『情婦』 (1957) ビリー・ワイルダー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



アガサ・クリスティ原作の戯曲を名匠ビリー・ワイルダーが映画化。面白くないわけがないと思ってはいたが、これほど面白いとは思っていなかった。

心臓発作の療養後、看護婦に付き添われて事務所に戻ってきたのはロンドン法曹界の重鎮にして敏腕弁護士のウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)。しかし好きな酒や葉巻、そして得意とする刑事事件弁護も刺激が強いからダメだといわれ、大いにクサっていた。そこへ弁護士仲間が依頼人を伴って現われた。彼のもつ葉巻ほしさに部屋に招き入れ、話を聞くうちにウィルフリッドは俄然興味がわいてきた。ヴォール(タイロン・パワー)という依頼人は、知り合いの富裕な未亡人の殺害の嫌疑をかけられていた。彼は、自分の潔白は妻クリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が保証すると述べた。だが円満な夫婦の間の証言など、法廷で取り上げられるわけがない。そして、未亡人の全財産がヴォールに遺されていたことが判り、さらにヴォールの立場は不利になり、彼は逮捕される。その後ヴォールの妻クリスチーネがウィルフリッドの事務所に来訪し、ヴォールのアリバイを供述するが、その言葉はなぜか曖昧であった。公判が始まると、検察側の証人の証言をウィルフリッドは反対尋問で次々と崩し、事態は黒白いずれとも定めかねる展開になる。その後、クリスチーネがなんと検察側証人として出廷し、驚くべき証言をする。

映画のエンディング・クレジットで、「この映画の結末は、この映画を観ていない人には話さないで下さい」というナレーションが流れる。終盤の二重のどんでん返しは、さすがアガサ・クリスティ。

役者の中では、何といってもチャールズ・ロートン演じる弁護士ウィルフリッド卿がいい。ビリー・ワイルダーは彼の演技が気に入って、続く作品の役柄をオファーしたが、チャールズ・ロートンの病死で、この作品が彼の遺作になったという逸話がある。

クラシック作品だが、今観ても間違いなく面白く、またクラシック作品ならではのノスタルジックな雰囲気も楽しめる。ただ邦題の『情婦』というのはどうだろうか。原題の『Witness for the Prosecution(検察側の証人)』の方がシンプルで分かりやすいと思われる。

★★★★★★ (6/10)

『情婦』予告編