カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した作品。当時は、パルム・ドールに次ぐ賞である審査員特別賞にグランプリの名称が与えられる(1990年以降)以前だったため、パルム・ドールの別称としてグランプリとも呼ばれた。

 

深作欣二の原作を読んだのは随分と以前のこと(多分、高校生の頃)なので印象は覚えていない。姥捨ては貧しい農村の口減らしのための暗い因習なのだが、この作品はその姥捨てを扱いながら、思いのほか暗くない。姥捨てのみならず、長子世襲制で次男以降が「奴(下人)」として虐げられていたり、村の掟を破った一家を根絶やしにすべく幼い子供を含む一家を生き埋めにしたりといった、やはり重苦しい題材を扱いながら、なぜか前向きな明るさを感じる作品。

 

それは、一つには主人公の一人、山に捨てられる老女のおりんのキャラクターによるところでもあり、また、この作品が『楢山節考』だけではなく、「奴」の性の営みを扱った『東北の神武たち』という作品をモチーフにしていることもあるだろう。

 

おりんは、年老いて山にいくことが「正しい」と信じる気丈な女性。年不相応に歯が丈夫なことを恥じたり、また家族思いで面倒見がいい。彼女の願いを叶えるための姥捨てであることがこの作品の印象を決定づけている。

 

またこの作品には、人間のみならず生きとし生けるものすべての生殖が満ち溢れている。野生動物や昆虫の生殖シーンがところどころに挿入されていて、人間も彼ら同様、子孫を残すための活動を行っていることを思い知らされる。「奴」の左とん平と清川虹子(撮影当時70歳!)のセックスシーンはユーモラスでもあった。

 

娯楽や贅沢といったものには無縁の、そして生と死が常にリアリティをもって身近であった、古い時代の山奥の農村を舞台に、精一杯生きる人間の姿が描かれている。

 

外国映画祭の最高賞に日本の作品から選ばれるにふさわしい作品である。この作品に比して、同じ今村監督のパルム・ドール受賞作の『うなぎ』(1997年)は納得がいかない作品だった。主人公二人(役所広司、清水美砂)のキャラクターに説得力がないように感じた。

 

邦画の歴史的名作の一つとして、是非鑑賞することをお勧めする。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『楢山節考』予告編