韓国の二大映画賞である大鍾賞と青龍賞の最優秀作品賞をW受賞し、アカデミー賞外国語作品賞部門で韓国代表としてノミネート、2017年に韓国で最も売れた映画となった作品。ちなみにかつて大鍾賞と青龍賞の最優秀作品賞をW受賞した作品には、『風の丘を越えて』(93年)、『JSA』(00年)、『春夏秋冬そして春』(03年)がある。

 

監督はキム・ギドクの助監督を務めていたチャン・フン、主演は『JSA』『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『スノーピアサー』のソン・ガンホ。

 

1980年韓国南西部全羅南道の光州市で起こった光州事件を題材とした作品。前年のパク・チョンヒ大統領(パク・クネ前大統領の父親)暗殺後、韓国では「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードが続いていたが、チョン・ドゥファン(全斗煥)陸軍少将がクーデターにより軍の実権を握り戒厳令を布告すると、光州市で学生を中心に20万人の民衆が蜂起した。そして、軍の弾圧により民間人144人が殺される。当初厳格な報道管制により、韓国内ではスパイに扇動された暴徒による反体制暴動としか扱われていなかったが、現地に侵入した外国特派員が報じることで海外から厳しく非難された事件。

 

そうした歴史的背景や事件の経緯を全く知らなくても楽しめる作品。紛争地域に特派員がスクープしようとし、現地まで彼を乗せたタクシー運転手が軍による民衆の弾圧を目にして、一肌脱いで活躍するお話という理解で十分。

 

前半は、貧しいながらも幼い娘を父親一人で育てるタクシー運転手をソン・ガンホがコミカルに演じている。光州市に入り、民衆の蜂起に巻き込まれてからは一転してシリアス・ムード。この辺りの緩急のメリハリのつけ方が韓国映画らしいところ。「笑いあり、感動あり」という、『7番房の奇跡』(2013年)にあるような、韓国で爆発的ヒットとなる王道パターン。

 

非人道的な権力の弾圧に対し、民衆が命を賭して立ち上がるというのは、時代や地域を問わず人々の胸を熱くするところ。ストップモーションで人々が次々に撃ち殺されていくシーンはやはり涙なくしては見られなかった。

 

ただ、主人公のタクシー運転手を助けるために、地元のタクシー運転手たちが協力して公安警察とカーチェイスをするシーンなど、演出としては少々盛り過ぎ。こうした「ベタな演出過多」が韓国映画っぽいとも言えるのだが。

 

光州事件に関しての関心の低さから、日本ではそれほど大きく扱われないだろうが、期待しないで観るとかなり面白いという作品。見逃すには惜しい。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『タクシー運転手 約束は海を越えて』予告編