『ゴーストバスターズ』 (2016) ポール・フェイグ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

11月21日現在、imdb.comの評価は5.4とかなり低い(全映画の加重平均は6.4、7.5以上は高評価と言ってよい)。ちなみに1984年のオリジナル作の評価は7.8。ただ、投票の内訳を見てみるとかなり興味深い。男性の総平均が5.0であるのに対し、女性の総平均は7.0、18歳未満女性の評価が最も高く7.4となっている。つまりこれは女性に受ける「chick flick(movie)」と考えられる。

 

活躍する主人公が全て女性でありかつ、彼女たちは「女性としての魅力」を前面に押し出していない(『チャーリーズ・エンジェル』とは異なる)。重要なモチーフがエリン(クリスティン・ウィグ)とアビー(メリッサ・マッカーシー)の友情であり、もう一人のゴーストバスターのジュリアン(ケイト・マッキノン)はそこはかとなく同性愛者的な雰囲気を持っている。オリジナルではビル・マーレイ演じるドクター・ヴェンクマンがシガニー・ウィーバー演じるダナに言い寄る「男と女の関係」が匂わされていたが、本作品では、ケヴィン(クリス・ヘムズワース)はみんなのアイドルといった感じで、それらが女性に受けている要素である。

 

オリジナルとの決定的な差は、オープンなカタルシスのなさであろう。オリジナルでは、ゴーストバスターズはNY市民のヒーローであり、それに横槍を入れたエゴイスティックな役人の失策でパニックに陥ったNYを再び救うという構図。映画の観客は、ラストシーンでダナのアパートの前に集まった群衆と同じ視線で映画の中のゴーストバスターズを応援していたと思う。それが本作では、ゴーストバスターズの活動は幽霊騒ぎによる集団パニックを恐れる市当局によって「偽物」とされ、彼女たちは「バットマンの気分が分かるわ」というセリフを言っている。

 

オリジナルでは子供が観たら怖いだろうというシーンや、先に述べた「男と女の関係」といったモチーフ(含むシガニー・ウィーバーのセクシャルなシーン)があり、大人でも楽しめるといった作品だった。そのオリジナルには比べようもないが、それほどつまらないという低評価も当たらないのではないだろうか。特にクリス・ヘムズワースのいかにも生きたケン人形という役回りは(個人的には)面白かった。『ラッシュ』のジェームズ・ハント役や『マイティ・ソー』のソー役といったいかにもかっこいい役が多かっただけに、本人もおバカな役を楽しんでやっていたのではないだろうか。

 

オリジナルとストーリーのつながりはないが、オマージュであるシーンは満載。つまりオリジナルを観ていなくても、全く問題はないが、オリジナルを観ているとそこここにニヤリとするシーンが隠されている。ビル・マーレイ、ダン・アイクロイド、シガニー・ウィーバーといったオリジナルで主要な役どころがチョイ役で出ていたり、3人の科学者に4人目の黒人がゴーストバスターズに参加したり(オリジナルでは、エディ・マーフィーの配役が予定されていたが、彼が出演を断ったため、脚本は大幅に書き換えられ、4人目のゴーストバスターにほとんど活躍の場はなかった。本作品では、パティ役のレスリー・ジョーンズはコミカルなパートで重要な役回りを演じている)、エンディング・ロールの最後の最後で不審な音の録音が「「ズール」と聞こえる」(ズールはダナが憑りつかれた「門の神」の名前)とパティに言わせたり、エリンが危険を叫んでレストランの窓を叩くシーンはオリジナルのリック・モラニス演じるルイスが「鍵の神・ビンツ」に襲われるシーンを思わせたり、マシュマロマンが再び出てきたりなどなど。

 

敢えて観る必要もないが、言われているほどひどい作品ではないと感じた。

 

★★★★ (4/10)

 

『ゴーストバスターズ』予告編