これほど過酷な環境はあるだろうかという境遇の17歳黒人少女プレシャスが主人公。実の父親にレイプされ一人目の子供を産んだ後、母親のボーイフレンドにもレイプされ二人目の子供を妊娠。そのため高校を退学させられてしまう。母親は、彼女を奴隷のように扱い、自分のパートナーを奪ったという言い掛かりで彼女を虐待する。その彼女が高校退学後、似たような境遇の子供たちが通うオルタナティブスクールで、信頼できる教師と出会い、友人とも心を通わせるようになり、前向きに生きるようになるというストーリー。
彼女は最初は自己否定の固まりで、虐待する母親に対しても抵抗できなかった。それが最後は、子供のためにも自分のためにも強くなれたことで、観ている者も救われた。
悲惨のどん底という状況でありながら、それをただ暗いだけという印象を受けないのは、プレシャスの現実逃避の夢のシーンが度々挿入されるため。希望というには、あまりにも現実とはかけ離れているため、それを思うとそれはそれで重いのだが、観ている者もそうした現実逃避を求めたくなるほど、彼女の境遇は悲惨。
そして最後には、更に悲惨な出来事すら起こるのだが(父親がエイズで死亡)、それすらはね返す彼女の強さに心打たれる。
マライア・キャリーとレニー・クラヴィッツといった音楽界の大御所が脇役(と言っても、そこそこ重要な役)で登場。彼らでなくてもいいのだが、さと言って邪魔でもなかった。
この作品のオルタナティブスクールの教師役は、原作者がモデル。原作は、彼女の教え子の経験談を元に作られているらしい。
なまっちょろい感動物ではない、ハードな作品。でも観る価値は大。
★★★★★★ (6/10)