『セレブレーション』 (1998) トマス・ヴィンターベア監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

ホテルを所有する富裕実業家ヘルゲの還暦祝いのパーティーが開かれ、家族や親族一同が集まった。 ヘルゲの長男クリスチャンは、自殺した双子の妹リンダのための復讐として、父によって妹とともに子供の頃性的虐待を受けていたことをパーティーの場で告白した。 

 

格調高い作品の『偽りなき者』(2012年)で、人間の尊厳とは何かを描いたデンマークのトマス・ヴィンターベア監督。この作品は、彼がラース・フォン・トリアーと共に提唱した「ドグマ95」に基づいて製作されたもの。

 

ドグマ95には「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個の重要なルールがある。

  1. 撮影はすべてロケーション撮影によること。スタジオにおけるセット撮影を禁じる。
  2. 映像と別の場所で作られた音響を使ってはいけない。
  3. 撮影は、必ずカメラの手持ちによること。
  4. 映画はカラーであること。実際の光以外の照明は禁止する。
  5. 光学合成やフィルターを禁止する。
  6. 表面的なアクションを含まないこと(殺人、武器の使用などは起きてはならない)。
  7. 時間的、地理的な乖離は許されない(つまり今、ここで起こっていることしか描いてはいけない)。
  8. ジャンル映画を禁止する。
  9. フィルムのフォーマットは35mmであること。
  10. 監督の名前はクレジットしてはいけない。
この作品では、夢と思われるシーンがあるので、7に関しては例えば回想シーンは不可だが、夢はありということのようだ。
 
その狙いは、過度な特殊効果やテクノロジーへの依存を拒否し、物語や役者の演技、そしてテーマといった映画本来の伝統的価値へと立ち返ることにあった。それは、ハリウッド映画の空疎なスペクタクルと、自己満足へと堕していたアバンギャルド映画の双方に対するアンチテーゼであるとされる。
 
ドグマ95は運動としては2008年で幕を閉じるが(それまでにドグマ95にのっとって作製された作品は270を数える)、その中でも最も評価されているのが本作。確かに、ホームビデオで実際に起こっている映像を切り取ったかのようなリアル感、その場にいるかのような臨場感があった。
 
衝撃的な告白をする長男には、成人した妹と弟がいるのだが、彼らのリアクション、特に父親に対するものの変化が見どころ。様式の新奇さに気を配らずとも、楽しめる作品だった。

 

★★★★★ (5/10)

 

『セレブレーション』予告編