それは観客を目当てに、布教活動をする人だったり、物売りする親子だったり。そこに浮かび上がるのは、人種や階級、格差、宗教問題。なかなかいい絵が撮れていた。

 

またエンディング前には、ミシガン大学の寄付金支援者のパーティーの映像が収められている。そこでは学長のスピーチが行われているが、話の内容はお金のことばかり。つまり、フットボールを始めとする学生スポーツも、寄付金を集めるためのビジネスの一部であることが伺える。

 

撮影は2016年の秋に行われ、トランプ大統領誕生前夜の選挙戦の最中に行われている。それを伺わせる映像もあるにはあるが、政治色は敢えて排除されているように感じた(特に、想田監督の普段のツイッターのつぶやきと比較すると)。

 

想田監督一人が映像を撮れば全て面白い映像ばかりというわけではないだろうが、1時間59分が長いと感じられるときもあった。想田監督のほかの作品を観てみたいと思った。

 

★★★★★ (5/10)

 

『ザ・ビッグ・ハウス』予告編